イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アルバムチャートを制したKAT-TUNのダウンロード比率からみる、ジャニーズ作品のデジタルでの存在感

最新2月22日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートでは、KAT-TUN『Fantasia』が初登場で首位を獲得しています。

KAT-TUN『Fantasia』はフィジカルセールス98,710枚(同指標首位)、ダウンロード1,438DL(同指標2位)を記録。フィジカル3種に加え、KAT-TUNは前作『Honey』に続き今作でもデジタルをリリースしています。なおフィジカル3種はそれぞれ15、13および12曲入りとなっており、デジタルは最も少ない11曲が収録。デジタル盤の収録曲は3種すべてのフィジカル盤に含まれています。

(上記はKAT-TUN『Fantasia』の全曲ダイジェスト動画。)

KAT-TUNは前作『Honey』もビルボードジャパンアルバムチャートを制しており、2022年4月6日公開分においてフィジカルセールス104,990枚(同指標首位)、ダウンロード1,712DL(同指標4位)を記録。『Fantasia』は前作よりわずかに数値を落としてはいるもののフィジカルでの先行シングルがなかったこともあり、勢いとしては前作並と捉えることもできるでしょう。

 

さて、今回の各指標動向を踏まえ、下記表を作成しました。以前にも同種の表を公開していますが、今回はフィジカルセールスとダウンロードの合計分に対するダウンロード数の割合を追加しています。なおデジタルの(当時の)未配信作品は”未配信”、ダウンロード指標50位未満(一部50位以内が含まれます)で数値が不明だった作品は”計算不能”と表示しています。また2023年度以降、ルックアップ指標は廃止されています。

フィジカルセールスとダウンロードでは1枚および1DLにおけるウエイトが異なり後者のほうが大きくなるのですが、それを考慮せず単純合算した数に対するダウンロード数の割合を算出したところ、KAT-TUN『Fantasia』は1.4%、前作『Honey』は1.6%となります。

 

2022年度以降の動向をみれば、KAT-TUNのアルバムセールスに対するダウンロード数1.5%前後という割合は決して高いわけではないものの、たとえば坂道グループは1%前後、そして日本や韓国を問わず男性ダンスボーカルグループにおいては1%を切る作品も少なくありません。フィジカルセールスに特典を用意したり複数種にて発売する等フィジカルを重視した施策により、デジタルとの差が拡大した結果と言えるでしょう。

(なお、たとえば宇多田ヒカル『BADモード』のようにデジタル先行でリリースする作品もあります。またファンクラブ限定リリースの有無も考慮に入れる必要はあります。)

今回算出したアルバムセールスに対するダウンロードの割合を踏まえれば、KAT-TUNHoney』および『Fantasia』がアイドルやダンスボーカルグループの中にあっては決して低くはないと捉えることができるのではないでしょうか。ジャニーズ事務所所属歌手がデジタル解禁すればフィジカルセールスが下がるという見方もあるかもしれませんが、そうなったとして下がり幅はそこまで大きくはないかもしれません。

加えて『Fantasia』、そして『Honey』においてもデジタルの収録曲数がフィジカルより少ない中にあってダウンロード数が1,400DLを超えていることも注目と言えます。デジタル解禁がライト層の需要喚起にもつながっているのではと考えていいでしょう。

仮に他のジャニーズ事務所所属歌手もデジタルを解禁し、KAT-TUNの2作品同様にダウンロード数が売上全体の1.5%で推移すれば、初週ダウンロード数だけで1万DLに達する作品が出てくる可能性もあります。KAT-TUNの事例を事務所側が検討し、前向きな判断を下すことを願います。

 

最後に。あくまで私見と前置きして記しますが、自分はデジタル解禁されたことで『Honey』に収録された「Ain't Seen Nothing Yet」の素晴らしさに気付くことができました。昨年度の私的邦楽ベストにも選んでいます。