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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

星街すいせいや「酔いどれ知らず」のチャートアクションから、動画投稿作品の社会的ヒットに必要なことを考える

最新2月1日公開分のビルボードジャパンソングチャートにおいて、Kanaria「酔いどれ知らず」が42位に上昇しています。

(CHART insightでは総合順位が黒で示され、各指標はフィジカルセールスが黄色、ダウンロードが紫、ストリーミングが青、ラジオが黄緑、ルックアップがオレンジ、Twitterが水色、動画再生が赤、カラオケが緑で表示。なおルックアップおよびTwitter指標は2023年度に廃止されています。)

 

2022年5月6日にリリースされたKanaria「酔いどれ知らず」はリリース当初Twitterおよび動画再生指標を中心に伸び、およそ4ヶ月に渡り総合100位未満ながらも300位圏内にランクイン。その後2022年度末より再度総合300位以内に入ると、ここに来てカラオケ指標が伸びています。

ビルボードジャパンのCHART insightは有料会員は総合および各指標100位まで、無料会員でも20位までチェックできるサービス。Twitter指標で20位以内にランクインしたことがあるKanaria「酔いどれ知らず」については無料会員でも確認は可能でしたが、カラオケ指標20位以内登場に伴い遡らなくともチェックできるようになりました。

 

Kanaria「酔いどれ知らず」は最新2月1日公開分のビルボードジャパンTop User Generated Songsチャート、ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20において共に首位、またTikTok Weekly Top 20でも最高位となる4位に上昇。ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20では首位獲得の要因についてこのように記されています。

Kanaria「酔いどれ知らず」は、前週と比べ、オリジナル動画の再生回数、いいね数なども伸び続けているが、本楽曲の特出すべき点は、2次創作動画の再生回数である。当週2位の、ツミキ「フォニイ」の2次創作動画の再生回数と比べ約2倍の差があり、さらに、2次創作動画の動画総数、マイリスト数、コメント数、いいね数などを含めた全体的な総数に関しては、3倍近く差があることが、2週連続で首位を獲得した原因と考えられる。テンポ感や中毒性、歌いやすくキャッチャーなメロディが2次創作動画の人気も増やしているのではないだろうか。また本楽曲は、2月1日公開の“Billboard Japan Hot 100”でも42位にチャートインしており、オリジナル動画、2次創作動画共に、今後どこまで伸びていくのか期待が高まる。

総合ソングチャートの順位にも触れているこの記事が、ボカロP作品ファンが総合ソングチャートへ興味を抱く入口となるかもしれません。

 

さて、あらためてCHART insightをみると興味深い動向が見えてきます。

円グラフで示されたチャート構成比は最新2月1日公開分ビルボードジャパンソングチャートにおける6指標のポイント構成を指しますが、100位未満(300位圏内)→58位に上昇したストリーミング指標が獲得ポイント全体の6割以上を占めていることが解ります。他方、好調なカラオケや動画再生指標は合わせても3割弱にとどまっています。

ストリーミング指標の重要性については、上記ブログエントリーで紹介した2022年度の年間ソングチャートから解ります。総合とストリーミングの年間トップ10においては順位こそ若干異なるものの顔ぶれが同じなのです。ビルボードジャパンは各指標の影響度を反映する形でチャートポリシー(集計方法)を変革し続けており、サブスク再生回数等から成るストリーミングの存在感が見えてきます。

Kanaria「酔いどれ知らず」はTikTokでも用いられ、またYouTubeにおけるUGC(歌ってみたや踊ってみたに代表されるユーザー生成コンテンツ)でもヒットしていることから、ニコニコ動画の枠を超え広く世間に浸透してきていることが解ります。この動きを更に加速させるにはサブスクでの人気を確立しストリーミング指標を伸ばすことが如何に重要かが、CHART insightから解るのではないでしょうか。

 

さて最近はVTuber、星街すいせいさんにのTHE FIRST TAKE出演も注目を集めています。一昨日にはニューアルバム『Specter』のリード曲「みちづれ」も公開されました。

そして2週間前に披露された「Stellar Stellar」は前週1月25日公開分のビルボードジャパンソングチャートで動画再生指標4位に登場。同指標は今週も8位に入り上位をキープしています。

「Stellar Stellar」は最新2月1日公開分においてストリーミング指標が300位に達せず加点対象外となっています。同週はアルバム『Specter』がビルボードジャパンアルバムチャートで初登場4位、ダウンロード指標では首位を獲得し、その勢いに伴い「Stellar Stellar」もダウンロード指標300位未満→33位へ上昇したものと考えられますが、ストリーミングが加点されていれば総合100位以内エントリーもあり得たでしょう。

 

 

動画投稿者の影響力は計り知れず、ひとつの文化として形成されていることは疑いようがありません。その勢いはビルボードジャパンの動画関連チャートでも可視化されています。一方でライト層の利用も大きく反映されるストリーミングで強いとは言えず、ボカロPやVTuber等広義のネット音楽が広く世間一般に浸透しているとは言い切れないという状況も見えてきます。

仮にネット音楽のファンの方々が音楽をチェックする環境にサブスクを追加すれば、状況は変わる可能性があります。その変化が、ネット音楽が広く浸透していくための鍵となるかもしれません。