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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

全体の再生回数推移、優里「ビリミリオン」の上昇、洋楽の動向…日本のSpotify最新チャートから注目点を紹介する

本来ならば毎週火曜、日本時間で早朝に発表される米ビルボードおよびグローバルのソングチャートトップ10速報をお届けするのですが、米ビルボードはデータ処理の遅延を理由に1日アナウンスを遅らせることを発表しました。

実際、アルバムチャートにおいても日本時間の月曜早朝ではなく火曜の発表となっていました。米ビルボードおよびグローバルのソングチャートトップ10速報は明日のブログにて紹介します。

 

今回は、日本におけるSpotifyチャートの動向を紹介します。

 

 

日本におけるSpotifyチャート 注目ポイント

 

 

全体の再生回数は伸びている

最新1月22日付までの8週間における上位曲の推移をグラフ化したものがこちら。1月22日付において16万回以上再生された24曲を掲載していますが、そもそも24曲という多さは記憶になく、全体的に再生回数が高まっていると感じずにはいられません。

上記はビルボードジャパンにおける2022年度以降を集計期間とする、日本のSpotifyでの50位および200位の再生回数推移。直近1月22日付にて50位の再生回数が11万回を突破しましたが、これは昨年のクリスマスイブ、今年1月9日(月曜・祝日)以来となります。クリスマスイブはクリスマス関連曲の大挙エントリーで全体的に上昇、1月9日は3連休最終日ゆえの上昇ですが、普段の日曜でこの水準はやはり高いと言えます。

加えて200位においても、1月9日に次いで今年2回目となる3万7千回台に突入。back number『ユーモア』リリースに伴う収録曲や過去曲の上昇も寄与しているものと思われますが、昨年10月のOfficial髭男dism「Subtitle」および米津玄師「KICK BACK」同時リリース等を機にサブスクを用いる方が増えており、それが定着したと捉えていいでしょう。他のサブスクサービスにおいても同様に伸びている可能性は十分です。

 

 

優里「ビリミリオン」急伸の背景にあるものとは

優里さんが先週リリースした新曲「ビリミリオン」が、最新1月22日付にて50位の壁を突破してきました。

日本はトップ50プレイリストの活用者が多いことから、50位の壁という現象が強くみられます。この壁を突破した曲は数日で急上昇もしくは急落するという性質があり(この性質については下記ブログエントリーをご参照ください)、初登場で50位に入ったTWICE「MOONLIGHT SUNRISE」は登場3日目に13位まで上昇を果たしています。

 

優里「ビリミリオン」は104→71→62→48位と推移。日曜はプレイリスト更新に伴う影響が大きくないことから、純粋な曲の評判に因るものと考えられます。鉄拳さんが関わったミュージックビデオも影響していることでしょう。

そして1月22日、優里さんがSNS上でリスニングパーティーを実施したことも少なからず寄与したのではないでしょうか。

各サブスクサービスでは、1日に同じ曲を何回聴いてもそのすべてが再生回数に反映されるわけではありませんが、このパーティー開催が再生回数前日比1.5倍のひとつの要因と考えていいかもしれません。優里さんサイドもこのパーティー開催中にTwitterで幾度となくツイートを実施し、共に楽しむ姿勢を示しています。

この”共に楽しむ姿勢”を直近で可視化したのがYouTubeチャンネルのジャにのちゃんねる。動画のプレミア公開時にメンバーがチャットに参加しています。リアルタイムイベントにおける発し手の積極的な参加が、ファンとのエンゲージメントを高めることに有効であることが感じられます。

 

 

日本における洋楽は危機的状況ではないか

日本における洋楽の危機的状況を、マイリー・サイラス「Flowers」のチャートアクションから感じています。1月3日にリリースされたこの曲は日本時間で明日発表される1月28日付米ビルボードソングチャートを制することが確実視されていますが、Spotifyにおいて「Flowers」は世界中での1週間(集計期間:1月13~19日)の再生回数が過去最多を記録しています。

一方でマイリー・サイラス「Flowers」は、日本のSpotifyデイリーチャートでは1月19日木曜までにおいて132位が最高位であり、週間単位では200位以内に入っていません。最新1月22日付では119位と、他の国や地域より圧倒的に遅れている状況です。

 

日本はK-POPが強い一方でK-POP以外の洋楽は弱いのですが、ともすればこのランキングともリンクしているのかもしれないと考える自分がいます。

関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)の恒例企画では3名の選者が2022年の年間トップ10を選んでいますが、1月22日に発表された5位までの中にはK-POPを除く洋楽がひとつも入っていません。実は前年も洋楽は極めて少なかったのですが(ランキングはこちら)、それでも5位以下にもランクインしていた状況です。2022年において4位以上に洋楽が登場するかもしれませんが、しかしこのランキングにも危機感を覚えています。

 

洋楽の危機感はこのブログで以前から述べています。特にラジオにおいてその傾向を感じていますが(下記ブログエントリー参照)、最新1月22日付の『OSAKAN HOT 100』(FM802)でトップ10に洋楽が(K-POPも含めて)ひとつも入っていないことにも驚きました。

ともすればコロナ禍によって来日公演が激減し、音楽フェスが開催されても日本の歌手のみで構成したことも影響しているのかもしれません。通常の生活に戻そうとするのであれば、そして海外の歌手を招聘するならば、まずはラジオ局に代表される洋楽を届けやすいメディアが率先して流すことも必要ではと考えます。またサブスクサービスやレコード会社が共同でキャンペーンを組む形で訴求することも有効ではないでしょうか。

 

 

終わりに

Spotifyの動向では他にも、週間単位のアーティストチャートをVaundyさんが制していることや、最新1月22日付デイリーチャートではそのVaundyさんによる「怪獣の花唄」が米津玄師「KICK BACK」と再生回数1千回強という僅差になっていることなど、気になる点が多くあります。このチャートは勿論のこと、このデータも用いたビルボードジャパンの動向についても日々チェックしていきたいと思います。