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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】Official髭男dism「Subtitle」が米津玄師「KICK BACK」を逆転した背景を探る

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

10月17~23日を集計期間とした最新10月26日公開分(10月31日付)ビルボードジャパンソングスチャートは、前週初登場で首位を獲得した米津玄師「KICK BACK」が2位に後退。「KICK BACK」と同日デジタルリリースされ前週3位に初登場したOfficial髭男dism「Subtitle」が初の頂点に輝きました。

前週2位のJO1「SuperCali」ダウンするもトップ10内をキープし、前週のトップ3は6位までにすべてランクイン。その総合6位までにおける構成8指標の順位はCHART insightに掲載されており、下記にて紹介します。

前週首位の米津玄師「KICK BACK」はポイント前週比88.1%。デジタルリリース曲は初週にダウンロードが高い反動で2週目のポイントは下がる傾向にありますが、今回1週間フル加算の効果もあってか高水準をキープ。一方でOfficial髭男dism「SuperCali」は同様初の1週間フル加算となった今回、ポイント前週比136.0%と急上昇しているのです。

注目はOfficial髭男dism「Subtitle」におけるストリーミングの高さ。『9,905,294回再生を記録して2位に初登場した前週に続き、当週は最初の1週間フル集計を迎え、前週比182%となる18,116,526回を記録』しており、ストリーミング指標首位曲では8月24日公開分(8月29日付)でのAdo「新時代」に次ぐ今年度2位の高水準に至っています(『』内は下記ツイート内リンク先より)。

米津玄師「KICK BACK」もストリーミング再生回数の前週比が125%と伸びていますが、Official髭男dism「Subtitle」の急伸は特筆すべき状況です。

 

私見と前置きして述べるならば「KICK BACK」と「Subtitle」の初週と2週目の勢いは、提供先の映像作品の前評判と放送開始後の評判との差と合致するのではないかと考えます。

米津玄師「KICK BACK」がオープニング曲に起用されたテレビアニメ『チェンソーマン』(テレビ東京)は今クールの"覇権"と言われる作品であり、また「KICK BACK」はモーニング娘。「そうだ! We're ALIVE」(2002)の引用としてもリリース前から話題に。前評判や期待値の高さ、そして期待に違わぬ質の高さが「KICK BACK」ロケットスタートおよび高水準のキープにつながったと考えます。

一方で「Subtitle」が主題歌となったドラマ『silent』(フジテレビ)の人気は徐々に上昇。リアルタイム視聴率は6.4→6.9→7.1%と微増し、加えて見逃し配信が高記録を樹立しています。

日経エンタテインメント!』11月号の10月期連ドラ記念と賞した人気予想では無印となっており(競馬の予想に見立てて◎等をつけ予想する形)、前評判が高いとは言えなかった『silent』。それが一転し、こちらも"覇権"を獲ると言われるまでになったことで、「Subtitle」の人気も急増したと捉えていいでしょう。「KICK BACK」ほどのロケットスタートとはならなかったものの、ドラマ人気拡大が曲にも波及した形です。

 

ストリーミング指標に関しては他にも興味深い動きが。

2022年度のStreaming Songsチャート制覇曲(その大半がストリーミング指標も首位を獲得)においては基本的に再生回数に占めるSpotifyでの再生の割合は1割台後半から2割強となるのですが、Official髭男dism「Subtitle」は13.8%と低いのです。実際、Spotifyでは最新10月25日火曜までの日本におけるデイリーチャートで米津玄師「KICK BACK」の後塵を拝する一方、Apple MusicやLINE MUSICでは勝っている状況です。

LINE MUSICは他のサブスクサービスより若年層が多く、ドラマ『silent』も若年層の視聴者が多いと伺っています。各サブスクサービスにおける主要利用者層の違いが、今回の差に表れているのではというのが私見。今後曲やドラマの評判を受け、Spotifyの再生回数および全体に占める割合も上がっていくことでしょう。

 

加えて、Official髭男dism「Subtitle」は動画再生指標が4位に到達。未だミュージックビデオが用意されておらず(ティザー(ティーザー)は今回の集計期間中に公開も、正式な公開日時は未定)、公式オーディオのみ用意された状況での動画再生指標高水準は、ドラマ(特に配信)からの視聴者の流れを想起させるに十分です。

CHART insightでは赤で表示される動画再生指標が「Subtitle」と米津玄師「KICK BACK」では大きく異なっており、Official髭男dism側が「Subtitle」の公式オーディオを用意したことが総合での逆転首位につながったといえるのではないでしょうか。

 

構成8指標で最も上昇速度が遅いカラオケにおいては、Official髭男dism「Subtitle」が100位未満ながら300位圏内に入り初めて加点されています。一方でこのカラオケ指標では米津玄師「KICK BACK」が92位に登場しており、一昨日公開されたミュージックビデオ効果も相俟って急上昇することが想起されます。

(上記CHART insightにおいて、カラオケ指標は緑で表示。なお米津玄師「KICK BACK」の動画再生指標の急落は、『チェンソーマン』の短尺版オープニング動画(→こちら)の人気が一段落したゆえと考えます。)

映像作品がいわば"覇権”を獲った状況であること、ミュージックビデオ公開に伴う動画再生指標の上昇やカラオケ人気の上昇が予想されることを踏まえれば、今回首位を奪取したOfficial髭男dism「Subtitle」と米津玄師「KICK BACK」の高水準での首位争いは継続するものと思われます。その状況下で、フィジカルセールスが突出した作品が果たして週間単位でも首位に到達するかは、デジタルが強くない限り難しいといえるでしょう。

Official髭男dism「Subtitle」そして米津玄師「KICK BACK」については、それぞれのタイアップ先となる映像作品の放送終了まで特に目が離せません。「KICK BACK」においてはフィジカルセールスが初加算される11月30日公開分(12月5日付)までポイントをキープし、フィジカル初加算週に総合首位に立てるかにも注目しましょう。