ジャニーズ事務所所属、Travis Japanが10月28日にメジャーデビューすることをアナウンスしました。
Travis Japanが全世界メジャーデビュー決定、滝沢秀明のコメントも到着 https://t.co/Wkf11lHau0 pic.twitter.com/VPAF2L4Crp
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) September 29, 2022
Hello, we’re #TravisJapan!!!!!!!
— Johnny & Associates (@johnnys) September 28, 2022
🎵Debut Single Streaming Worldwide 2022.10.28https://t.co/qVgX2lsRIV#HollywoodTJ #WorldwideTJ pic.twitter.com/X15puCkvmK
ジャニーズ事務所発のツイートにもあるように、Travis Japanはストリーミング、つまり配信の形でデビューすることに。これが同事務所、そして日本全体のエンタテインメント界におけるデジタルの流れを作るものと期待しています。
さて、チャート面からこの点を語る前に、引っ掛かった2つの点についてまずは私見を述べさせていただきます。
その2点とは、各種報道や上記Travis Japanの公式YouTubeチャンネル発動画にも謳われた"世界"でのデビューという表現、そしてデビューの発信への"これじゃない"という声の散見でした。
後者においては、ライブ会場でファンと共有する形でデビューを知らされたなにわ男子とは真逆と言えるために尚の事そう思わせたと考えます。一部メディアの抜け駆けもその思いを加速させたことでしょう(そのメディアのやり方には強く反対します)。しかし個人的には、なにわ男子のデビューアナウンス時にあった"CDデビュー"という表現に強い違和感を覚えていましたし、その予感の通り彼らの配信は未だ叶っていません。
またフィジカルではなくデジタルでのデビューという状況は、コアファンの所有欲を満たしにくいという思いもありますが、その点についてはいずれ解消されていくことでしょう。まずは配信するという姿勢がみられただけでも大きな前進だと受け止めるほうが好いと考えます。
なお、デジタル配信はドメスティック主体に活動している歌手にとっても世界規模で作品が所有ないし接触できることを意味するため、"世界"デビューと敢えて謳うことには違和感を覚えますが、Travis Japanが今後も日本の枠を越えて活動する意志を示したものと受け止めたいと思います。
今回、Travis Japanは10月28日金曜にデビューすると明らかにしました。この金曜リリースはなにわ男子「初心LOVE」も同様でしたが、世界における新曲解禁が基本的に金曜であること、音楽チャートが金曜集計開始という状況を踏まえれば、それらをきちんと意識した解禁であると言っていいでしょう。
それも踏まえて、Travis Japanのデビューから以下の3点を希望します。
<Travis Japan配信デビューを踏まえての個人的な希望>
① ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル解禁
② グローバルチャートへのランクイン
③ グローバルチャートの浸透と日本の音楽業界の積極的な海外展開
ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル解禁については、このブログやTwitterの音声配信機能であるスペース等でも幾度となく願っています。デジタル解禁がフィジカルセールスを圧迫する可能性は思うほど大きくないだろうこと、仮に圧迫するとしてデジタルには廃盤の概念がほぼないために持続的に利益を確保できること、何かのきっかけで再注目された際に配信していればチャートにも復活可能なこと等がその理由です。
現にジャニーズ事務所所属歌手はYouTubeを積極的に解禁し始めており、ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標、そして総合ソングスチャートにも影響が出ています。TikTokの解禁も戦略の一環と言えますが、(ショート)動画が所有のみならず接触指標、特にサブスクに寄与することを踏まえれば、サブスク未解禁という状況は勿体ないと言えます。Travis Japanの配信が事務所側の意識変革につながると期待します。
続いてはグローバルチャートへのランクイン。この可能性は低くはないというのが私見です。
グローバルチャートは米ビルボードが2年前に新設した、世界200以上の国や地域における主要デジタルプラットフォームでのダウンロードおよびストリーミング(動画再生含む)から成るソングスチャートのこと。詳細は上記ブログエントリーにて記載しています。
グローバルチャートのうち、Global 200では藤井風「死ぬのがいいわ」(2020年のアルバム『HELP EVER HURT NEVER』収録曲)が前週初登場を果たし、最新10月1日付ではキャリア最高位である118位に到達しています。この曲の初登場時に下記ブログエントリーを記しましたが、TikTokのバズを機に過去曲が上昇するのはJ-Popでは異例のことです。
また、グローバルチャートのうちGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.では、Ado「新時代」が先月にJ-Popでは3曲目となるトップ10入りを果たしました(BTSによる日本語詞曲は除く)。その際、これまでトップ10入りしたJ-Pop作品のチャートインを振り返りましたが、J-Popはダウンロードの強さがGlobal Excl. U.S.トップ10入りの原動力であったことが解ります。
J-Popの3曲は、いずれもダウンロードが強い傾向があり、「炎」のGlobal 200における97,000という数値は当時の最高記録を更新していますが、ストリーミングはそこまで強くないというのが現状です。これはJ-Popが基本的に日本での所有/接触が主体となってランクインしていること、日本ではダウンロードの水準が高いためと言えます。
トップ10入りは逃すもGlobal Excl. U.S.で17位に初登場した、ジャニーズ事務所所属の嵐「Whenever You Call」についても、ダウンロードの強さが目立っていました。
グローバルチャート新設から間もない、一昨年秋の記事。
— Kei (@Kei_radio) September 29, 2022
『ブルーノ・マーズが共作した嵐の「Whenever You Call」は、当週オーディオ/ビデオ・ストリーミングが680万回、48,000ダウンロードを記録し、“Global 200”で51位、“Global Excl. U.S.”では17位に初登場した。』https://t.co/KZ3itz0Pkq
J-Popはストリーミングが世界的に拡がっているとは言い難いものの(ゆえにTikTokのバズを機に世界に拡がっている藤井風「死ぬのがいいわ」の動向は特筆すべきです)、ダウンロードの強さにより一時的にでも上位に進出することは可能だと解ります。グローバルチャートも金曜を集計開始日としており、Travis Japanのデビュー曲が日本時間で11月8日発表予定の11月12日付グローバルチャートに初登場する可能性は有り得るのです。
ともすればフィジカルが出るまで所有しないコアファンもいらっしゃるかもしれません。ならばサブスクで聴くことを選ぶことを勧めます。その接触/所有の成果が、Travis Japanの世界チャート進出につながるかもしれません。最善はロングヒットですが、週間チャートの記録も大事なことです。
(なお、グローバルチャートのカウント対象サービスにはLINE MUSIC等ドメスティックなデジタルプラットフォームは含まれていないと考えられます。)
なお、グローバルチャートではフィジカルセールスは対象外ですが、米ビルボードソングスチャートではダウンロード指標に含まれます。またフィジカルは歌手のホームページにおける販売分もカウント対象となります。歌手側はフィジカルをチャート施策の目的も兼ねてタイミングを図りリリースする傾向があるため、米で実績を積んだTravis Japanも同種の施策を採れば、米でのランクインの可能性もゼロではないでしょう。
そしてもうひとつが、グローバルチャートの浸透と日本の音楽業界の積極的な海外展開。この点については以前TOKIONに寄稿したコラムに記しています。
この寄稿の後、藤井風「死ぬのがいいわ」のバズが発生していますが、メディアはこのバズをなかなか取り上げていません。Yahoo! JAPANのニュース検索で曲名検索を行っても9月30日5時の段階で8件のみ(「死ぬのがいいわ」の検索結果 - Yahoo!ニュース参照)。仮に曲名が紹介を足踏みする理由だとして、この曲の真意を伝える気概があれば異例のチャートインを伝えることができるはずです。
そしてそもそも、グローバルチャートの認知度が高くないことを痛感しています。これは藤井風「死ぬのがいいわ」のチャートインのみならず、Ado「新時代」のGlobal Excl. U.S.トップ10入りの際にも感じていました。
Travis Japanの"世界"デビューが大きく報じられたことで、グローバルチャートに登場すればそのランクインをひとつの大きな成果としてメディアが取り扱うかもしれません。その報道が増えることで音楽業界も、そして音楽ファンの視野もグローバル化に至れるはずです。その意味でも、チャートインは重要な意味を持つと捉えています。
Travis Japan配信デビューを踏まえての個人的な希望、3点を記載しました。Travis Japanのデビューは日本のエンタテインメント全体に通底するドメスティック寄りな視点をグローバルに変える最良の機会のひとつと捉えています。その意味でも、活躍を期待したいところです。