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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンにおける販路限定分のフィジカルセールス未加算について、カウントは必要ではと考えてみる

次週、6月29日公開分(7月4日付)のビルボードジャパンアルバムチャートの集計期間前半の速報が一昨日および昨日公表され、アルバムのダウンロード指標では嵐の二宮和也さんによるカバーアルバム、『○○と二宮と』がトップを走っています。

この作品が今週月曜にデジタル解禁されたことについては、同日のブログエントリーにて紹介しました。フィジカルは二宮和也さんの誕生日である6月17日金曜に、嵐のファンクラブ会員による事前予約分のみがリリースされており、一般流通されていません。

それゆえ、6月19日日曜までを集計期間とする最新6月22日公開分(6月27日付)ビルボードジャパンアルバムチャートでは、興味深い現象がみられます。

アルバムチャートはフィジカルセールス、ルックアップおよびダウンロードの3指標で構成。上記CHART insightでは黄色で示されるフィジカルセールスは加算されず、CDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示すルックアップ(オレンジで表示)だけで総合8位に入るという、珍しいポイント構成となっています。

 

フィジカルセールスが加算されないのは、下記ツイートのリンク先に掲載されたビルボードジャパンのチャートポリシーに基づくゆえ。

この"フィジカルセールス指標未加算ながらルックアップは加算"という状況は、ファンクラブ等購入先を限定したNissy「トリコ」や、書籍としてリリースしたマキシマムザホルモン「maximum the hormoneⅡ~これからの麺カタコッテリの話をしよう~」でも発生しています。

CDの形態を採らなかったり、CDをリリースしても一般流通されないフィジカルについて、どんなに欲しくても入手困難という状況を考えればフィジカルセールス指標の未加算は納得できないわけではありません。

しかし、現在はフィジカル購入のコアファンによる度合いがますます高まり、フィジカルのグッズ的な意味合いが高まっています。実際、CDをグッズ(的側面が強まっている)とみなす記事や有識者も増えている印象です。販路が限定されるフィジカルは、コアファンの購入意識がより高まるという点において、ある意味グッズの最高峰的な位置付けと見なしてよいのかもしれません。

また、ここ最近フィジカルリリースがアナウンスされた作品において、販路を限定したものが複数登場しています。

水曜日のカンパネラのEP『ネオン』には、現在TikTokでバズ発生中の「エジソン」が収録。ワーナーミュージック・ストアはコアファン以外にも購入可能だとして、ライブ会場での販売についてはファン以外の購入が難しいものと思われます。

メンバーの重岡大毅さんが主演するドラマの主題歌としてリリースされる、ジャニーズWEST「星の雨」については通販盤が存在。「Summer Memories」はこの通販盤でしか手に入れられない音源であり、通販盤のニーズは少なからず存在するはずです。水曜日のカンパネラ共々、今後このような販路限定が増えてくるだろうことを容易に想像できるニュースだと言えるでしょう。

 

月曜のブログエントリーでは、二宮和也『○○と二宮と』の販売手法が今後増えてくるだろうと予想し、このように記しました。

フィジカルの購入先を限定すること、そしてデジタルをきちんと解禁することでライト層にも満足感を与える手法は、米で顕著という印象があります。米ではCDショップは多くありませんが歌手のホームページにてフィジカルが積極的に展開され、売上は米ビルボードチャートのカウント対象となります。チャートを定点観測すると、ホームページでの売上が万単位となった作品も確認できます。

日本では、(中略) デジタルを解禁しライト層にも届けているならばこの手法は今後増えていくことでしょう。

しかし、フィジカルセールスが加算されないことはチャート上では不利になります。尤もチャート成績を気にしないゆえの販路限定とも言えそうですが、しかし通常のフィジカル自体コアファン向け、グッズ的要素という意味合いが強まっている以上、販路限定した作品の売上もカウントするのがいいのかもと実感するに至っています。ビルボードジャパンには、チャートポリシー見直しが必要かを一度議論することを願います。

ただし、販路限定分をカウントする形にチャートポリシーを変更する際は、その分の売上枚数が客観的に把握できるシステムを用意すること、および通常販売分に比べて1枚あたりのウエイトを下げることを検討することも、併せて提案します。後者においては一定枚数の売上を超えた分に係数処理が施されている現在のチャートポリシーを踏まえてのものです。