イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

上半期チャート首位確実のAimer「残響散歌」、年間制覇の可能性は…最新チャートトップ10落ちの理由を考える

先週金曜に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日)にて、ビルボードジャパンの2022年度上半期ソングスチャート(Hot 100)が先行公開されました。厳密には明後日発表の6月1日公開分(6月6日付)までが上半期の集計期間となり、トップ10の顔ぶれは変わらないとしても動画再生やカラオケといった各指標の順位は変わるかもしれません。それでも総合首位はこの曲で安泰でしょう。

Aimer「残響散歌」は現段階で、2位の優里「ベテルギウス」のおよそ1.5倍ものポイントを獲得し独走状態とも言えます。一方でこの「残響散歌」が年間ソングスチャートを制することができるかについて、ライバルの動向如何ではあれどその可能性は低くなったという印象を抱いています。というのも、最新5月25日公開分(5月30日付)にて「残響散歌」はトップ10から脱落してしまったのです。

Aimer「残響散歌」は7連覇を含む通算9週首位を獲得した一方、連続トップ10記録は23週で止まってしまいました。これは一昨年の年間チャートを制したYOASOBI「夜に駆ける」の55週連続(通算66週)、昨年の覇者である優里「ドライフラワー」の73週連続(最新チャートでトップ10に復帰し、通算74週)と比べても短いのです。無論凄い記録に変わりはないのですが、しかし連続トップ10入りが途絶えたことは気掛かりです。

 

Aimer「残響散歌」の大ヒットについては、以前このブログで内的および外的要因を分析しました。

外的要因とは、フィジカルセールスに強い作品のほぼ不在という状況。Aimer「残響散歌」が最後に総合首位を獲得した3月2日公開分(3月7日付)の翌週以降、12週のうち9週でフィジカルセールス24万枚以上を記録した作品が首位に到達。うち40万枚以上が7曲もあった一方、Aimer「残響散歌」が通算9週首位を獲得した間にはフィジカルセールス24万枚以上となったのはわずか2曲しかありません。

しかしそれらフィジカルセールスに強い作品は急落が目立つのが特徴。デジタル、特に接触指標群(ストリーミングおよび動画再生)に強い作品がトップ10をキープする傾向があるのですが、しかしAimer「残響散歌」はポイントの漸減が続いているのです。

上記はAimer「残響散歌」におけるチャート推移。4月20日公開分ではトップ10で7曲が入れ替わったことで2→7位と大きく後退していますが、注目は2月23日公開分(2月28日付)以降のポイント推移。前週比1割前後のダウンが続いています。なお5月11日公開分(5月16日付)の集計期間は大型連休後半のためストリーミングが伸び、ポイントも増加に転じていますが、それでもストリーミング再生回数の上昇は1.8%にとどまっています。

これを踏まえれば、外的要因もさることながら、Aimer「残響散歌」のポイント漸減は内的要因も影響していると捉えていいでしょう。そしてその理由を考えるに、Aimerさん側のアクションが多くないことが影響しているのかもしれません。

 

Aimerさんは"Walpurgisnacht”と題したホールツアーを、2月から6月まで開催。ともすればこれによりメディア、特にテレビ露出が減ったことや新曲リリースがないことがポイント漸減の内的要因と言えるでしょう。Aimerさんおよびスタッフが運営するTwitterアカウント(→こちら)をみると、ツイート数は多くない印象です。そして「残響散歌」が最後に首位を獲得して以降、たとえば新曲アナウンスは下記にとどまります。

無論、ライブツアーに集中するゆえにSNSを控えているとも受け止めるのですが、たとえばチャート結果のアナウンスについても多くはありません。ビルボードジャパンに関する言及は下記を最後に止まっており、先週金曜の『ミュージックステーション』で上半期首位を「残響散歌」が獲得したことについても触れられていません。尤も、6月10日のチャート紹介時に何かしらのアクションを行うものとは思いたいのですが。

 

このブログでは今月、YOASOBIについてもチャート上でのダウンが目立ってきたことを書きましたが、新曲「好きだ」を解禁した本日に至るまでにYOASOBIは様々な発表を畳み掛けています。また優里さんにおいてはYouTuber的なチャンネル"優里ちゃんねる"を毎日更新する等、SNSを巧く活用しています。

新曲リリースで過去曲も再注目されますが、その新曲への期待値をどう高めるかを含め、歌手への注目度を如何にして常時高い状態にするか…YOASOBIや優里さんはそれを見事に具現化していると考えます。エンゲージメントの確立や徹底はライト層の拡大やコアファンへの昇華につながり、最終的にはチャートに反映。SNS活用の巧さも、「夜に駆ける」や「ドライフラワー」のロングヒットの要因と言えるでしょう。

 

AimerさんのTwitterアカウントから発信される内容は、YOASOBIや優里さんほど濃くはない印象があります。無論歌手毎にペースがあり、無理強いすることはNGですが、しかし数的にも少ないと感じます。チャート下降に敢えて触れないゆえか、9週目の首位獲得後にビルボードジャパンへの言及は行っていないとして、毎週上位に登場することへの感謝を述べることで再注目される可能性があることは考慮していいと思うのです。

日本におけるSpotifyデイリーチャート、最新5月28日分では『ミュージックステーション』で紹介されたビルボードジャパン上半期ソングスチャートトップ10入り作品がすべて再生回数前日比10%超えを果たしていますが、Aimer「残響散歌」の前日比(110.9%)はKing Gnu「逆夢」(同110.5%)に次いで低い状況。番組経由でAimerさんのSNSに触れた方を考慮すれば、上半期制覇について一言でも触れたほうがよかったと考えます。

 

 

記録達成等の報告についてはスタッフの方がつぶやくことで、先程紹介した9週目首位獲得の際のようなAimerさん本人による引用リツイートも可能となります。Aimerさん以上にスタッフサイドがもう少し積極性を持ってSNSを活用すれば、Aimer「残響散歌」をはじめとする彼女の作品へのリーチは今からでも高まるはずです。それがライト層を拡大し、「残響散歌」のポイント下降度合いを小さくすることにつながるでしょう。