イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アルバムチャート完全制覇達成の藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』、そのチャート動向から見えてくることとは

最新3月30日公開(4月4日付)ビルボードジャパンアルバムチャートは藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』が制覇。この作品については速報段階を踏まえて週間チャート首位発進を予想していましたが(藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』の凄まじい勢いを数字の面から確認する(3月26日付)参照)、最終的には構成3指標すべてトップという完全制覇を成し遂げています。

藤井 風の2作目となるオリジナル・アルバムは、当週142,921枚を売り上げてCDセールスで1位、ルックアップで1位、ダウンロード数9,675DLで1位と3冠を達成している。

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ルックアップとはCDをパソコン等インターネット接続機器にインポートする際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能とします。レンタル解禁が来週(およびそれに伴うルックアップは2週後に初加算)となる『LOVE ALL SERVE ALL』は、レンタル以前の段階でルックアップも制しています。

ビルボードジャパンアルバムチャートにおける構成3指標全制覇は、Ado『狂言』に続く今年度2作品目となります。

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今年度のビルボードジャパンアルバムチャートにおける首位獲得作品の3指標動向、および各指標の首位作品を一覧化したものを上記に。フィジカルセールスに強い作品が総合を制覇する傾向が強いアルバムチャートにおいて、前作『HELP EVER HURT NEVER』の初週動向(→こちら)に比べフィジカルセールスでおよそ6.9倍、ダウンロードでおよそ3.7倍ものセールスを獲得した『LOVE ALL SERVE ALL』の勢いを強く感じます。

『LOVE ALL SERVE ALL』への注目度の高さは、日本におけるSpotifyデイリーチャート200位以内に収録された11曲がすべて登場したことからも解ります。翌日も11曲がランクインしていることは、アルバムを通して聴く方が多いと捉えていいでしょう。

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ダウンロードやルックアップにて強さを発揮するアルバムを抽出し、初登場時の動向および初週(日曜まで)の日本におけるSpotifyデイリーチャート200位以内ランクイン曲数をまとめたものが上記。2021年度最終週に3指標完全制覇を達成したNiziU『U』も含めています。アルバム収録曲数のSpotify登場の割合はYOASOBIが100%をキープし、藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』が続くという状況です。

 

一方でアルバム初登場週におけるビルボードジャパンソングスチャートでの収録曲の動向をみると、総合およびストリーミング100以内におけるランクイン曲数は藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』収録曲が最も少ないことが解ります。アルバムリード曲共々ロングヒット曲がランクインする傾向にある中、藤井風さんはリード曲の「まつり」と昨年度の年間ソングスチャート19位の「きらり」のみという状況が気になります。

アルバムの勢いを押し上げるには、リード曲のみならずロングヒット曲が複数あることが有利に作用するものと考えられます。複数曲の存在がアルバムを一度は聴こうとする動機を強くするだろうと考えるに、藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』においては「きらり」以外にもロングヒット曲が生まれることで初動がより盛り上がったかもしれません。次作以降の(チャートアクションにおける)課題と言えるでしょう。

 

では、藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』がロングヒットするにはどうすればいいでしょう。

藤井風さんはファーストアルバム『HURT NEVER HURT NEVER』がロングヒットに至りました。無論ファーストとセカンドとでリリース時における知名度は大きく異なるため『LOVE ALL SERVE ALL』のほうが初動型と言えるでしょうが、『HURT NEVER HURT NEVER』においてはリリース後に複数曲のミュージックビデオを用意したこともロングヒット化につながったと捉えています。リリース後も仕掛けることが有効なのです。

藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』のリリース日に上記プロジェクトが始まりました。未発表曲を用いることから、ともすれば藤井風さんサイドはサードアルバムを見据えた動きを採るのかもしれませんが、このようなプロジェクトもしくはタイアップが『LOVE ALL SERVE ALL』収録曲関連で別途登場するならば、セカンドアルバムのロングヒット化につながっていくことでしょう。

 

アルバムチャートにおいては初動のみならず、レンタルに伴うルックアップが1週間フル加算される4週目までの動向をきちんとチェックした上で、ロングヒットに至るかを見極めることが必要だというのが私見です。藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』の動向、注目していきたいと思います。