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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

エド・シーランとテイラー・スウィフトの新たなデュエットが登場…リリース施策の巧さに触れる

エド・シーランとテイラー・スウィフトのコラボレーションはこれまでもありましたが、今回は今後のチャートアクションにおいても非常に興味深い内容となっています。

このコラボレーションはこれまで3度みられましたが、いずれもテイラー・スウィフトの作品にエド・シーランが参加した形。今回は逆の立場として初となりますが、このコラボレーションの存在を"匂わせる"と言える施策(上記記事参照)が実に興味深いですね。良い表現ではないかもしれませんがしかし、この施策がコアなファン主体に興味を高め、ライト層を巻き込んで認知度上昇や関心の高さに導くはずです。

 

この施策で思い出したのは、テイラー・スウィフトの削除の件でした。

テイラーはアルバム『Reputation』(2017年)からのリード曲「Look What You Made Me Do」をリリースする直前、それまでのSNSアカウントでの発信内容をすべて削除し、代わりに蛇の映像をアップしたのです。無論管理するのはテイラー側だとしても、SNSの発信内容をあまりに一方的に消すというやり方は個人的に支持しかねますが、しかしテイラー・スウィフトの話題づくりの巧さは特筆すべきものがあります。

またこのブログで毎週紹介する米ビルボードソングスチャートで幾度となく採り上げたフィジカル施策についてもテイラー・スウィフトが初と言われており(2019年リリースのテイラー・スウィフト feat. ブレンドン・ユーリー「Me!」と言われていますが、記憶違いの可能性もありますのでご了承ください)、注目を集めることに如何に長けているか、そしてチャートへの意識の高さがよく解るのです。

 

(ちなみに、フィジカル施策とは歌手のホームページ上でCDやレコード等フィジカルを販売し、またフィジカル到着までの間に曲を楽しんでもらうべくデジタルダウンロードも配布する方法。米ビルボードでは長らく、発送ではなく予約段階で売上を立て、またデジタルについても売上にカウントされたため、シングルリリース週に米ビルボードソングスチャートのダウンロード指標でロケットスタートを切ることが可能でした。

この施策を用いて総合ソングスチャートでも初登場で首位に至った、もしくは急浮上し首位に上り詰めた作品は複数ある一方、所有指標は急落傾向が高いため翌週は総合チャートでもダウンする傾向にあり、首位獲得週のみトップ10入りという作品も少なくありませんでした。

フィジカル施策を採った曲のチャートにおける不自然な動向を踏まえ、米ビルボードは2020年10月にフィジカル施策を実質的に無効とするチャートポリシー変更に至っています。フィジカルセールスのカウントは発送段階に改められ、またフィジカル購入時のデジタルダウンロードは売上にカウントされなくなっています。)

 

テイラー・スウィフトに限ったことではありませんが、海外の歌手にはコアなファンが運営していると思しきチャートに的を絞ったTwitterアカウントが複数存在します。

チャート主体につぶやくTwitterアカウントはテイラー・スウィフトBTSが特に多い印象があります。アデルやジャスティン・ビーバー等においても確認しており、如何にリリース効果を最大化し、チャートアクションの強化に熱心になっているかを実感します。ともすればチャートにこだわりすぎると言われるかもしれませんが、それだけ今のビルボードチャートがヒットの鑑であること、首位の意味の大きさがよく解ります。

 

話をエド・シーランに戻せば、今回デュエット化される「The Joker And The Queen」のオリジナル版は昨年リリースのアルバム『= (Equals)』に収録されたもの。エド・シーランは前作『÷ (Divide)』(2017年)から「Perfect」をシングル化する際、アンドレア・ボチェッリそしてビヨンセをそれぞれ招いたバージョンをリリースし、特にビヨンセ版が支持を集めたことで米ビルボードソングスチャートでは首位に到達しています。

そして「The Joker And The Queen」については、現地時間の今週火曜に開催されたブリット・アワードで披露されたソロバージョンをエド・シーランの公式YouTubeチャンネルで即座に発信。つまりこの曲においてはテイラー・スウィフトを迎えたバージョンをリリースする前、アワードでのパフォーマンス公開でエンジンをかけたことに。スケジュールの組み立て方を踏まえれば、エドのチャートへの意識の高さもよく解るのです。

さらにエド・シーランのインスタグラムではサイン入りのCDジャケットが掲載され、フィジカルリリースの用意も示唆しています(インスタグラムはこちら)。フィジカルが米でリリースされるならばその効果は大きく、フィジカル施策は無効化されているもののセールス自体はチャート上で大きな武器になることから、再来週に公開される2月26日付米ビルボードソングスチャートでどの位置に登場するかが今から楽しみです。

 

エド・シーラン「The Joker And The Queen」のテイラー・スウィフト参加版は本日リリースされます。チャート動向に注目しましょう。