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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

BE:FIRST「Shining One」のチャート上昇は、様々な角度から注目され支えられているゆえの成果ではないか

最新9月29日公開(10月4日付)ビルボードジャパンソングスチャートで興味深い動きが。BE:FIRST「Shining One」が前週の29位から7ランク上昇し22位へ、そしてポイント前週比は119.0%を記録しています。

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オーディションから登場したBE:FIRSTは、11月3日にデビューシングル「Gifted.」をフィジカルリリース。そのアナウンスが9月17日に行われ、9月20日からの1週間を集計期間とする最新ソングスチャートではプレデビュー曲「Shining One」を含む3曲がTwitter指標で20位以内にランクインしています。

今回の「Shining One」における浮上はそのTwitter指標もさることながら、2つの上昇がより大きく影響したものと考えます。ひとつはラジオが43→4位へジャンプアップしていること。ラジオはビルボードジャパンソングスチャートを構成する指標の中でも特殊な動向を辿りがちです。

ネット発のヒット曲が反映されるまでには時間がかかり、またヘビーローテションに選ばれる曲にも傾向があります。その中にあって、BE:FIRST「Shining One」がこのタイミングで上昇するのは珍しいと言えます。たとえばPerfume「ポリゴンウェイヴ」は収録EPがアルバムチャートで初登場したタイミングで11週ぶりにラジオ指標トップ10内に返り咲きましたが、「Shining One」の同指標トップ10入りは今回が初となります。

この理由について、ビルボードジャパンに情報を提供するプランテックはこのように説明しています。なおミュージックマンネットに掲載されるプランテックのデータはOA数に基づくランキングであり、ビルボードジャパンのラジオ指標はこのデータを基に聴取可能人口等を加味して独自に算出されるものであるため、OA数によるランキングでは73→4位と推移しています。

BE:FIRST「Shining One」(73位→4位)は、SKY-HI主催オーディション「THE FIRST」発のボーイズグループによるプレデビュー曲で、8月16日の配信リリースながら前週に続いて今週もコメント出演等がみられつつ、少々偏りがありながらもFM中心にオンエアを積み上げた。

BE:FIRSTのTwitterアカウントでは、ラジオ出演情報が次々アップされています。たとえば今夜については下記に。

偏りがあるのはコメントが流れる局でOAされがちだからかもしれませんが、このコメント出演は、純粋にOA回数を上げるのみならず地方にもBE:FIRSTの名を浸透させること、地方局との好い関係を築き上げることは勿論のこと、ラジオでコメントが読まれることで全国のBE:FIRSTファンがその局へradikoを介してアクセスすることになり、放送局の注目度のみならずradikoのプレミアム会員数上昇にも寄与します。

この段階でラジオ局との関係を強化することは、11月3日リリースの「Gifted.」がOAされやすくなることにもつながります。既に「Shining One」はビルボードジャパンソングスチャートで2週連続トップ10入りという実績を築いているわけで、ラジオ局側がBE:FIRSTを(語弊があるかもしれませんが)無視できなくなったこともOA回数の上昇につながっているはずです。

 

地方との関係強化については、ステッカープレゼントキャンペーンも影響していると言えます。

たとえば青森県ではタワーレコードHMVそして地元CDショップをきちんと押さえており、その配慮もまた巧いと感じます。ファンがその店舗で「Gifted.」のフィジカルシングルを予約することにもつながる可能性があるわけで、このキャンペーンもまたCDショップとつながりのあるであろう地方ラジオ局のOA上昇に寄与しているかもしれません。

コメント出演とCDショップへのステッカーの用意。これら地方との信頼を築く動きがラジオ指標に有効に作用しているものと考えます。

 

 

BE:FIRST「Shining One」のチャート上昇に影響を与えたもうひとつのポイントは、Top User Generated Songsチャートにおける動向。「Shining One」は前週から67ランクの大ジャンプを果たしトップに躍り出ました。最新チャートはこちらから確認できます。

Top User Generated Songsチャートは今年度に新設された、『踊ってみた動画など、YouTubeで公開されているユーザー生成コンテンツのみを集計』したチャート*1。ユーザー生成コンテンツ(以下UGC)の盛り上がりを示すこのチャートについては下記ビルボードコラムで解説していますが、動画再生やストリーミング等指標に飛び火しヒットする曲もあります*2

このUGCもまた、BE:FIRST側の施策が大きく影響したのではないでしょうか。

このようなプレゼント企画があると、動画投稿者を刺激することは間違いありません。たとえば、ボーイズグループを主に解説するYouTuberとして活動するカンジさん(チャンネルはこちら)は上記ツイートに刺激を受け、歌ってみた動画を投稿するに至っています。

このような動画が多く、また再生回数を伸ばしたことがTop User Generated Songsチャートの躍進、さらには動画再生やストリーミング指標のキープにつながったと言えるでしょう。地方そしてネットを押さえるBE:FIRSTサイドの巧さを感じずにはいられません。

 

 

世界に通用する新しいボーイズグループを輩出すべく多額の私財を投入したSKY-HIさん。そのオーディション”THE FIRST”では選出メンバーは勿論、選ばれなかったメンバーの才能や魅力も引き出され、そしてSKY-HIさんの人柄と意志に注目が集まりました。オーディションに魅了されBE:FIRSTやSKY-HIさん等が所属するBMSGを後押ししたいというファンの意志が、クラウドファンディングでの4億円突破につながったと言えます。

9月23日にはじまったクラウドファンディングの勢いもまた、「Shining One」の注目度アップにつながったのではないでしょうか。

 

 

ラジオ局やCDショップ(実店舗)といった地方、ネットのクリエイターやインフルエンサー、そしてファン…様々な角度から注目され、支えられているのがBE:FIRSTであり、「Shining One」の動向に表れたというのが今回の結論です。「Gifted.」がフィジカルセールス指標で初加算される11月10日公開(11月15日付)ビルボードジャパンソングスチャートまでの間、「Shining One」がどのような推移を示すか注目していきましょう。

*1:『』内は【ビルボード 2021年上半期UGC Songs】Kanaria「KING」が通算16回の首位で上半期制す、2位はAdo「うっせぇわ」がチャートイン | Daily News | Billboard JAPAN(6月4日付)より。

*2:一方で昨年度まではUGCが動画再生に合算されていたため、今年度分離されたことでヒットが可視化されにくくなった曲もあると捉えています。