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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

BE:FIRSTのデビュー日がINIと重なることへの私見…フィジカルセールスに強い曲の競合は自然なことでは

オーディション企画"THE FIRST"から登場したダンスボーカルグループ、BE:FIRSTのデビュー日が11月3日に決定しました。

昨日はジャニーズ事務所所属(以下ジャニーズ)のなにわ男子も11月にデビューをアナウンス。また11月3日は別のオーディション企画"PRODUCE 101 JAPAN SEASON2"から登場したINIがデビューすることが事前アナウンスされており、3組のダンスボーカルグループがすべて11月にフィジカルリリースを果たします。BE:FIRSTはINIとデビュー日が重なるわけですが、THE FIRST主催のSKY-HIさんの言葉には感心させられます。

SKY-HIさんはINIのデビュー日に敢えてぶつけたのではないと捉えています。最善のタイミングがこの11月3日というだけだったのではと考えますし、また仮に他の歌手がこの日にニューシングルをリリースしたとして信じた道をただ進むだけではないでしょうか。

と、いうよりは。

 

この"競合せずに登場する"状況、非常に多いのです。

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上記は2020年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおける、フィジカルセールス指標で週間10万以上を記録した曲の一覧。なお、シングル全体のタイトルとリード曲(フィジカルセールスおよびルックアップ指標が加算対象となった曲)のタイトルが異なる場合もあり、その場合はリード曲のタイトルを記載しています。

 

これをみるとAKB48以外のAKBグループや秋元康さん関連のプロジェクト、ならびにハロー!プロジェクトがほぼジャニーズとリリースが被るものの、AKB48と坂道グループそしてジャニーズはリリース日がほぼ被っていません*1。またK-Popアクトも被ることはあまりありませんが、一方で米津玄師さんや星野源さん、三浦春馬さんはリリース日が被っています。

私見と前置きした上で書くならば、リリースタイミングが1年に52週しかない緻密なパズルと言える中でよくこれだけバッティングしないものだと感心させられます。同じ芸能事務所内では計算できても他のプロダクションとほぼ被らない事自体珍しい上に、それが続くのは奇跡的とすら言えるかもしれず、(INIに遅れてのアナウンスとはなりましたが)BE:FIRSTのデビューが重なり競合することのほうが本来は自然だと思うのです。

 

 

結果的に10万枚以上の売上を記録した作品の大半は総合ソングスチャートでも首位を記録していますが、総合首位獲得の翌週に急落することが大半であり、10万枚以上且つ総合首位を記録した曲(58週分)が翌週もトップ10にとどまったのは上記表においては9月8日公開(9月13日付)までで19週分にとどまります。それ以外の首位獲得曲(35週分)がすべて翌週に5位以内をキープしているのとはあまりにも大きく異なるのです*2

 

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BE:FIRSTはプレデビュー曲「Shining One」がINIの先輩に当たるJO1の「REAL」に阻まれながら2位発進となり、登場4週目となる最新9月15日公開(9月20日付)では25位に。2週連続でトップ10をキープしながらも4週目の位置としては高くはないと言えますが、しかし「REAL」が12→77→100位未満(300位圏内)となったのに比べればトータルでは高いと言えます。元々フィジカル未リリースであり、デジタルが牽引しているわけです。

BE:FIRST側は、そしてSKY-HIさんはフィジカルセールスを11月3日に持ってきたとして、デジタルとの両立を図ることで最終的に勝機を掴もうとしているのではと感じています。先程の動画はデビュー日がアナウンスされた昨日のインスタライブ終了直後にプレミア公開されたものですが、SNSYouTubeの活用が実に巧いと思わずにいられません。

 

無論フィジカルセールスが強いことには越したことがありませんしコアなファンの協力も素晴らしいことです。そして、それと同時に必要なのはどれだけライト層にリーチするかであり、フィジカルセールスに頼らずヒットする曲の社会への浸透度の高さから実感できるはずです。

11月デビューの3組がデジタルをどれだけ有効に活用するかに注目しましょう。個人的にはフィジカルセールスとデジタルとの両立以上に、デジタルにフィジカルセールスを上乗せした形でヒットを築き上げるかが重要だと考えています。

*1:ただしSixTONESSnow Manのデビュー曲は除きます。また一部歌手に10万枚未満の作品があり、被ることもありますが表には掲載していません。

*2:その点を踏まえて、以前からフィジカルセールス指標のウェイト減少を求めています。同指標の係数処理対象枚数の減少(チャートポリシー変更)を実施した今年度下半期以降も総合首位がフィジカルセールスに特化した曲で占められる機会が多く、その意味においてさらなるウェイト減少は必須ではないかというのが私見です。詳しくは(追記あり) ビルボードジャパン首位、SKE48「あの頃の君を見つけた」の極端な指標構成を踏まえチャートポリシー変更を提案する(9月10日付)をご参照ください。