イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

(訂正あり) チャートポリシー変更(チャート集計制度の改定)は音楽業界への提案である…日米ビルボードの変更経緯から考える

(※訂正(12時00分):ビルボードジャパンの記事が修正され、レンタルの表記が削除された内容で再度アップされました。それに伴い、当該記事の新たなリンク先を掲載し、ブログエントリーを一部訂正しました。)

 

 

 

あらためて、ビルボードジャパンのこちらの記事に注目します。下記は書き手の方によるツイートです。

この記事から、ビルボードジャパンの確固たる信念を感じる自分がいます。記事については下記ブログエントリーで一度取り上げましたが、あらためて私見を記載します。

(※上記ツイートを経由しても当該記事は削除されております。つきましては下記リンク先をご参照ください。)

 

上記記事においては、レンタル解禁が17日後に関わらずあたかもレンタルに伴うルックアップが加算されているかのような記載に違和感を覚えツイートで指摘しました(が、それに伴い修正されることは現段階ではみられていません)。それとは別に、重要なのはデジタル未解禁のままフィジカルセールスのみにて進めていくジャニーズ事務所の方針に対する疑問の提示にあると考えます。

もちろん、闇雲にストリーミングを解禁すればいいわけでもないし、それによってCDが売れなくなるリスクもある。そのあたりのさじ加減は難しいが、長い目で見ればストリーミングで多くのユーザーに聴いてもらうチャンスを作ることこそ、これからのグローバルなヒット作りには重要だ。単純にプレイリストに入れ込んでヒット曲として聴かれることはもちろん、TikTokなどの動画に使われてバズる可能性もある。こういった昨今のヒットの可能性からジャニーズの楽曲はあまり縁がないし、万人に受け入れられるようなポップな楽曲であるとしたら、尚更もったいない。

この見方は、ビルボードジャパンに毎週チャート分析記事を連載する栗本斉氏の私見かもしれません。しかしそれをビルボードジャパンが掲載した(掲載することを認めた)以上、ビルボードジャパンの見解としても成立するものと考えます。

 

 

ビルボードジャパンはデジタル未解禁を貫かんとする歌手に対し、その考えを立ち止まらせようとしているように感じます。その姿勢の最たる表れこそ、今年度下半期に実施したチャートポリシー変更(チャート集計制度の改正)ではないでしょうか。変更の詳細について、詳しくは下記ブログエントリーをご参照ください。

フィジカルセールス指標の係数処理対象枚数を引き下げ*1、フィジカルセールス主体でデジタルが強くない、もしくは解禁しない曲が週間チャートを制しにくい状況となりました。2021年度のビルボードジャパンソングスチャート首位獲得曲一覧をみれば、チャートポリシー改正効果が見えてきます。

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太線は上半期と下半期との境目であり、下半期にはフィジカル未リリースのBTSが「Butter」で4週、「Permission To Dance」で1週首位を獲得。それでもフィジカルセールス加算初週の作品が下半期では計6週首位を獲得していますが、フィジカル加算2週目における順位やポイント前週比をみれば、特にフィジカルセールスの強さが際立つ曲がロングヒットに至りにくく、総合的に強くないことが解ります。

BTSにおいては初の英語詞曲である「Dynamite」が週間チャートを制していません。優里「ドライフラワー」も同様で、フィジカルセールスばかりに長けた曲が代わる代わる首位を獲得しながら翌週以降ダウンすることで、その影に隠れてしまうことが理由でした。それでは社会的なヒットの鑑たるヒットチャートが役割を果たせず、首位という称号が形骸化しかねないとして、チャートポリシー変更を断行したものと捉えています。

 

このフィジカルセールス指標ウエイト減少というチャートポリシー変更は多くの賛同を得られたと感じています。デジタルを解禁しない歌手のファンからも好意的な意見が多くみられましたが、気になる意見が2種類みられました。ひとつはフィジカルセールスの影響度が小さくなることでフィジカルセールスに長けた歌手への非難と呼べる態度、もうひとつはビルボードジャパンが業界から消されかねないという不安等の表明です。

前者においてはYahoo!ニュースでコラムを持つ方が好んで用いる表現ですが、フィジカルセールスが強いこと自体は問題はなく、それに特化したやり方がこれまで有効だった音楽業界やメディア、ランキングに問題があります。またその非難は、単にその書き手や賛同者がフィジカルセールスに強い歌手を嫌いなだけであり、その嫌いという感情を正当化するに過ぎないのではないかと思うゆえ、冷静客観的な視野が必要でしょう。

そして後者については、ビルボードジャパンのチャートディレクターである礒崎誠二氏が実際語ったことでもあります。

しかしこの前後のツイートを読んでほしいということ(一連の内容は下記ブログエントリーにも掲載しています)、そしてチャートポリシー変更を支持するならば反発や黙殺等に毅然と声を上げてビルボードジャパンの姿勢をバックアップすること、反発や黙殺等を行う側を監視することを強く勧めます。この監視は自分が2004年に経験したことを踏まえ、有効であると強く断言します。経験した内容は下記リンク先をご参照ください。

 

チャートポリシー変更は音楽の触れ方や聴かれ方、影響力の変化に即して行われ、ビルボードジャパンでは今年度だけで既に3回実施されています。米ビルボードにおいても柔軟な対応が行われていますが、そのアメリカにおいて近年で最大級のチャートポリシー変更といえば、フィジカル施策の無効化ではないでしょうか。

ビルボードソングスチャートの構成指標のひとつであるダウンロードを伸ばすべく、米では2019年半ばからフィジカル施策が顕著に。歌手のホームページでフィジカル(CDやレコード、カセットテープ)を販売し、発送ではなく購入タイミングで売上に加算。さらに手元に届くまでに楽しんでもらうべく用意されたデジタルダウンロードについても加算されるというものでした。

しかしこのフィジカル施策により初登場で首位に立った曲が翌週にはトップ10からも外れるという状況が顕著に。自分はこの状況をアメリカの日本化と称しましたが、米ビルボードは昨年秋にフィジカルの加算タイミングを発送段階に変更、また付随するデジタルダウンロードを加算対象外とする措置を採用し、フィジカル施策の無効化に踏み切りました。これにより首位という称号の形骸化は大きく減ったと捉えています。

 

チャートポリシー変更は音楽の触れ方や聴かれ方、影響力の変化に即して行われています。その一方で、社会的なヒットと大きく乖離する状況を是正してもいるのです。米ビルボードにおけるフィジカル施策の無効化、そして日本で下半期に断行したフィジカルセールス指標の係数処理対象枚数引き下げもまたその是正の一環であり、冒頭の栗本斉氏による疑問は音楽業界への是正勧告的なニュアンスを持つように思うのです。

 

 

Official髭男dismが本日ニューアルバム『Editorial』をリリースしました。タワーレコードオンラインでフィジカルを購入した際、上記ツイートの添付画像と同じポストカードが封入されていましたが、そこに記されたOfficial髭男dismのコメントが非常に印象的なのです。

リスナーがそれぞれのグッドミュージックに出会うチャンスの多い素敵な時代。

だからこそ音楽は、常に開かれた場所でリスナーを待っているべきだと思いますし、

多様化した聞き方や接し方を全て肯定出来る、大きな器を持った存在であって欲しいです。

NO MUSIC, NO LIFE. ポスターより 

無論これは、デジタルの興隆により音楽に触れる機会が増えたことを純粋に喜ばしく思うという内容でしょう。「Pretender」等がサブスクで大ヒットした彼らだからこそより説得力を持った言葉であり、また彼らの態度を踏まえればデジタル未解禁側へのあてつけでないことも解ります。

ゆえにこの流れでOfficial髭男dismの言葉を掲載することに迷いつつ、しかし素晴らしい内容ゆえ紹介させていただきました。彼らのような意志を、音楽業界全体が持ち合わせることを願います。そして彼らのアルバム『Traveler』は最終的にロングセールスに至っており、デジタルの充実でフィジカルセールスが下がるのではと不安を抱く方にはそれが必ずしも当たっていないということも付け加えさせていただきます。

 

Official髭男dismの大ブレイクをチャート上で証明したのはデジタルの重要性に沿ってチャートポリシーを変更したビルボードジャパンでした。そのビルボードジャパンの信念や提案を、一部音楽関係者が未だスルーする事態はこれ以上あってはならないと強く思うのです。

*1:30万→10万を超える分に適用される模様。なおビルボードジャパンは具体的な数値を明かしていません。