前週発表された7月28日付ビルボードジャパンソングスチャート。61位にKing & Prince「Namae Oshiete」がエントリーしています。
同週のビルボードジャパンアルバムチャートを制した『Re:Sense』からのリード曲は、あのベイビーフェイスが手掛けています。動画再生も安定しつつ特にラジオで強い理由は、ベイビーフェイスのプロデュース曲を親しみやすいとして局側がOAを増やしたためと思われます。
ミュージシャン、そして音楽プロデューサーでもあるベイビーフェイス。後者においては1980年代半ばから頭角を現し、R&Bが米ビルボード総合チャートを占拠するようになった1990年代には大ヒットを連発。グラミー賞では最優秀プロデューサー賞(ノンクラシカル)を4度受賞し、うち1996年からは3連覇を果たしています。
とりわけ美しいメロディ(いわゆる美メロ)が印象的なベイビーフェイスとキンプリが今回組んだことに驚きつつ、たとえば高橋海人さんの声の美しさにはとりわけ惹き込まれます。ベイビーフェイスが彼のさらなる魅力を引き出したものと考えれば、ブルーノ・マーズとDマイルが手掛けた「Whenever You Call」における嵐を思い出さずにはいられません。
では今回、至極簡単にではありますがベイビーフェイスが手掛けた作品から「Namae Oshiete」に通ずるものや近年の作品、5曲を選んでみます。
まずはベイビーフェイスがどのような曲を手掛けてきたか、チェックしましょう。
ベイビーフェイスによるプロデュース曲(一部曲提供のみも含む)がまとめられたプレイリストの中で、お気に入り数が特に多いものを上記に。特に1990年代の曲を押さえるにはうってつけと言えます。
そのプレイリストにも収録されているのがテヴィン・キャンベル「Can We Talk」(1993)。恋愛の初期衝動を当時10代半ばのテヴィンが、はつらつとしながら甘酸っぱさも湛えた声で歌ったこの曲は米ビルボード最高9位を記録し、彼の代表曲に。サビの歌詞"Girl, I want to know your name"は「Namae Oshiete」につながりますね。
1990年代、雨後の筍の如く登場したR&Bグループの中で大成功を収めたのがボーイズIIメン。アルバム『II』からのリード曲「I'll Make Love To You」(1994)は当時最長不倒だったホイットニー・ヒューストン「I Will Always Love You」に並び米ビルボードソングスチャートで14週首位を獲得。アルバムセールスは1200万を突破しています。こちらも美メロを堪能できるラブソングです。
ベイビーフェイスが日本人歌手と組んだ例は以前にも。平井堅「Missin' you ~It will break my heart~」(2002)ではプロデュース、および作曲を手掛けています。そしてサビの多重コーラスはまごうことなきベイビーフェイス節。
トップスターに君臨するアリアナ・グランデのファーストアルバム『Yours Truly』に収録され、シングル化された「Baby I」(2013)はベイビーフェイス等によるもの。米ではトップ20に入れずも日本でヒットし、ビルボードジャパン週間ソングスチャート6位、2014年度年間38位を記録。特に日本におけるアリアナの認知度上昇にこの曲が大きく貢献し、2010年代のベイビーフェイスを代表する作品になっています。
純粋にはプロデュースに関与しないものの、最後は自身の歌唱曲を。1980年代半ばから大ヒット曲を連発したプロデューサーチーム、ジャム&ルイスによる初のリーダー作からの先行曲「He Don't Know Nothin' Bout It」にベイビーフェイスが参加。ソングライトに参加したこともあり、曲の持つ美しさはまさにベイビーフェイス印。それにしてもこの二組がタッグを組むとは誰が想像できたことでしょう。
2000年代に入るとベイビーフェイスの関連作品はそこまで目立たなくなる印象がありますが、それでもビヨンセ「Best Thing I Never Had」(2009)やブルーノ・マーズ「Too Good To Say Goodbye」(2016)等に参加し、存在感を示しています。後者はソングライトのみですが、特にBメロからはブルーノが1990年代のR&B/ソウルミュージック、そしてベイビーフェイスの影響を受けていることを感じずにはいられません。
R&Bの世界で輝きを放ち続けるベイビーフェイスとの仕事は、King & Princeにとって大きな財産になったはずです。そして彼らのファンの方々はこれを機に、ベイビーフェイスの美メロを探求してみては如何でしょうか。