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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボード最新動向】日米連覇達成のBTS「Butter」、しかしヒットの仕方は大きく異なる

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

7月5~11日を集計期間とする7月14日公開(7月19日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。BTS「Butter」が2週連続、通算4週目の首位を獲得したのみならず2位には自身の「Permission To Dance」が初登場し、BTSはワンツーフィニッシュを達成しています。

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ラジオやTwitterは順位を落とすものの2指標ともにトップ10をキープし、カラオケは上昇。ポイント前週比は前の週の83.1%から97.9%となり新曲「Permission To Dance」の登場が大きく寄与したと言えます。

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「Permission To Dance」は日本時間の7月9日金曜13時にリリースされ、集計期間わずか2日半ながら『39,280DLを売り上げてダウンロード1位、ストリーミングは8,125,370再生で6位、そして動画再生2位と、この3指標が牽引して総合2位に初登場』を果たしています(『』内は上記記事より)。

また、集計期間2日半でラジオが24位に登場したのは、業界内での注目度の高さゆえでしょう。ラジオにおいては「Permission To Dance」の制作に参加したエド・シーランによる「Bad Habits」が3位と強く(総合55位)、エド印がラジオの勢いに反映されていると言えます。尤も、ラジオはエアプレイの総数に限度があるため、「Permission To Dance」が「Butter」のOA回数を抑えてしまったとも言えるでしょう。

同一歌手でのワンツーフィニッシュは、昨年11月4日公開(11月9日付)におけるLiSA「炎」「紅蓮華」以来8ヶ月半ぶり。『鬼滅の刃』の社会現象による大ヒットが前者なのに対し、今回はBTS自身の社会現象化と捉えることができそうです。

 

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それにしても、BTS「Butter」のストリーミングにおけるハイレベルのキープにはただただ驚かされます。初週は2日半で1400万再生を突破、初の1週間フル加算となった2週目には3千万が目前となり週間再生回数の新記録を大幅に更新しています。

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ストリーミングソングスチャートにおける1位および10位の再生回数をグラフ化したものを上記に。如何に「Butter」が記録的ヒットであるかが解ります。

 

 

それにしても、日本とアメリカで「Butter」のヒットの仕方が大きく異なるのです。

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「Butter」は最新7月17日付米ビルボードソングスチャートで初登場から7連覇を達成しているのですが、構成3指標の動向をみると圧倒的にダウンロードが強く、一方で首位初登場後に「Butter」の後塵を拝し7週連続2位をキープするオリヴィア・ロドリゴ「Good 4 U」とはストリーミングおよびラジオで倍以上の差をつけられています。

(「Good 4 U」については登場2週目および3週目においてダウンロードおよびラジオ指標の数値が記事未掲載となっていましたが、4週目以降は全指標掲載。ともすれば「Butter」との比較として明示するようになったのかもしれません。)

ビルボードソングスチャートにおけるストリーミングはサブスクのほかYouTube等の動画再生も含まれます(上記ブログエントリー参照)。そのストリーミングにおいて「Butter」は初登場時が最も高くなっていますが、同週「Good 4 U」が獲得した再生回数のおよそ半分であることからも、所有指標の高さが首位獲得の大きな要素と言えます。

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上記は2021年度米ビルボードソングスチャートにおける首位獲得曲の3指標動向。首位獲得曲が各指標も制した場合、その指標を黄色で表示しています。これを見ると首位獲得曲でストリーミングが1500万を割っているのはBTS「Butter」(3週目以降)および「Life Goes On」(2020年12月5日付)のみの一方、ダウンロード10万超えはその2曲(「Butter」は7週連続)であり、BTSの強みと強くない箇所がはっきり可視化されるのです。

 

コアなファンが支える所有指標が強い一方で接触指標が強くないという状況は、日本におけるフィジカルセールスに長けたアイドルと変わらない気がします。

アメリカにおけるBTSのチャートアクションをこのように形容しましたが、掲載から1ヶ月が経過した現在、その思いはさらに強くなっています。所有指標がキープする点は素晴らしいと思いつつ、日米での「Butter」の指標構成、ストリーミングの差を踏まえるに、「Butter」は日本でより深く社会に浸透していると断言していいでしょう。

 

 

 

最後に。2019年度および2020年度においても首位獲得曲の3指標における数値をまとめているので掲載します。

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注目はストリーミング。各指標の首位の数字については2019年12月21日付以降の調査に留まるため十分なデータが揃ってはいないのですが、ストリーミングの数値が緩やかながら下降しているのではないかと思うのです。

ストリーミング首位曲が7千万再生を突破したのは2021年度で1回、2020年度(2019年12月21日付以降調査分)では4回となっています(いずれも総合首位獲得曲がストリーミングも首位を記録)。そして2019年度では総合首位獲得曲において、ストリーミング7千万再生超えが実に18回も登場しているのです。

この理由はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」の凄まじさに因るものであり、またYouTubeにおいてユーザー生成コンテンツ(UGC)を排除する前だったことも挙げられます。米ビルボードのストリーミング指標からサブスク再生回数のみの数値を判断することはできませんが、ともすればサブスクの再生回数は落ち着き、むしろ低下していると捉えることも可能ではと考えます。

チャート分析に長け予想も行うあささんのツイートに対し、昨日このようにつぶやいたのですが、サブスクが徐々に浸透しながらも日本のストリーミングソングスチャートにおいて週間1千万再生超えがなかなか生まれない理由は、米と比べてまだまだ発展途上と思われていた日本でのサブスク普及が早くも伸び悩むようになったからではと考える自分がいます。