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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米ビルボードがTwitter関連チャートを新設…日本のTwitter指標はどうすべきか

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する指標のひとつであるTwitterは総合順位との乖離が大きいことから、個人的にはこの指標の除外を含め検討する必要があると幾度となく記載してきました。この指標に今後、大きな変化が生まれるかもしれません。

 

 

ビルボードが今週、Twitter社と組み新たなチャートをローンチすると発表しました。

毎年恒例のNewFrontsプレゼンテーションにて、Twitter社によって発表されたこの新チャートの名前は、“Billboard Hot Trending”(ビルボード・ホット・トレンディング)で、新作リリースに関連したバズ、授賞式や音楽フェスでの印象的な瞬間、懐かしの音楽スレッドなど、Twitter上での音楽に関連したトレンドや会話をリアルタイムでトラッキングするものとなる。

毎週発表される従来の米ビルボード・チャートとは異なり、24時間ごとに更新される“Billboard Hot Trending”は、Twitter上での音楽に関連した最新ニュースに焦点を当てることとなる。

ホットトレンディングチャートは曲を対象としています。

ビルボードは「Billboard Hot Trendingでは、人々が聞いている楽曲ではなく、話題に挙げている楽曲を追跡します」と述べ、Billboard Hot Trendingの独自性を強調しています。

このホットトレンディングチャート、ネットにおける歌手の勢いを示しながら今年はじめに停止したSocial 50チャートに近いかもしれません。Social 50についてはその停止理由や私見を、停止のタイミングで記載しています。

ジャスティン・ビーバーBTSが連覇し続けた歌手別チャートのSocial 50と、曲を対象とするホットトレンディングチャートでは対象等が異なります。しかしながら日々更新されるチャートが魅力を持ったものであることは間違いないでしょう。

Social 50はより多くのファンを抱え、そのファンの熱量がより高い歌手が勝つ状況でしたが、ホットトレンディングチャートがそれをなぞるかはローンチ後の状況をみないと判りません。しかし新設されるチャートが好いものであるならば、ビルボードジャパンも速やかに導入を検討すべきだと考えます。

 

 

ビルボードジャパンが仮にホットトレンディングチャートを導入する場合、ソングスチャートのTwitter指標と被るかもしれません。ならばこの指標の今後の取り扱いは、【①現状通り ②ウェイトを落としながら存在をキープ ③撤廃】のいずれかとなるのではないでしょうか。

実は既に②は実行済みと言えるかもしれません。ビルボードジャパンは3月に行われた各指標のウェイト見直し(チャートポリシー変更)において、Twitter指標のウェイトを下げた模様です。

チャート予想や分析を行うあささんはTwitter指標の換算率が減少したことを指摘されています(勝手ながら紹介させていただきました。問題があれば削除いたします)。ここでいう組織票には、たとえばコアなファンが一歌手の名前と数多くの曲名(たとえばリリースされるシングルと複数種すべてのカップリング曲)をまとめてツイートするものや、何気ないツイートに唐突に脈絡のない歌手名と曲名を混ぜ込むもの等があり、社会的な盛り上がりに因るつぶやきとは異なるもの。この組織票により、Twitter指標のチャートと総合順位との乖離が生まれていると捉えています。

Twitter指標についてはチャートの変遷や上位曲の特徴、そこから考える疑問点をこのブログで幾度となく掲載しています。上記エントリーは主にTwitter活動を行う熱量の高いファンに向けて提示したものですが、同時にビルボードジャパンにもこの指標の硬直性を把握してほしいと感じています。

 

 

チャートポリシー変更後の状況を踏まえれば、ビルボードジャパンソングスチャートからTwitter指標を除く必要はないかもしれません。例として最新5月5日公開(5月10日付)ビルボードジャパンソングスチャートをチェックすると、総合首位のJO1「Born To Be Wild」をTwitter指標で上回ったのがSEVENTEEN「ひとりじゃない」(総合16位)。JO1は元々Twitter指標が強い歌手ですが、彼らのフィジカルセールス初加算週に「ひとりじゃない」が勝っています。しかし最新週のチャート構成比を踏まえれば、「ひとりじゃない」のTwitter指標における獲得ポイントは400にも満たないのです(「ひとりじゃない」のポイントは4381)。チャートポリシー変更後は以前のような、Twitter指標の盛り上がりを主軸に総合チャートで上位進出する作品は大きく減るかもしれません。

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とはいえTwitter指標は総合チャートとの乖離が大きいため、ホットトレンディングチャート新設時にはシンプルに除外することも検討すべきでしょう。となるとひとつ気になるのが、たとえば昨年バズを起こした星野源「うちで踊ろう」のヒットが可視化されにくくなるという件。しかしビルボードジャパンは今年度、動画再生指標からUGC(歌ってみたや踊ってみたに代表されるユーザー生成コンテンツ)を除外し独自のチャート(Top User Generated Songsチャート)を作成した経緯があります。このチャートも動画再生指標からUGCを”除外”して生まれたものであり、除外を恐れない変化を実行したビルボードジャパンの姿勢を踏まえれば、Twitter指標を除外し日本でホットトレンディングチャートを用意することは可能であり、そこで「うちで踊ろう」のようなヒットが可視化されるものと考えます。

 

 

Twitter指標の今後の取り扱いが【①現状通り ②ウェイトを落としながら存在をキープ ③撤廃】のどれになるかは不明ですが、現段階では②より③を望んでいるというのが私見。しかしそれはホットトレンディングチャートをビルボードジャパンが採り入れる前提の話です。ビルボードジャパンの動向、そして米ビルボードにおける新設チャートがどのような形になるか、推移を見守っていく必要があります。