毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。
4月26日~5月2日を集計期間とする5月5日公開(5月10日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。前週トップのSEVENTEEN「ひとりじゃない」は16位に後退、フィジカルセールス初加算に伴いJO1「Born To Be Wild」が初の首位を獲得しました。
【ビルボード】JO1「Born To Be Wild」が289,433枚を売り上げ総合首位 星野源「不思議」総合2位、Ado「踊」総合4位に初登場 https://t.co/CLiyk5ls2Z pic.twitter.com/a2lkQfkwiu
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年5月5日
フィジカルセールスのみならずルックアップも制覇、Twitterも2位となったJO1「Born To Be Wild」。一方で接触指標群には気掛かりな点が。
チャート推移(CHART insight)からストリーミング(青の折れ線で表示)および動画再生(赤)のみを抜き出したものを上記に。動画再生は比較的順調に推移しているものの、注目が集まりやすいフィジカルリリース加算初週に順位を落としています。そしてストリーミングは加点対象となっているものの100位未満(300位圏内)なのです。この動きは前作「OH-EH-OH」と似ています。
この春にビルボードジャパンが各指標のウェイト見直し(チャートポリシー変更)を行い、フィジカルセールス指標のウェイトは下がっています(詳細はこちら)。フィジカルセールス加算初週のチャート構成比は「OH-EH-OH」も「Born To Be Wild」もフィジカルセールスのシェアが大きいのですが、チャートポリシー変更後にもかかわらず「Born To Be Wild」のフィジカルセールスのシェアがさらに大きくなっている状況は、言い換えれば如何に他指標が強くないかということ。翌週以降、「Born To Be Wild」が「OH-EH-OH」以上に失速する可能性が高いのです。
(上記チャート推移におけるチャート構成比は最新5月5日公開(5月10日付)のものとなっています。)
実際、「OH-EH-OH」はフィジカルセールス加算2週目においてトップ10落ち(13位 ポイント前週比15.8%)、首位獲得のわずか3週後には総合100位以内からも脱落してしまいました。そして接触指標群のみを抜き出してみると、ストリーミングの弱さが際立ちます。
ここでは何度も触れていることですが、接触指標群を重視するのはそれがロングヒットや年間チャートランクインに大きな影響を及ぼすため。逆にフィジカルセールス特化型は上位進出があくまで瞬間的でしかなく、これらは昨年度の年間ソングスチャートからはっきりと見てとれます。
今年度は初回のチャートでYouTubeにおけるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の除外が行われ、都合二度チャートポリシー変更が行われていますが、それでもサブスク再生回数等に基づくストリーミング、そして動画再生の重要度は変わりません。
チャート推移ではフィジカルセールス指標の乖離が大きい一方、ストリーミングや動画再生指標といった接触指標群が高水準をキープしていることが共通。
(中略)
11曲のチャート構成比をざっとみると、現在のチャートにおけるロングヒットの条件はストリーミング指標5割以上、動画再生指標およそ10%以上と言えるでしょう。
4月下旬、弊ブログにおいては接触2指標でチャート構成比の6割以上を占めることがロングヒットの条件と定義しています。フィジカルセールス未リリース曲においては1万5千ポイントの壁を越えにくいという弱みもあるのですが、他方フィジカルセールスを伴う曲はポイント下落率が未リリース曲より大きい傾向もあり、フィジカルセールスは一長一短と言えるかもしれません。ただしはっきりしているのは、接触指標群に強くない曲はロングヒットも年間チャート上位進出も難しいということです。
この点については、2週前に首位を獲得した櫻坂46「BAN」の前週の動向を踏まえて指摘したのですが(下記ブログエントリー参照)、前週首位のSEVENTEEN「ひとりじゃない」もまた同様の動きをなぞっています。「ひとりじゃない」はフィジカルセールス加算2週目にあたる今週は16位に後退しましたが(ポイント前週比15.1%)、前週のトップ10ランクイン曲では今週最も順位が低くなっているのです。
たとえば『ミュージックステーション』(テレビ朝日)における今年の1曲ランキングはビルボードジャパンソングスチャートに近いものであり、接触指標群に長けた曲が認知度の高さ、印象の強さを示していると言えます。
言い換えればストリーミングや動画再生といった接触指標群が強くない曲は年間チャートに入りにくいのみならず、広く社会への認知度等も高くないため社会的ヒットとは言い難いというのが私見です。ただし現行のチャートポリシー下ではフィジカルセールスに強い曲が瞬間的でも首位を獲得する傾向が強いため、少なくともフィジカルセールス加算2週目の動向(順位の変遷やポイント前週比)をみて、真のヒットと成るかを判断する必要があります。