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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Ado「踊」大ヒットなるか? リリース前後の仕掛けやその姿勢に注目する

4月27日に解禁されたAdo「踊」(おど、と読みます)が次週のビルボードジャパンソングスチャートでどの位置に登場するか、非常に楽しみです。最新4月28日公開(5月3日付)ビルボードジャパンソングスチャートではTwitter指標15位に登場し(総合は100位未満、300位圏内)、注目度の高さがみえてきます。

昨日21時の段階で、iTunes Storeによるダウンロードチャートにて首位に到達した「踊」。ここに至るまでの展開が実に巧いと思うのです。

 

 

① リリース前の告知アナウンスが巧い

ビルボードジャパンソングスチャートを構成するTwitter指標は、ボカロP等が手掛ける作品等ネット音楽が上位に登場することが少なくありません。今回「踊」の告知ツイートでは、制作に関与したネット音楽関係者がひと目で分かるような画像を用いていることが解ります。ツイートを流し見する方にもはっきりと文字認識ができる、この画のインパクトは実に大きいですね。

ブログ執筆時点(5月1日6時)で、Adoさんスタッフは上記ツイートを固定化。つまり、たどり着いた人の多くがまずはこのツイートを見るという仕組みができあがっているのです。

 

 

② 自発的に参加してもらうための仕掛けが巧い

Adoさんのボーカリストとしての実力は攻めの「うっせぇわ」や引き(と言える)の「ギラギラ」で証明され、また「うっせぇわ」のムーブメントも手伝い、歌いこなしてみたい等と意気込む方もいらっしゃるでしょう。そのニーズに応えるべく、リリースの翌日に「踊」のインストゥルメンタル音源が公開されました。

Adoさんのスタッフは歌詞についてもRT経由で紹介。Adoさんが歌詞を通じてどんなメッセージを発するのか気になる方がリーチしやすくなっています。

歌ってみた等に参加しなくとも、歌詞へのリーチもまた自発的な行動。背中を押す姿勢が徹底されています。

 

 

③ 本人のプロモーションが巧い

無論本人も動いています。

ミュージックビデオのプレミア公開はYouTubeに実装された機能であり、最近では生配信からスムーズにミュージックビデオへ移行できるようになったと伺っています。その生配信にAdoさん本人が登場。

Adoさんの生配信登場により動画公開タイミングのプレミア感が増すことは必至。それも手伝ってでしょう、ブログ執筆時点の5月1日6時にはミュージックビデオの再生回数が既に600万に達しています。

 

 

④ 記録達成ツイートの徹底が巧い

記録達成のたびにAdoさんのスタッフがツイートしています。

参加クリエイターのTwitterアカウントを添えることで彼らが気付き、クリエイターおよび彼らのファンもまたRT等することでさらなる拡がりにつながります。

今回のブログの冒頭でiTunes Storeダウンロード1位と伝えましたが、その点についてもきちんと報告。しかも関連曲も紹介しています。しかも画像にはAdoさんの曲に勢いを示す炎の画が添えられており、キャプチャ画像に一工夫することで見た方が格段に興味を高める仕組みを構築しています。

チャートの順位や再生回数をきちんと徹底して言及することも見事です。ファンとのエンゲージメントの確立を図りコアなファンがより深く参加すること、ライト層に興味を持ってもらうことを促し、且つ後者のコアなファン化への昇華にもつなげています。

 

 

⑤ 既存メディアへのアプローチが巧い

リリース日となった4月28日以降は既存メディアへのアプローチも行っており、たとえば『あさチャン!』(TBS)ではインタビュー出演しています。

28日の放送では、ネット音楽に詳しい音楽ジャーナリストの柴那典さんが音楽面からAdoさんの凄さを解説。

柴さんの起用が『あさチャン!』側かそれともAdoさん側の意向なのかは解りかねますが、人となりだけではなく音楽面からもアプローチすることで、Adoさんの魅力が複数の面から伝わってきます。

 

 

以上5点、如何だったでしょうか。

このような仕掛けを徹底した代表格といえばYOASOBIであり、昨年から今年にかけて日本の音楽業界を代表する顔となりました。YOASOBIスタッフの仕掛けが紹介される機会が増えたことで、同種の手段でマーケット拡大を図る歌手が増えていますが、Adoさん側もしっかり踏襲していますね。その中で、①における”ひと目で分かるクリエイター紹介画像”はとりわけ素晴らしいと思うのです。

また、外見については秘匿を貫くAdoさんですが、既存メディアも含めてきちんと登場することで、秘匿への不満を封じ込めるのに成功している印象があります。たとえば米津玄師さんやYOASOBIの成功、ならびにYOASOBIの積極的なメディア露出により、ネット音楽やクリエイターの方々に対し世間(の一部)が抱く閉塞性という勝手なイメージが打破された印象がありますが、秘匿を守りつつ露出を続けるAdoさんの対応もまた好いと感じています。

 

今や音楽チャートにおけるビルボードジャパンの地位がほぼ確立されたことで、順位など何ら関係ないとか順位にこだわるのは格好悪いなどと述べる方はおそらく少ないでしょう。この地位の確立に大きく貢献したのがストリーミングや動画再生指標といった接触指標群の存在(およびこれらのウェイト拡大)にありますが、ネット音楽の世界ではビルボードジャパンがソングスチャートに接触指標群を採り入れる前から、ニコニコ動画等において再生回数が重要視されていました。つまり彼らにとっては再生回数の大きさがヒットの基準として定着していると言っても過言ではなく、それを誇ることに何ら躊躇することはないのです。堂々と再生回数やチャート結果を述べることは見ていて気持ちが良く、今後の訴求方法のスタンダードと言えるでしょう。