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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Spotifyバイラルチャートを制したあたらよ「10月無口な君を忘れる」、動画先行公開は新たなヒットの形となるか

最新4月19日付の日本におけるSpotifyバイラルチャート、あたらよ「10月無口な君を忘れる」が初登場で首位を獲得しました。チャートはこちらで確認できます。

上記ミュージックビデオはあたらよにとって初の動画。この曲はしばらくの間ミュージックビデオのみで公開され、配信に至ったのは最近のこと。昨年11月28日の動画公開から2ヶ月も経たないうちに金字塔を打ち立てたこともあり、配信を待ち望む声が高まっていたと推測されます。

そして配信がスタートすると、TikTokやサブスクでヒットの口火を切った次第。

そのほか当週トップ20デビューを果たしたのは、14位のあたらよ「10月無口な君を忘れる」、15位のRoy Kk「Unlock It (Ctrl Superlove)」、20位の4na「hazama」。あたらよは東京を中心に活動する4ピース・バンドで、2020年11月28日に「10月無口な君を忘れる」のミュージックビデオを公開し、3月24日に同曲を配信リリースした。TikTokでは、3月29日から“#10月無口な君を忘れる”でハッシュタグ・チャレンジが展開され、多くのカバー動画が投稿された。

【TikTok週間楽曲ランキング】Chinozo「グッバイ宣言」4度目の首位獲得 Mom「あかるいみらい」初登場トップ10入り | Daily News | Billboard JAPAN(4月9日付)より

最新4月16日公開のTikTok週間楽曲ランキングではトップ20圏外となったあたらよ「10月無口な君を忘れる」ですが、その人気は拡がっていきます。ビルボードジャパンによる最新4月14日公開(4月19日付)Heatseekers Songsチャートでは5位に初登場を果たしました。

5位のあたらよ「10月無口な君を忘れる」は、配信スタートから3週目を迎えた当週、ストリーミング46位、ダウンロードとツイートはトップ300圏内にチャートインした。あたらよは都内を中心に活動する4人組バンドで、「10月無口な君を忘れる」は2020年11月にYouTubeにて公開され話題となっていた楽曲だ。同曲は、4月8日よりJOYSOUND、15日よりDAMにてカラオケ配信もスタート予定で、次週以降のチャートアクションにも注目だ。

【Heatseekers Songs】川崎鷹也「魔法の絨毯」通算10度目の首位獲得 あたらよ、kZmが初登場トップ10入り | Daily News | Billboard JAPAN(4月14日付)より

(Heatseekers Songsチャートのランクイン条件は上記リンク先をご参照ください。また次回4月21日公開(4月26日付)で初登場が見込まれる、にしな「ヘビースモーク」については先日ブログにまとめています→こちら。)

ビルボードジャパンソングスチャートにおいてストリーミング指標が高いあたらよ「10月無口な君を忘れる」は、同指標が3月31日公開(4月5日付)で78位に登場すると52→46位と推移、総合では1週遅れて87位に初登場を果たすと最新4月14日公開(4月19日付)で73位に上昇。カラオケ指標も加算されれば、さらなるチャート上昇も見込まれます。動画を先行公開したことにより、配信へのニーズがより高まったと言えるかもしれません。

 

 

あたらよ「10月無口な君を忘れる」がなぜ動画を先行公開に至らせたか、動画公開と配信を同時にしなかったのか…このタイムラグは音源をどこからリリースするかの最善策を探したゆえかもしれませんが、真相は不明。しかしこの曲は配信前後に強力な援軍を得ています。

昨年以降TikTokYouTube発でブレイクする歌手や曲が増えていますが、そのうちりりあ。さんや優里さんが「10月無口な君を忘れる」のカバー動画をアップしているのです。これらカバー動画の登場が認知度上昇につながることは間違いないでしょう。

 

 

あたらよ「10月無口な君を忘れる」は結果的に動画先行公開という形になりましたが、この動画先行公開という方式が増えている印象があります。

 

まず思い出したのが昨年8月公開のback number「水平線」。未だにデジタル配信されていないこの曲ですが、最新4月14日公開(4月19日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは動画再生14位、カラオケ17位にランクイン。このブログでは2ヶ月前に「水平線」を次のヒット曲候補として紹介しましたが、back numberは春クールの連続ドラマ主題歌を手掛けているためその曲のリリースタイミングで「水平線」の配信もあり得るかもしれません。

 

チラ見せ的な形での動画先行公開には、2月27日付米ビルボードソングスチャートで3位に初登場を果たしたリル・ティージェイ feat. 6LACK「Calling My Phone」が該当。米ビルボードはリル・ティージェイがTikTokでプレビューを公開したことが要因と記しています。

 

また、昨日のブログで取り上げた最新4月27日付米ビルボードソングスチャートで首位に初登場を果たしたポロG「Rapstar」も動画先行公開の形を採っています。この曲のリリースは今月ですが、昨年5月にプロデューサーのひとりであるアイナー・バンクスのYouTubeアカウントでアコースティックバージョンが既に発表されていました。

このバージョンが公開されたのは、ポロGのアルバム『The Goat』(2020)が米ビルボードアルバムチャートでキャリア最高位となる2位に初登場を果たして間もないタイミング。アルバムの成功によりポロGに注目が集まる最中にこの動画を公開したことで、曲の公開がより強く待ち望まれたものと思われます。そして今月「Rapstar」が公開されると、2021年で3番目に多い週間ストリーミング再生回数を獲得したのです。下記オリジナルバージョンとアコースティック版とを是非聴き比べてみてください。

 

 

ビルボードジャパンにおけるストリーミング指標は最新4月21日公開(4月26日付)で週間1000万再生が途絶える、とチャート分析に長けたあささんが予想しています。

あたらよ「10月無口な君を忘れる」はSpotifyでバイラルチャートを制した4月19日付の日本におけるデイリーチャートで58位に上昇し、LINE MUSICでは4月21日7時の段階でトップ10入り。次のブレイク候補が待ち望まれる中、昨年顕著になった動画発ブレイクという流れを汲む曲になりそうな予感がします。そして配信ニーズを高める効果を持つ動画先行公開という手法を、今後活用する方が増えていくのではないでしょうか。