先日のリル・ナズ・X「Montero (Call Me By Your Name)」について紹介したエントリーにて、一発屋という言葉はもはや時代錯誤であることを書きました。
『今の時代はSNSで自身の存在を示すことができること、SNSで大きく影響を与えられること、ひとつのヒット曲が他曲の勢いにも波及することから、一発屋と称するのは無理があります。そう言いたい側にこそ穿った見方がないかを自問自答する必要があるでしょう。』 上記エントリーで述べた言葉を一部変えつつ、一発屋がこの先存在することがほぼないということを示唆しました。
この一発屋については、ともすれば今年特大ヒットを放った日本の歌手に対しても用いられかねない気がするため、データでもってそうではないことを証明してみます。
3月15日付(3月10日公開)ビルボードジャパンソングスチャートで首位を獲得したAdo「うっせぇわ」について、Real Soundで3名の音楽評論家や音楽ジャーナリストによる"Ado評"と称したコラムが昨日登場しています。
Ado「うっせぇわ」についてのコラムをReal Soundに寄稿しました。今井智子さん、田家秀樹さんとの合評形式になっています。https://t.co/BEzzs2jQ6p
— 柴 那典 (@shiba710) 2021年4月4日
個人的にはクールなR&Bテイストの「ギラギラ」に惹かれていますが、その「ギラギラ」は6週連続でトップ20内をキープしているのです。
上記チャート推移(CHART insight)をみると、接触指標のストリーミング(青の折れ線で表示)や動画再生(赤)が安定し、カラオケ指標(緑)が徐々に上昇していることに注目。カラオケ人気は曲がより親しまれロングヒットする可能性を示す証と言えます。またこの指標の上昇は、最新4月5日付(3月31日公開)で同指標2位の「うっせぇわ」に呼応していると言えるでしょう。
2曲を並べると、「うっせぇわ」と「ギラギラ」の呼応が見て取れるでしょう。「ギラギラ」はポイントこそ減少を続けながら、ポイント前週比8割以上をキープしているのは立派だと思うのです。
一方、3月15日付(3月10日公開)ビルボードジャパンソングスチャートでAdo「うっせぇわ」に惜しくも破れ最高2位どまりの優里「ドライフラワー」にも同種の動きが見えてきます。先程紹介したコラムが登場したのと同じ日に、優里さんについてのコラムも登場。こちらはarneの松島功さんが寄稿されています。
Billboardで優里さんのお話を書きました✑
— Ko Matsushima / 松島 功 (@komatsushima) 2021年4月4日
「友達の“好き”があなたへのインプレッションに影響し、あなたの“好き”がタイムラインに影響する」
という今のSNSついて📗
インプを裏切らないコンテンツの良さ
“好き”を最大化するためのアーティスト発信の大切さhttps://t.co/cbWsQt1tIA
このコラムを優里さんサイドが即座にSNSで紹介していることもまた、彼の人気を示すひとつの理由だと思うのです。
Billboard Japanに優里の記事が掲載されています🖋✨
— 優里すたっふ (@yuuri_staff) 2021年4月4日
『驚異の速さで2億回再生、優里の音楽が“大拡散”している二つの要因』
是非ご一読頂けると嬉しいです🙇🏻♂️‼︎@Billboard_JAPAN
🎬 https://t.co/WHHdQFfbo6
🎧 https://t.co/4PEIbMv4Hc#優里#ドライフラワー https://t.co/SD9nHCc38N
最新4月5日付(3月31日公開)ビルボードジャパンソングスチャートでは「ドライフラワー」(4位)のほか、「かくれんぼ」(39位)、「ピーターパン」(40位)、「インフィニティ」(94位)と100位以内に4曲が登場し人気を誇る優里さん。そこで、「ドライフラワー」と呼応する曲である「かくれんぼ」の動向をみてみましょう。
上記チャート推移(CHART insight)を見ると接触指標のうち動画再生が速くもダウンしてしまったもののストリーミングは緩やかに上昇、カラオケもそれに沿って伸びています。そして優里さんが「ドライフラワー」で大ブレイクを果たしメディア露出が増えると所有指標であるダウンロード(紫の折れ線で表示)が上昇し、同指標は2月にピークを迎えています。
「かくれんぼ」と「ドライフラワー」のチャート推移を表にしたものがこちら。「かくれんぼ」については2019年12月9日付(同年12月4日公開)で総合300位以内に初登場を果たしているのですが、二度目の300位以内再浮上となった昨年5月18日付(同年5月13日公開)以降に絞って表示。これをみると「ドライフラワー」の初登場時に「かくれんぼ」が既にストリーミング、動画再生およびカラオケで50位前後に入っており、「ドライフラワー」のヒットの下地が既にあったことが解ります。また「ドライフラワー」の大ヒットが「かくれんぼ」にも波及しており、今年度の「かくれんぼ」における最新週までのポイントは5万弱を獲得しているのです。昨年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートにおいて「かくれんぼ」が98位に登場したことを踏まえれば、今年度の年間チャートにおけるさらなる上昇は確実と言えます。
冒頭で『今の時代はSNSで自身の存在を示すことができること、SNSで大きく影響を与えられること、ひとつのヒット曲が他曲の勢いにも波及することから、一発屋と称するのは無理があります』と書きました。SNSでの存在感や影響力については昨日のReal Soundやビルボードジャパンのコラムで確認可能ですが、ここではヒット曲の他曲への波及について例示してみました。
そういえばAdo「うっせぇわ」については以前下記コラムが話題になりましたが、「うっせぇわ」や優里「ドライフラワー」を"どうせ一発屋でしょ?"と言う人が仮にいたならば、それもまた致命的な勘違いであると断言していいのかもしれません。