イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「One Last Kiss」「創造」「感電」…サブスク再生回数"初動以降右肩下がり型"の原因を考え、改善策を探る

本日午後、ビルボードジャパンが最新4月5日付ソングスチャートを発表します。首位はフィジカルセールス初加算となるSexy Zone「LET'S MUSIC」が間違いなく獲るものとして、気になるのは前週首位の宇多田ヒカル「One Last Kiss」の動向。世界200以上の地域における主要デジタルプラットフォームのダウンロードおよびストリーミング(動画再生含む)を集計した米ビルボードによる最新4月3日付グローバルソングスチャート(集計期間は3月19~25日)では、「One Last Kiss」がGlobal 200で40→97位、Global Excl. U.S.で14→33位と大きくダウンしており、ジャスティン・ビーバーの大量エントリーに押されたとはいえその動きは気掛かりです。

この"気掛かり"については、一昨日のブログエントリーをはじめ何度か記しています。

4月5日付ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間である3月22~28日のSpotifyでの動向について、上昇を示したEve「廻廻奇譚」およびYOASOBI「怪物」「優しい彗星」を例に挙げ、宇多田ヒカル「One Last Kiss」の課題点について紹介しました。その際に用いたグラフで、動きが「One Last Kiss」に近いと感じた星野源「創造」も取り上げています。Spotifyはサブスクサービスのうち唯一再生回数が可視化されており、チャートアクションはLINE MUSIC等に比べれば保守的ながら、今の流行や課題がはっきり見えてくるものと捉えています。

 

そのSpotifyにおけるこの1年の主要曲の再生回数推移からも、見えてくるものがあると思うのです。

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YOASOBI「夜に駆ける」がデイリー200位以内に初登場を果たした2020年3月16日から今年3月28日までの動向をグラフ化。なおSpotify のみならず、サブスクサービス全体の週間再生回数は右肩上がりとなっています。

 

ここで取り上げた曲の傾向は2つに分かれます。ひとつはロングヒット型で、主に歌手にとっての大ブレイク曲だったり、既に知名度があった方が認知度を一段と高めたケース。前者は「夜に駆ける」や「ドライフラワー」「うっせぇわ」「Make you happy」が、後者は「Dynamite」や「廻廻奇譚」が該当します。もうひとつは初動以降右肩下がり型といえるもので「One Last Kiss」や「感電」「炎」「創造」がこちらに当てはまります。ただし「炎」のピークは登場4週目であり、初動以降右肩下がり型とは言い難いかもしれません。また、一昨日のブログエントリーで紹介したYOASOBI「怪物」については前者に近いですが、未だ上昇が続いています。

初動以降右肩下がり型の例として紹介した曲はいずれも、初動時の話題性の高さが反動につながっているかもしれません。大型タイアップ曲であることに加え、米津玄師「感電」は収録アルバム『STRAY SHEEP』発売日にサブスク解禁を果たしたことも大きく影響していることでしょう。一方で同じく初動が強いNiziU「Make you happy」については、オーディション企画による視聴者の熱量が初動に反映されながらも、知名度の上昇が新規ライト層の確保につながり、最終的には再生回数を維持したと考えられます。

 

ただ、初動以降右肩下がり型について、理由は先述した反動にとどまらない気がするのです。

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サブスク再生回数を基とするビルボードジャパンストリーミングソングスチャート、最新3月29日付における上位50曲を上記に(チャートはこちらで確認可能)。デビュー年はインディリリースを含み、また客演参加やスプリットシングルは含まず主演名義のみを対象としています。このラインアップから、歌手としてブレイクしたタイミングでストリーミングを既に解禁していた方がチャートの大半を占めていること、宇多田ヒカルさんや米津玄師さんはそれ以前からブレイクしていたためにファンやライト層がどちらかといえばサブスクに重きを置いていないかもしれない可能性が読み取れると思うのです。「One Last Kiss」も「感電」もシングルとしてはフィジカルリリースしていませんが、ダウンロードが前者は現段階で今年度最高、後者は昨年度最大の週間セールスを記録したことが所有指標の強さを物語っています。知名度も抜群でありストリーミングやダウンロードの初動も高いならば、後は継続的な接触をどう勧めるかが課題であり、レコード会社や芸能事務所側の運営が課題と言っていいのかもしれません。

 

継続的な接触の推奨については、星野源さんが「創造」をリリースした後に自身のラジオ番組にて、チャートの仕組みを踏まえた言及を行っていました。文字起こしされたみやーんさんのリンクおよびツイートは下記に。

この見解に対し、鈴木貴歩さんはこのように指摘されています。1回再生のウェイトは無料会員より有料会員のほうが高いというチャートポリシーについて、ビルボードジャパンはより広く、わかりやすく流布してほしいと思います。それがユーザーにとって、きちんと課金することにより高い意義を見出だせることにもつながるはずです。

先の星野源さんの発言は、ラジオを聴いてくださるコアなファンに対して向けられた言葉なのではないかということを、先述したグラフを踏まえて実感しています。