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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Snow Man「Grandeur」、Kis-My-Ft2「Luv Bias」の動向を踏まえ、ジャニーズ事務所所属歌手のサブスク解禁を再度強く願う

ビルボードジャパンではチャートトピックスに関する記事を、ライターの栗本斉さんが毎週記しています。2月8日付ソングスチャートにおいて取り上げたのはSnow Man「Grandeur」でした。しかも”実はストリーミング向き?!”という、なかなか挑戦的といえる表現をタイトルに用いているのです。

「Grandeur」のMVは12月23日に公開されている。そのため、Hot 100でもリリースに先駆けて1/4付の動画再生数が3位を記録しており、少しなだらかに下降しているとはいえ、今週も13位と上位をキープしている。この数字には、おそらくCDを購入していないファンの貢献度も高いだろうし、購入していても何度も動画を見ていることだろう。もしかしたら買ったCDを聴かずに、YouTubeで楽しんでいるというファンもいるのではないだろうか。そうだとすると、まさにストリーミングに近い楽しみ方をしていると言ってもいい。ストリーミング解禁することによって、ファン層の裾野を広げることができれば、一般的な音楽ファンへの浸透度もさらに深まるのではないだろうか。

ビルボードジャパンによる記事紹介ツイート(→こちら)は、現段階で2千を超えるリツイート(引用含む)がなされており、注目の高さが伺えます。

 

この動画再生指標が好調に推移していること、ジャニーズ事務所所属歌手においてはこれまでほぼ見られなかった傾向です。その点について、以前ブログに記しています。

ジャニーズ事務所所属歌手の作品は現在、ほとんどのシングルCD表題曲がCDリリース前にミュージックビデオをショートバージョンながら公開するようになりました。しかしCD関連指標初加算週に、動画再生指標が上昇することはあっても大きく伸びることは少なく、また上位をキープすることも稀でした。この動きから、動画再生は主にコアなファンが行い、CDリリース後はCDに同梱される映像盤へ視聴先を移行するためにYouTube再生回数が低くなるものと推測していました。それゆえ、Snow Man「Grandeur」の動きは良い意味で特殊なのです。

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最新2月15日付ビルボードジャパンソングスチャートでは19位にダウンした「Grandeur」ですが動画再生指標は13位、また同指標は加算7週目にして13位以上をキープしています(上記チャート推移(CHART insight)において総合順位は黒の折れ線で、動画再生指標は赤で表示)。国内の再生回数が反映されるこの指標ですが、コアなファンに加えてライト層の聴取も反映されていると考えられることから接触指標のニーズが高いと推測可能。それゆえ、接触指標の大きな柱のひとつであるサブスクサービスの解禁待望論が生まれるのは自然なことなのです。サブスクサービスの再生回数はストリーミング指標に反映されます。

 

 

そんなこともあり、こちらのツイートには違和感を覚えた次第。

エイベックスがプロモーションとして用意しているこちらのツイート。リンク先は他の歌手同様に作品を購入もしくは接触できるプラットフォームに移行し、通常ならばその大半がストリーミングやダウンロードといったデジタルプラットフォームなのですが。

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開いてみると、そこにデジタルプラットフォームはありません。ともすれば現在予約段階ゆえデジタルには遷移できないという声も出てきそうですが、デジタルにおいてもSpotifyにおけるプリセーブ、Apple Musicのプリアドといった予約機能があるため、やはり納得し難いというのが私見です。

エイベックスは、Kis-My-Ft2Luv Bias」が火曜ドラマ主題歌という大型タイアップを獲得したことでこれまで以上にヒットすることを見据え、このようなプロモーションツイートを打ってきたと思うのですが、しかし同枠主題歌のヒットはその大半が接触指標の充実に因るものである以上、CD特化型では厳しいというのが私見です。

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2月15日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、「Luv Bias」は動画再生指標が初めて加算されました。そして次週は下記ミュージックビデオの公開効果でこの指標をさらに伸ばしてくることでしょう。

上記動画にはショートバージョンとの表記がなく、誤解を招きかねないやり方には異を唱えたいと思うのですが、立て続けに動画を用意したのはレコード会社側等もこの指標を伸ばせると踏んでいるからだと考えます。しかしショートバージョンは動画再生回数をフルバージョンほど伸ばせないという特徴があり、動画再生指標は伸びても上位に至りにくいでしょう(それゆえSnow Man「Grandeur」が特段凄いと言えるのですが)。だからこそサブスクサービスへの解禁を、たとえば「Luv Bias」限定という実験の形ででも行ったらどうかと思うのです。

 

 

ジャニーズ事務所におけるサブスクサービス解禁は、活動休止した嵐が大きなレールを敷いてくれました。事務所が今後どう出てくるかは判りかねますが、個人的にはやはり英断を期待したいという思いが強くあります。チャート上においてCD関連指標やTwitterに強い曲が年間チャートで上位に進出することは少なくなり、Twitterが強くともそれだけで週間チャート上位に登場することもまた厳しくなっているゆえ、尚の事なのです。