イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SEKAI NO OWARI「silent」、TikTokキャンペーンやCDリリースで通年ヒットを目指す

SEKAI NO OWARI、シングル「silent」のCDリリースに合わせて面白いキャンペーンを打ってきました。

@sno_tiktok

新曲「silent」とTikTokがコラボした##フォトモーション 『silent』が 新登場!投稿キャンペーンも実施中!#s#ekainoowari #s#ilent ##リスマスなんて無ければ ##あた

♬ silent - SEKAI NO OWARI

曲と同じ名前が付いたフォトモーションを使い、サビ頭のフレーズである”クリスマスなんて無ければ”のハッシュタグを付けて投稿すればサイン入りポスターが当たるというのが今回の企画(応募期間は来年1月10日まで)。フォトモーションが以前から用意されていたものか、それとも今回に合わせて設けられたものかは解りかねますが、後者ならばかなり珍しいのではないでしょうか。

実際、「silent」はTikTokでヒットする要素を秘めていると考えます。今年TikTokで使われている曲の傾向を、TikTokのゼネラルマネージャーを務める佐藤陽一さんは次のように語っています。

TikTokで盛り上がる曲の持つ要素にはいくつかのパターンがあるんですけれど、最近の傾向としては主に2つのパターンがあると思っています。まずひとつは、中毒性のあるサビのメロディ、頭の中で繰り返し鳴ってしまうようなフレーズが、ダンスやハッシュタグと結びついて繰り返し聴かれるようになる。Shuta Sueyoshiさんの「HACK」が典型例だと思います。もうひとつは、歌詞にパンチラインがある曲ですね。言葉のユニークさ、伝わりやすさや面白さがあって、それを伝えるボーカル力、歌の力が組み合わさった曲が伸びる傾向があります。典型的な例では瑛人さんの「香水」や、YOASOBIさんの「夜に駆ける」ですね。その2つのパターンが顕著です。

”クリスマスなんて無ければ”というサビ頭の印象的なフレーズをハッシュタグで認知させ、SEKAI NO OWARI独特の世界観で歌い上げる…「silent」はTikTokで重宝される曲ではないかと思うのです。

 

この「silent」は、良質な恋愛ドラマを多く輩出するTBSの火曜ドラマ枠で現在放送中の『この恋あたためますか』主題歌。ヒットの規模は徐々に拡大しています。

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デジタル解禁から6週連続でポイントを伸ばし、12月14日付ビルボードジャパンソングスチャートでは遂にトップ10に到達。今日発表予定の12月21日付ではさらなる躍進も期待されます。今日発売されるCDの関連指標は次週(12月28日付)以降に加算され、1万ポイント突破も十分あり得るでしょう。


ブログでは以前、「silent」の好調について取り上げたことがあります。

この時は、『ストリーミングや動画再生指標がビルボードジャパンソングスチャートで大きなシェアを占め、どちらの指標でもクリスマスソングが毎年伸びる、なんならサブスクサービスは年を追う毎に拡大しているという状況を踏まえれば、たとえリリース年にヒットせずとも翌シーズン以降に伸び、定着することが考えられる』という観点から記載しました。アメリカでは最新12月19日付ビルボードソングスチャートでマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」がおよそ1年ぶりに頂点に立ったことに代表されるように、クリスマスソングがチャートを席巻するようになっています。とはいえ日本ではクリスマスソングのチャート席巻率はまだまだといったところでしょうか。

無論「silent」がクリスマスにピークに達するべくキャンペーン等を打っていることはあれど、クリスマス直前でのCDリリースやTikTokのキャンペーンの応募期間が来年までであることを踏まえれば、ともすれば「silent」は通年でのヒットを目指しているのではと捉える自分がいます。米ではクリスマスソングがシーズン終了後にチャートから一掃されるのですが、日本では例外が存在するのです。それがback number「クリスマスソング」。

ビルボードジャパンのチャート推移(CHART insight)からは面白い動向が見えてきます。

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上記は12月14日付までの60週の動向を示したものですが、黒の折れ線で表示される総合チャートでは通年300位以内に入り続けています(この300位以内在籍記録は2018年8月13日付以降継続中)。2019年からはサブスク解禁に伴いストリーミング指標(青の折れ線で表示)が、そして2020年にはミュージックビデオフルバージョン解禁に伴う動画再生指標(赤で表示)がそれぞれ大きく伸び出しており、ポイントの漏れがなくなった「クリスマスソング」は今年、リリース年以来となる飛躍が期待できるのです。

「silent」は「クリスマスソング」同様、恋愛がテーマとなったドラマ『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(2015 フジテレビ)の主題歌。翌年には大ヒットしたベストアルバム『アンコール』に収録され、同アルバムが2020年度の年間アルバムチャートで64位に入っていることも「クリスマスソング」が未だにチャートで勢いをみせていることの証明といえます。一方でSEKAI NO OWARIは来年2月10日にベストアルバム『SEKAI NO OWARI 2010-2019』をリリースするものの「silent」は含まれません(ベストアルバム特設サイトを参照)。ですが、だからこそベストアルバムリリース時にアルバム未収録の「silent」をCDで購入するという需要を見越し、クリスマス目前ながらCDをリリースしたのかもしれず、そうなればクリスマスが終わり年が明けても「silent」の人気が続き、「クリスマスソング」同様の動きをなぞる可能性があるかもしれません。