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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

宮本浩次のカバーアルバム『ROMANCE』が10万の大台へ、好調の理由は

宮本浩次さんによるカバーアルバム『ROMANCE』が好調です。

11月18日にリリースされた『ROMANCE』は、登場3週目となる12月14日付ビルボードジャパンアルバムチャート(12月9日発表)で5位を記録。上位4作品が初登場であることからも、安定したチャートアクションであることが解ります。

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f:id:face_urbansoul:20201210210149j:plainダウンロードは2週目にむしろ売上がアップし、CDは3週目に前週比94.3%と高水準をキープ。最新12月14日付の集計期間における終盤2日間でCDレンタルによるルックアップ(パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスされる回数)が加算され始めたことで、次週以降レンタルに伴うルックアップが丸一週間分加算され同指標の上昇が見込まれます。そして『ROMANCE』は、CDとダウンロードの合計で10万ユニットを突破するに至っています。

 

今回の好調について、初週の動向をビルボードジャパンが分析。ソロ2作目となるカバーアルバムは『宮本、独歩。』より初週1万以上CDセールスを伸ばし、実店舗、とりわけ大都市圏での売上上昇が顕著なのです。

この動向を踏まえ、『ROMANCE』が伸びている理由を自分なりに考えてみました。

 

 

① カバーアルバムが一周回って新しいと感じられたこと

カバーアルバムといって真っ先に思い出す方が多いだろう、徳永英明『VOCALIST』シリーズの初作は2005年リリース。コンセプトも『ROMANCE』同様、男性歌手が女性歌手の曲を歌うというものでした。以降カバーアルバムがムーブメントとなり様々な歌手が挑戦。ビルボードジャパンでも2012年、このブームおよび関連作品を取り上げています。

記事に登場するJUJUさんは定期的にカバーアルバムをリリースし、最新作『俺のRequest』は2020年度ビルボードジャパン年間アルバムチャートでカバーアルバム最高位となる57位を記録。とはいえ同年の年間チャート100位以内に登場するカバーアルバムが片手で数えられる範囲というのは、流行期に比べれば寂しい限りなのですが、逆に言えばリリースする歌手が減ったからこそ、カバーアルバムが逆に新鮮に感じられるようになったと言える気がします。

 

 

② 相次ぐメディア出演により話題性を維持していること

時に破天荒とも称されるパフォーマンスと、その一方で真面目な性格…自分が観た『あさイチ』ではそんな宮本さんの姿を垣間見ることができました。

実際、これらテレビ出演がチャートアクションに影響を及ぼしたと、ビルボードジャパンはチャートイン2週目の動向を以下のように分析。

CDセールスは落としているものの、前週2位だったダウンロード数は当週さらに数字を伸ばして5,537DLとなり、同指標1位を記録している。宮本浩次は当週の集計期間内に日本テレビ『ベストアーティスト2020』のほかにも、『ヒルナンデス!』や『スッキリ』、NHK総合あさイチ』といった音楽番組以外の番組に出演。その露出による上昇とも考えられる。

テレビ番組出演はサブスク再生回数等に伴うストリーミングやTwitterといった指標にまず影響を与えますが、これら指標はアルバムチャートを構成するものではありません。一方で、CDショップに行かずともダウンロードにて購入する方、テレビ番組を観た後にCDショップで購入する方が出てきていることは間違いなく、後者についてはチャート登場3週目のCDセールスがほぼ横ばいである状況から推測可能。朝や昼の情報番組は若年層よりも中高年層の視聴者数が多く、接触以上に所有指標を強く刺激していることが想起されます。

 

 

③ アルバムの中長期的な戦略が功を奏していること

『ROMANCE』からは「異邦人」のミュージックビデオがアルバムの発売日に、そして「あなた」のミュージックビデオが今月9日に公開されています。

アルバムリリース以降という表現を発売日以降と読み替えるならば、『ROMANCE』からはアルバム発売日以降に複数のミュージックビデオが公開されたわけです。最近では藤井風『HELP EVER HURT NEVER』で行われたこの施策からは、アルバムを発売日以降も売り出していくという宮本浩次さんサイドの中長期的な戦略やその意思を感じます。先に紹介した藤井風『HELP EVER HURT NEVER』は2020年度ビルボードジャパン年間アルバムチャートで34位を記録し、成功を収めたと言えるのです。

 

 

これら3つの策が、『ROMANCE』のヒットを加速させていると考えます。実際、12月21日付(集計期間:12月7~13日)における前半3日間のCDセールスから、『ROMANCE』の大台突破がみえてきました。

スマッシュヒットを記録している宮本浩次の『ROMANCE』は、リリース4週目となる当週前半も5位をマーク。累計売上枚数は99,423枚と、10万枚の大台に大手をかけた。

CD10万枚突破が年末の情報番組で取り上げられ、音楽番組でパフォーマンスの機会が得られれば、ロングヒットのフェーズに入ることは間違いないでしょう。

 

 

今回のカバーアルバムは、『新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され外出自粛が余儀なくされる中、少年時代に慣れ親しんだ楽曲を1日1曲カバー』したことが制作の発端となっており(『』内は宮本浩次が数々の歌謡曲を歌唱、愛する“女唄”に正面から向き合った初カバーアルバム(コメントあり) - 音楽ナタリー(9月16日付)より)、まさに今の時世を踏まえてのもの。『毎日ちゃんと作業場に行って、一人でこもって、曲を考えてカバーをして、インスタグラムをする。それが自分の最大のできること。ごはんを食べるのと同じように、それを私の仕事、私の日常にしていったわけです。『あぁ、これをやればいいんだ、俺は』と思いました』(宮本浩次、初のカバーアルバム発売「女性の曲を歌うことで、自分が解放される感覚がありました」<インタビュー>| 芸能ニュースならザテレビジョン(11月18日付)より))と語っており、カバーすることをモチベーションの、そして大袈裟かもしれませんが生きることの支えにしていったと思うのです。そして、そこから生まれた『ROMANCE』を、今度は受け取った側が生活の支えにしていくことでしょう。