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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

クリスマスソングはリル・ナズ・X、SEKAI NO OWARIのヒットで再び新曲ラッシュとなるか?

クリスマスソングが街に流れ始めています。アメリカではビルボードソングスチャートで先週早くもマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」やブレンダ・リー「Rockin' Around The Christmas Tree」が100位以内に再浮上。さらに26日木曜のサンクスギビングデーには米Spotifyデイリーチャートで「All I Want For Christmas Is You」が前日から7ランクアップし2位に到達。明日発表される12月5日付米ビルボードソングスチャートではトップ10目前まで上昇すると予想家が示しています。

ここ数年の米ビルボードソングスチャートではクリスマスソングの強さが目立ち、特にストリーミングが牽引していることはクリスマスの1ヶ月前に「All I Want For Christmas Is You」が2位に到達したことからも明らか。さらにはこのような状況も。

サブスクサービスの利用者増大、ならびにネット環境の整備等がクリスマスソングの上昇に大きく影響していると思われます。

 

その流れに飛び込んできたがあのリル・ナズ・X。

ビリー・レイ・サイラスの加勢もあり「Old Town Road」が昨年19週ものナンバーワンを記録、米ビルボードの記録を塗り替えたリル・ナズ・Xが11月13日金曜に久々の新曲となる「Holiday」をリリース。ミュージックビデオの登場者やクリスマス(ホリデーシーズンとも呼ぶ)の名を冠したタイトルを踏まえれば、クリスマス需要を意識した作品なのは明らかです。米ビルボードソングスチャートでは前週37位に初登場を果たしていますが、米Spotifyデイリーチャートで初日65位だった同曲が28日土曜には27位まで上昇しており、クリスマスシーズン後半に向けての上昇が予想されます。「Holiday」は「Old Town Road」を収録した昨夏リリースのEP『7』以来久々となる新曲ですが、彼がクリスマスソングで勝負することを予想した方はどれだけいらっしゃるでしょう。しかしながら、どのタイミングでどの曲をドロップすればより注目されるのかをリル・ナズ・Xは熟知しているのだと実感させられます。

 

一方の日本は、米ほどではないにせよクリスマスソングのソングスチャート再登場が見られますが、ここ数年は新たなクリスマスソングのリリースが少ないという印象がありました。それが今年を機に大きく変わるかもしれません。

近年良作、ヒット作を連発するTBS火曜22時枠の今期ドラマ『この恋あたためますか』主題歌として、初回放送の翌日配信開始されたSEKAI NO OWARI「silent」。12月16日のシングルCDリリースを前に、少しずつ人気が高まっています。

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特に勢いが見られるのは上記チャート推移におけるストリーミング(青の折れ線で表示)と動画再生(赤)。面白いのは、SEKAI NO OWARIは自身のYouTubeチャンネルで「silent」の公式オーディオをデジタル解禁のタイミングで用意し、17日火曜のミュージックビデオ公開前に動画再生指標をあたためているのです。ミュージックビデオの再生回数がはじめて反映されたのは直近となる11月30日付ビルボードジャパンソングスチャート(集計期間:11月16~22日)ですが、その前週には既に同指標が35位に上昇しており、公式オーディオの賜物と言えそうです。

このCDに先駆けた配信のおかげで、CDはクリスマス直前の12月16日にリリースされたとしても十分な成果(費用対効果)を挙げられるという勝算があるのかもしれません。

 

先程、『ここ数年は新たなクリスマスソングのリリースが少ないという印象がありました』と記しました。しかし「Holiday」や「silent」がヒットに至るならば尚の事、今後アメリカそして日本でも新たなクリスマスソングが続々生まれる予感がします。ストリーミングや動画再生指標がビルボードジャパンソングスチャートで大きなシェアを占め、どちらの指標でもクリスマスソングが毎年伸びる、なんならサブスクサービスは年を追う毎に拡大しているという状況を踏まえれば、たとえリリース年にヒットせずとも翌シーズン以降に伸び、定着することが考えられるのです。