イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Mステ恒例の”今年の1曲ランキング”は真の社会的ヒット曲を示している

昨日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)にて、今年の1曲を街頭インタビューしたその結果が発表されました。いつ行われたや何名に聞いたのかがおそらくは不明であり信ぴょう性に疑問を感じる部分はあれど、この結果から世間一般に浸透したヒット曲が見えてくることから、実に興味深いアンケートだと毎年感じています。

 

今年の結果は以下の通り。

ミュージックステーション』みんなが選ぶ今年の1曲ランキング

1位 LiSA「紅蓮華」

2位 瑛人「香水」

3位 LiSA「炎」

4位 YOASOBI「夜に駆ける」

5位 NiziU「Make you happy」

6位 米津玄師「感電」

7位 Official髭男dism「I LOVE...」

8位 あいみょん「裸の心」

9位 嵐「カイト」

(下記はNHKYouTubeチャンネルで公開されたスペシャルムービー)

10位 DISH//「猫」

(下記はTHE FIRST TAKE ver.)

 

昨日のブログエントリーでは、2020年度のビルボードジャパンソングスチャートについて様々な定点観測を行った結果を発表しました。

ここから、週毎の1位獲得曲一覧表をあらためて表示すると。

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2020年度のビルボードジャパンソングスチャートで1位を獲得した曲は合計33曲ありますが、その中で『ミュージックステーション』ランキングに入った曲は5曲のみ。そしてその5曲と、Official髭男dism「Pretender」を除く27曲とは”首位獲得の翌週におけるポイント前週比が5割”というラインではっきりと分かれます。いや、27曲においては3割にも満たない曲がほとんどなのです。2位および3位獲得曲についても、今回の『ミュージックステーション』ランキングに入った曲のすべては翌週のポイント前週比が5割を上回っています。

(ただし嵐「カイト」のポイント前週比は22.3%ですが『ミュージックステーション』ランキングに入っています。これは嵐の活動休止前最後のシングルであること、昨年の『NHK紅白歌合戦』で披露され年初より注目されていたこと、米津玄師さんが提供したこと等の話題に伴う登場と言えるのではないでしょうか。)

DISH//「猫」についてはオリジナルバージョンがビルボードジャパンソングスチャートで最高9位、THE FIRST TAKE ver.が同11位となり、順位からはその強さが見えにくいかもしれません。しかし。

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仮にこの2バージョンを合算すれば19週もの間トップ10に在籍したことになります。また2バージョン共にストリーミングや動画再生といった接触指標群の強さが目立ち、これがポイントを長期に渡ってキープできる要因と言えます。

 

昨日のブログでは『トップ3入りした翌週のポイント前週比をみれば、先述したストリーミングに加えて動画再生やダウンロードといった指標群でトップ10入りした曲が高く推移していることが解ります』と書きました。『ミュージックステーション』におけるアンケート結果ではより世間一般に浸透したヒット曲が毎年トップ10内に登場しますが、ビルボードジャパンソングスチャート週間トップ3入りした作品ならびに「猫」の推移に照らし合わせると、今回のアンケートでのトップ10入り、ならびにチャートでのロングヒットしている曲の基準が、ダウンロードの強さもあれど【所有<接触】であることが見て取れます。

 

その一方では。

無論、このアンケートが最近のものであり、年度初めにリリースされた作品の印象度が最近の作品群に比べて高くないというのも影響しているかもしれません。しかしながら、CDセールスでミリオンを記録したとしても必ずしも浸透したと限らないことは先の表におけるポイント前週比から見えてきます。また、今年度最高となる初週CDセールスを「失恋、ありがとう」で記録したAKB48が今年の『NHK紅白歌合戦』に選ばれていないことからも明らかです(紅白選考についての私見以前記しています)。さらに、「Imitation Rain」「D.D.」はカラオケ指標の動向を踏まえるにライト層に浸透していないのではと以前指摘したのですが、そのことが今回のランキングである種証明されたと言えるかもしれません。

 

昨日今日のブログエントリーからは、接触指標群を充実させることが如何に大事かがよく解ります。これは来週金曜に発表されるビルボードジャパン年間ソングスチャートでも明白となることでしょう。

 

ちなみに、昨日のブログエントリーをTwitterで紹介した後にとあるやり取りがありました。ここから様々なことが見えてきたと思うゆえ、ここでスレッドの最初のツイートを紹介させていただきます。

日本の音楽業界全体が盛り上がるべく、サブスクやミュージックビデオのフルバージョンでの解禁がどの歌手においても必須になってほしいと強く願います。これは、その曲や歌手が世界から注目が集まった時にきちんと対応できる基礎にもなるものです。