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トラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」が初登場で首位を獲得…10月10日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の10月5日月曜に発表された10月10日付最新ソングスチャート(Hot 100)、前週首位に返り咲いたBTS「Dynamite」は2位に後退、トラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」が初登場で首位を獲得しました。

1ランク後退したBTS「Dynamite」(2位)は、前週リミックス追加投入で10万台を回復したダウンロードが前週比44%ダウンの86000(同指標1位)、ストリーミングは同2%ダウンの1370万(同指標13位)、ラジオエアプレイは同11%アップの2310万(同指標39位)に。ラジオエアプレイの伸びが2桁に達した一方、所有指標の反動が目立ちます。

一方、初登場で首位に立ったトラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」はストリーミングが1940万で6位発進、ラジオエアプレイは1060万(同指標50位未満)となり、またダウンロードは98000を獲得し同指標2位となっています。BTS「Dynamite」の86000を上回りながらも2位というのは、米ビルボードがダウンロード指標の順位においてはデジダルダウンロードのみをカウントし、フィジカルセールスは含まないため。今回の「Franchise」におけるセールスの内訳は、デジダルダウンロードが40000に対し、カセットテープおよびCDは58000となっています。

「Franchise」において販売されたのはデジダルダウンロード、カセット1種およびCD2種。さらにデジタルダウンロードではインストゥルメンタルバージョンも用意され、フィジカルおよびインストゥルメンタルはトラヴィス・スコットのホームページにて販売されています。今回の集計期間(ダウンロードはストリーミング同様9月25日金曜からの1週間。なおラジオエアプレイは9月28日からの1週間)において、デジダルダウンロードは69セント、フィジカルは1ドルにて販売された模様で、これがダウンロード指標押し上げの要因と言えます。

(なお、米ビルボードでは「Franchise」がフィジカル施策であるとは言及されていません。フィジカル施策とは、フィジカル購入時にその発送が後日であっても購入段階で売上にカウントされ、また購入の瞬間にダウンロードが可能になりそちらもカウントされるという手法であり、今年この施策により多くの楽曲が1位に初登場を果たしながら翌週以降急落したことを受け、米ビルボードはおそらくはチャートの健全化を図る目的で後日発送分は発送段階でカウントさせる等チャートポリシーを変更しました。このチャートポリシー変更日の具体的な言及はどうやら米ビルボードの有料記事でのみ行われている模様ですが10月1週目からの変更と伺っており、今回の「Franchise」が最後のフィジカル施策による首位獲得と言えるかもしれません。ただ、今後デジタルダウンロード69セント安価販売が有効な施策になるだろうことは考えられます。)

ラヴィス・スコットにとっては「Franchise」が4曲目の首位獲得にして、初の首位となった「Sicko Mode」(2018)を除けば、「Highest In The Room」(2019年10月19日付)、「The Scotts」(2020年5月9日付 トラヴィス・スコット & キッド・カディによるザ・スコッツ名義)、そして今回の「Franchise」はいずれも初登場にて首位を獲得。3曲以上初登場で首位を獲得したのはアリアナ・グランデ(唯一の4曲)、ジャスティン・ビーバーマライア・キャリー、ドレイクに次いで5組目となります。また3曲を1年以内で初登場首位に到達したのは最短記録であり、アリアナの1年と4ヶ月を上回りました(「7 Rings」~ジャスティン・ビーバーとの「Stuck With U」~レディー・ガガとの「Rain On Me」)。

客演参加したヤング・サグにとっては、カミラ・カベロにフィーチャーされた「Havana」が2018年1月に首位に到達して以来2曲目の1位。一方M.I.A.にとっては初の首位獲得となり、トップ10入りは自身の「Paper Planes」(2008 4位)、マドンナにニッキー・ミナージュ共々フィーチャーされた「Give Me All Your Luvin'」(2012 10位)以来3曲目となります。M.I.A.のHot 100初登場は2008年8月2日付であり、そこから12年2ヶ月1週間を経て頂点に達しましたが、女性におけるHot 100初登場から首位獲得までの最長期間はベッド・ミドラーで、1972年12月23日付けで初登場してから1989年に「Wind Beneath My Wings」で首位獲得に至るまで16年と5ヶ月2週間を有しています。またすべての歌手での最長記録はサンタナで、1969年10月のHot 100初登場からロブ・トーマスを迎えた「Smooth」が1999年10月に首位を獲得するまで、実に30年近く経過しているのです。

先述したフィジカル施策の影響で今年は初登場での首位獲得が最多となり、「Franchise」が9曲目、1995年および2018年の4曲を大きく上回っています。Hot 100の歴史においては初登場での首位獲得は「Franchise」が44曲目であり、また初登場に関係なく2020年における首位獲得曲はこれが15曲目。ちなみに昨年の首位獲得曲数も15曲となります。

 

今回、米ビルボードHot 100予想担当者のほとんどはカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン(発音の関係でこう表記。ネットではミーガン・ジー・スタリオンとの表記が多い印象)による「WAP」が首位に返り咲くと予想されていました。「WAP」はストリーミングを今週も制しているものの、前週比12%ダウンの3160万となっています。またラジオエアプレイは3週ぶりにザ・ウィークエンド「Blinding Lights」(今週総合6位)が返り咲き、同指標では前人未到となる通算24週目の首位を獲得しました(前週比5%アップの8010万)。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) トラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」

2位 (1位) BTS「Dynamite」

3位 (2位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

4位 (4位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

5位 (5位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

6位 (7位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

7位 (6位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

8位 (9位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

9位 (8位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

10位 (10位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

前週初登場で3位に入ったジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」がトップ10落ちとなり、入れ替わる形でトラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」がトップに登場。一方、米ビルボードが先月新設した2つのグローバルチャートにおいて、10月10日付のGlobal 200ではカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」が首位に返り咲き、Global 200からアメリカの分を除いたGlobal Excl U.S.ではBTS「Dynamite」が3週目の首位を達成しています。

グローバルチャートは世界の主要なデジタルプラットフォームにおけるストリーミングおよびダウンロードが加算対象となり、歌手の公式サイトでの販売分は加算されないためトラヴィス・スコット feat. ヤング・サグ & M.I.A.「Franchise」はGlobal 200で7位に。一方でGlobal Excl U.S.ではトップ10に入ることができませんでした。Global 200における「Franchise」の数値はストリーミングが3970万、ダウンロードが19000となっており、デジタルダウンロードにおいてもその多くがトラヴィスのホームページから買われたと推測されます。歌手はおそらく利益率が高いであろう自身のサイトで売りたい気持ちは解れど、デジタルプラットフォームできちんと売ることがグローバルチャートでの上昇につながるものと考えます。