イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

back numberの近年の楽曲における接触指標群の非充実…ミュージックビデオフルバージョン公開曲との差は広がるばかりでは

最新8月24日付のビルボードジャパンソングスチャートでは、サブスクを解禁した米津玄師さんやヒゲダンフェス開催に伴うOfficial髭男dismの大挙エントリーが目立ちます。そちらについては一昨日のブログエントリーに記載していますが、それら楽曲に負けじと残り続けているのがback number「高嶺の花子さん」。今週は76位にランクインしています。

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直近90週における「高嶺の花子さん」のチャート推移(CHART insight)で解るように、前週突如動画再生指標(赤の折れ線グラフ)が100位以内に登場し、これにより「高嶺の花子さん」はチャート構成比においてストリーミング指標5割、動画再生指標2割強というロングヒットの法則に見事合致しました(この法則については以前記しています)。元々「高嶺の花子さん」には短尺版のミュージックビデオが用意され、動画再生指標では100位未満ながら300位以内に入り加点対象となることはあったのですが、7月29日にback numberの公式YouTubeチャンネルが開設され、この曲を含む19本のミュージックビデオが一挙に公開されたことで動画再生指標が跳ね上がった形です。

上記がこれまで公開されていた短尺版、そして下記がフルバージョン。

短尺版のミュージックビデオがフルバージョンに比べて動画再生指標加算に貢献しない件については以前、Mrs. GREEN APPLEを例に挙げていますが、Mrs. GREEN APPLEが比較的短期間でフルバージョンを別途アップした一方、back numberについてはようやくというところでしょう。

 

それにしても驚くのは、back numberの公式YouTubeチャンネルが今までなかったということ。これまでの短尺版は彼らの所属レコード会社、ユニバーサルミュージックの公式YouTubeアカウントにアップされていたのですが、これは先述したMrs.GREEN APPLEにおいても同じこと。さらにback numberにおいては、フルバージョンが解禁されたのはベストアルバム『アンコール』(2016)までの作品およびシングル「瞬き」(2017)のカップリングである「ARTIST」までであり、「瞬き」以降のシングル(CD表題曲)等が含まれるアルバム『MAGIC』(2019)関連曲は解禁に至っていません。フルバージョンで解禁された19曲についてはビルボードジャパンの記事に掲載されていますが、ミュージックビデオ公開範囲の限定は、以前指摘したサブスク解禁のそれとほぼ被るのです。

ミュージックビデオの公開元はback number側と所属レコード会社側の2箇所あり、最近の曲は前者で未公開、後者で短尺版のみとなっています。一方、今月18日に突如発表された新曲「水平線」についてはback numberの公式YouTubeチャンネルのみで公開(デジタル解禁の予定は今のところみられず)というのは、back numberとユニバーサルミュージックの間に何か問題があったと思われてもおかしくないのではないでしょうか。今回のミュージックビデオのアップの理由(思い)を踏まえれば邪推なのかもしれませんが。

back numberと所属レコード会社の関係が良好だというのであれば、仮に『アンコール』後の作品については現在も売上が見込めるためサブスクもYouTubeも未解禁のままにするという取り決めがあると推測するのが最も自然かもしれません。これはMrs. GREEN APPLEについても立てた仮説ですが、ならばそれは非常に勿体無いことなのです。

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サブスクおよびミュージックビデオフルバージョンで解禁されていないシングル4曲の、直近90週におけるチャート推移(CHART insight)をみると「高嶺の花子さん」と大きく異なることは明らかです。これら4曲のポイント獲得源はダウンロードとカラオケであり、所有指標のダウンロードでポイントを獲得していることはすなわち、現在も売上が見込めるため解禁しなくても…という先述した所属レコード会社の考え(の仮説)通りになっていると言えるでしょう。

しかし「高嶺の花子さん」の獲得ポイント源はサブスク再生に基づくストリーミングであり、所有指標より稼げないとしても再生回数に伴う売上高は所属レコード会社等へ入ってきます。またサブスク等の盛り上がりは注目度の上昇や維持につながり、ソングスチャートを見て、またサブスクサービスの人気曲プレイリストを機に聴く方が出てくることで、より長く愛されていくことになります。その上、前週から動画再生指標100位以内に入ったことでそちらからの売上も見込めるわけです。そういう意味では、最近の作品だけ接触できる環境を与えられないというのはこれらの流れに至れないという点において機会損失なのです。それでも「大不正解」は不連続ながら、他3曲は連続して100位未満ながら300位に登場しているのはback numberの人気を裏付ける証拠ではあるのですが。

いずれ近年の楽曲もサブスクおよびミュージックビデオフルバージョンが解禁されるとは思いますが、その間も機会損失は続くと思うと残念でなりません。そしてこのようなアップロードの不十分さは、それを知った人にとっては主に歌手側への不信感につながるのではないでしょうか。不信感が所有行動やライブ参加等の敬遠につながる可能性を孕んでいるならば、所属レコード会社がやるべきことは不信感を生ませないことであるのは自明でしょう。

 

「水平線」に関するリアクションには、いずれデジタル解禁してほしいという声がみられます。ならばそれと同時に、「HAPPY BIRTHDAY」等『MAGIC』収録曲のミュージックビデオフルバージョン、そして『MAGIC』自体のサブスクでの解禁を呼びかけることも必要ではないでしょうか。