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テイラー・スウィフト、アルバムのみならずソングスチャートでも初登場首位は確実?「Cardigan」における2つの戦略とは

7月24日金曜に突如リリースされたテイラー・スウィフト8枚目のオリジナルアルバム『Folklore』が好調です。すでにイギリスでは1位を獲得し、日本時間で明日早朝に発表予定の米ビルボードでも首位発進が確実視されています。

このアルバム『Folklore』のフィジカル施策については以前noteに記載しましたが、その戦略の巧さはソングスチャートにも及んでいます。

 

 

アルバムからのリード曲と捉えられるのは「Cardigan」。唯一ミュージックビデオを用意しているゆえ、その位置付けは明確です。

この「Cardigan」が、フィジカルでも購入可能となりました。いわゆるフィジカル施策の実施です。

『7インチのアナログ盤(8ドル/約840円)、12インチのアナログ盤(13ドル/約1,400円)、12インチのピクチャー・ディスク(17ドル/約1,800円)、またはCD(5ドル/約530円)』(『』内は上記記事より)が用意され、購入すればこれらフィジカルが後日届くのとは別に、購入後すぐにダウンロードが可能となる仕組み。そしてこのコレクションは7月30日までの発売となっています。

 

さらに、「Cardigan」の別バージョンが7月30日木曜にリリースされています。

”Cabin In Candlelight”と名付けられたこのバージョンは『オリジナルから音の数をさらにそぎ落としたシンプルなものになっており、それだけにテイラーの声と楽曲本来の良さが際立つ』作品。さらにこのバージョンのミュージックビデオは『アルバム用の写真撮影を行ったときのビハインド・ザ・シーンを元に構成、写真スタンドの中で ”写真撮影時の映像” が映し出される仕様』(『』内はいずれも上記記事より)となっており、アルバムに浸っていた方からすれば興味深い作品と言えます。

 

 

 

これらの施策はいずれも、米ビルボードソングスチャートに有効に作用します。

フィジカル施策においては、後日届くフィジカルおよび即座に手に入るダウンロードが共に、ソングスチャートの指標のひとつであるダウンロードを押し上げます。この施策を用いた「The Scotts」「Stuck With U」「Trollz」そして「Rain On Me」といった曲が初登場で1位を獲得したことは弊ブログでも追いかけている通りですが、翌週以降急落が目立ちこれらヒットが米ビルボードの目指す社会的ヒットの鑑に合わなくなったこともあり、10月以降このフィジカル施策は実質無効となります。

テイラー・スウィフトはチャート上で有効なうちにフィジカル施策を実施。それも、次週8月8日付米ビルボードソングスチャート(日本時間の8月4日早朝発表予定)におけるダウンロード指標の集計期間が7月30日まで(ラジオエアプレイは8月2日まで)であることを考慮するかのような注文締切日を設定しており、この点からもチャートトップを狙っているのは確実と言えるでしょう。

 

また米ビルボードでは、オリジナルバージョンにリミックス等別バージョンが合算される仕様となっています(対して、日本では合算されません)。別バージョンはミュージックビデオも用意されており、サブスクやYouTubeのストリーミング再生回数が上昇することは必至。ストリーミング指標もまた、7月30日までが8月8日付米ビルボードソングスチャートの集計期間となっていることから、別バージョンのリリースは同指標上昇の追い込みをかけるのに十分な効果をもたらすと言えそうです。

 

 

テイラー・スウィフトは『Folklore』を米ビルボードアルバムチャートで首位に至らせるのみならず、「Cardigan」 でも米ビルボードソングスチャートを制しようとしています。アルバムはサプライズリリースであったものの、その後の「Cardigan」のフィジカル施策や別バージョン公開の流れを踏まえれば、実に綿密な戦略を敷いていたのだということが解るのです。