イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アメリカ、”デラックス・エディション”の新たな策は浸透してしまうのか?

3月6日にリリースされたリル・ウージー・ヴァートの2枚目のアルバム『Eternal Atake』が絶好調。日本時間の今朝発表された、最新3月21日付米ビルボードアルバムチャートで初登場首位を獲得しました。

初週の288000ユニットのうち、ストリーミング再生回数のアルバム換算分(SEA)は278000。18曲入りのアルバムがサブスク等のストリーミングで初週4億回聞かれた計算に。集計期間1週間でのストリーミング再生回数4億超え達成は、2018年10月13日付でリル・ウェインが『Tha Carter V』が成し遂げた4億3300万回以来となります。

アルバムの勢いはソングスチャートにも波及し、日本時間の明日朝速報発表予定の同日付ソングスチャートでは、リル・ウージー・ヴァートがトップ10に3曲を送り込むのではないかと、チャートを予想するサイモン・フォークさんは分析します。トップ10のうちオレンジで表示されたものがすべてリル・ウージー・ヴァートの曲です。

そのリル・ウージー・ヴァートが新たな策を採ってきました。

たとえばSpotifyでデラックス・エディションを開くと、アルバム名は『Eternal Atake (Deluxe) - LUV va. The World 2』と表示されます。『LUV va. The World 2』は単体ではアルバムとして表示されません。

このデラックス・エディションの策を採る歌手が出始めています。たとえばヤング・サグは昨夏リリースのアルバム『So Much Fun』に5曲を加えて昨年12月20日にリリース。

またマック・ミラーは、今年1月にリリースされた『Circles』に2曲を追加したバージョンを今週末リリースする模様です。

しかしながら、リリースの翌週にデラックス・エディションを出すというのは聞いたことがありません。

ヤング・サグ『So Much Fun』のデラックス・エディションがはじめて反映された今年1月4日付の米ビルボードアルバムチャートでは、『So Much Fun』は前週から26ランク大幅アップし10位に到達。他方、”(Deluxe)”と記載されたバージョンはチャートに登場しておらず、デラックス・エディションが合算され集計されたものと思われます(同日付チャートはこちら)。となると、『Eternal Atake』についても同様の合算措置が採られる可能性があります。デラックス・エディションが解禁された日、3月13日付の米Spotifyデイリーチャートではトップ10のうちリル・ウージー・ヴァートが9曲を占め、うち6曲がデラックス・エディション収録曲であることから、次週の米ビルボード、アルバムチャートおよびソングスチャート共にリル・ウージー・ヴァートが大暴れする可能性は高いと思われます。

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そこでタイトルについてですが…強い私見と前置きして書くならば、個人的にはこのデラックス・エディションは好みません。弊ブログではこのデラックス・エディションを以前から疑問視しています。同じ作品を2回買わせることでファンに、またオリジナルバージョンの在庫が残っている段階でデラックス・エディションを売り出すことで小売店に、それぞれ経済的な負担がかかるというのがその理由。

ですが、この疑問視はあくまでCDリリースをメインとする場合であり、ダウンロードに関しては後出し分を追加で買えば好いでしょうし、ましてやサブスクにおいてはこのデラックス・エディションをお気に入り登録等すれば好いだけの話、なのかもしれません。それでも、1週間しか間を置かないならばはじめからデラックス・エディションをオリジナルバージョンとして出せばよかったのにと思うのですが。

デラックス・エディションに疑問を抱いた自分に、日刊US HIPHOP NEWSのTwitterアカウントからリプライをいただきました(勝手ながら引用させていただきました。問題があれば削除いたします)。たしかに再生回数が稼げるのは先のSpotifyでも証明済なのですよね。

ただ、今後もしかしたら米ビルボードがアルバムチャートにおけるデラックス・エディションの換算方法を変更する可能性もあります。米ビルボードは昨年末、グッズとのセット販売、いわゆるバンドルについてチャートポリシーの変更を実施しました。

この速やかな変更を考えれば、近いうちに今回のリル・ウージー・ヴァートのようなデラックス・エディションについても議論されるかもしれません。浸透してしまう前にその芽が摘まれるのではないか?というのが自分の予想です。