昨日のブログでは、発表されたばかりのビルボードジャパン年間チャートを踏まえ、チャートから気になるトピックを10項目紹介しました。
この年間ソングスチャートを見ると、面白い傾向が浮かんできます。
1位 米津玄師「Lemon」 最高1位
3位 Official髭男dism「Pretender」 最高1位
4位 King Gnu「白日」 最高4位(2019年度)
5位 米津玄師「馬と鹿」 最高1位
7位 Foorin「パプリカ」 最高7位
8位 あいみょん「今夜このまま」 最高5位(2019年度)
9位 DA PUMP「U.S.A.」 最高2位
10位 Official髭男dism「宿命」 最高3位
トップ10入りした曲のうち週間チャートを制したのが4曲と、全体の半分に満たないのです。最高位が最も低いFoorin「パプリカ」に至ってはトップ10入り自体8週のみ。1位獲得曲も「Lemon」や「マリーゴールド」が昨年の曲であるため、ロングヒットした曲が年間ソングスチャート上位進出に必要な条件ということがよく解ります。
実は、週間チャートで1位を獲得した曲は47曲もあるのです。しかしその多くは年間ソングスチャートで高位置に登場しているとは言えません。以前から紹介していた1位獲得曲リストに、年間ソングスチャートの順位を付け足したものを下記に。
2019年度年間順位における灰色は重複分(ゆえ省略)、黄色での[ - ]は100位未満を示します。これをみると首位獲得の47曲中、半分近い21曲が年間100位以内に入らなかったのです。2019年度の終盤にリリースされた作品はやむを得ないかもしれませんが、100位以内を逃した曲のほとんどはシングルCDセールス初加算週にチャートを急上昇し翌週急落、ポイント前週比は10%台となっています。またシングルCDセールスでミリオン常連のAKB48は45~53位に3曲が収まる結果に。ポイント前週比が3.2~4.9%と著しく低いことも踏まえれば、他指標が伴っていない、シングルCDセールスに頼った曲が社会的ヒット曲とは言えないと断言していいでしょう。シングルCDセールス初加算の翌週にポイントが表示されない50位未満となり、ポイント前週比が計測不能となった曲は尚の事です。
一方で、Twitterのフォロワーでチャート分析に長けたあささんのアドバイスを受け、週間2位獲得曲の動向も同様に作成しました。ここから得られた気付きは多く、この場を借りてあささんにあらためて感謝申し上げます。
1位獲得分を含む重複分を除けば、最高2位を記録した25曲のうち年間100位未満は12曲と、こちらも半分近くを占めています。先述した計測不能曲が年間ソングスチャート100位以内を逃したことは勿論のこと、1位獲得曲を含めアイドルやK-Pop作品の強くなさも目立つのですが、ポイント前週比は1位獲得曲より全体的に高いことが解ります。それもそのはず、年間ソングスチャートでトップ10入りした曲の2位在籍は実に25週に及ぶのです。逆に言えば、それらロングヒットした曲をシングルCDセールスに著しく長けた曲が一瞬であれど上回るわけです。
1位および2位獲得曲を一覧化したことで、シングルCDセールスばかり強い曲が如何に短いヒットに終わっているかがはっきりと可視化されたと言えます。それら楽曲が多指標で成績を上げロングヒットにつなげることが理想だと考えますが、たとえばアイドルの販売戦略がシングルCDセールスありきである以上(未だに”オリコンデイリーランキングで何位獲得”等の声が目立つのはその姿勢の表れです)、理想に近づけるのは難しいかもしれません。ただそのやり方では短期的利益を追いかけるばかりで、歌手の認知度を広くライト層に普及させ中長期的な活動が出来るべく考えているとは思いにくいのです。シングルCDセールスから多指標での獲得に軸足を移すことこそ、レコード会社や芸能事務所に求められる姿勢だと考えます。
そしてビルボードジャパンには、以前も提案したのですが(→こちら)、あらためてシングルCDセールス指標のウェイト減少を求めます。チャート情報に詳しい方ならば前週や翌週の動向を踏まえて中長期的ヒットか瞬発的かを判断出来ますが、当週のみのチャートをチェックする方にとってはビルボードジャパンソングスチャートがオリコンと大差ないと思われるかもしれません。そして首位曲が毎週のように入れ替わり、また首位獲得の翌週に急落する曲が多いのは不健全と言われてもおかしくないでしょう。シングルCDの売上枚数に対し購入者数が著しく低い(ユニークユーザー数が乖離している)状況には独自の係数を用いることである程度是正出来ているとはいえ、シングルCDセールスランキングが長きに渡り形骸化している側面がある以上、係数の強化よりもウェイト自体の減少こそ求めていいのかもしれません。