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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

King Gnu「白日」最高位更新の理由は熱の持続、back number「クリスマスソング」から考えるミュージックビデオ短尺版問題…12月9日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

今週のソングスチャートを制したのは関ジャニ∞「友よ」でした。

セールスが5万枚近く伸びたことで、シングルCDセールス初加算週のポイント推移は錦戸亮さん在籍時のラストシングル「crystal」(2019)の20531ポイントから26036ポイントへ、前作比のポイントは126.8%と躍進しています。が、シングルCDセールスのチャート構成比が全体の9割近くとなっていることから次週の急落が見込まれます。ちなみに、前作「crystal」のシングルCDセールス加算2週目は27位・1707ポイント、ポイント前週比は8.3%となり、10%~20%がデフォルトとなっているジャニーズ事務所所属歌手の中では低い水準となっています。

 

今回注目は、3位に上昇したKing Gnu「白日」。

ビルボードジャパンではより細かく、今回の躍進の理由を分析。「白日」はストリーミング指標で2位に入り、Official髭男dismによる同指標トップ3独占を阻んでいます。

同曲は、当週自身最高となる400万回を超える再生数を記録し、29週ぶりに2位を獲得。さらにKing Gnuは、11月27日にリリースされた『井上陽水トリビュート』より「飾りじゃないのよ 涙は」が当週50位に初チャートインし、計7曲がトップ100入りを果たした。11月26日にはニューアルバム『CEREMONY』のリリース&全国ツアー開催を発表、翌27日には『ベストアーティスト2019』にて「白日」を生披露、また『CEREMONY』収録の新曲「小さな惑星」と「ユーモア」が、それぞれHonda VEZEL新CMと『ロマンシング サガ リ・ユニバース』TVCMのCMソングとしてオンエアがスタートするなど、話題が続いたことが今回のチャートアクションに繋がったと考えられる。

【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」がストリーミング28連覇 King Gnu「白日」が半年ぶりに2位浮上 | Daily News | Billboard JAPAN(12月4日付)より

ニューアルバムのアナウンス、『井上陽水トリビュート』への参加、2曲の新曲が用いられたCMの解禁、そしてテレビ出演…King Gnuは今回の集計期間中にどんどん話題を投入し、King Gnu熱を押し上げ持続してきたわけです。この集中投下は彼らの施策と言えるでしょう。以前も彼らのマーケティングの巧さを書いたのですが(未だに多くのアクセスをいただいています)、彼らには魅せ方を熟知するマーケティング担当者がいるのかもしれません。無論楽曲自体の良さこそ大前提ですが。

 

King Gnu「白日」が接触指標群で好調なのに対し、その接触指標の中でもアンバランスな動きをみせているのがback number「クリスマスソング」。昨年12月31日付以来となるストリーミング指標トップ10入りを果たし、日本におけるクリスマスソングの代表格と言える存在となりましたが、ストリーミング指標トップ10入りした楽曲の中で総合の順位が最も低くなっています。

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気になるのは、ストリーミングと比例して伸びることの多い動画再生指標が未カウントという事態。

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CHART insightから、上記は総合および構成8指標すべて、下記は総合(黒の折れ線で表示)および接触指標群のストリーミング(青)、動画再生(赤)のみを抽出。今年2月にサブスクリプション各サービスで解禁して以降ストリーミングこそ安定しているものの、動画再生が全く伴っていないことが解ります。これは、ミュージックビデオがショートバージョンであることが影響していると考えてよく、前週指摘したLiSA「紅蓮華」と全く同じ状況と言えるでしょう。「紅蓮華」については前週のブログをご参照ください。

back numberの場合はサブスクリプションサービス解禁とはいえ未だベストアルバム『アンコール』(2016)までに解禁する作品をとどめており、今年のアルバム『MAGIC』は未解禁のまま。その施策からは所有にこだわりたい、ミュージックビデオを商品として捉えたいという思いがみえてくるようですが、後者については前週のブログで、そして前者については下記7月12日付ブログエントリーにて私見を述べています。簡単に言えば、接触指標群を充実しても所有のそれが極度に落ちることはない、それどころか前作を上回る可能性も十分にあるため、サブスクリプションサービスおよびミュージックビデオフルバージョン双方の解禁は必須なのです。

back numberに限らず、サブスクリプションサービスやミュージックビデオフルバージョンの解禁を行っていない歌手のファンからすれば、この提案を訝しむかもしれません。しかし解禁したところで売れなくなるとは限りませんし、逆にミュージックビデオをショートバージョンにしたところで映像盤を同梱したCDが売れるかというとそうでもないことも以前記しています(Mrs.GREEN APPLE「ロマンチシズム」がトップ10ヒットに至れなったことから考える、日本におけるミュージックビデオの位置付け問題(4月21日付)参照)。訝しむ方は、自身が強いファンではない歌手の作品が解禁に不十分だった場合どういう印象を抱くかを考えてみるのがいいかもしれません。仮に怒ったり失望するのであれば、その感覚は訝しむ方が支持する歌手に向けて多くの方が放っているものと同じだということが理解出来るはずです。