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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

乃木坂46「Sing Out!」がここ最近のシングルで最もダウンした理由を考える…6月17日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

6月3~9日を集計期間とする、6月17日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートは米津玄師「海の幽霊」がデジタルダウンロード解禁、および主題歌となった映画『海獣の子供』が公開された効果もあり、首位に立ちました。

映画『海獣の子供』は最新の映画興行収入ランキングで5位に初登場。決して高い順位とは言えないかもしれませんが評判は高いと聞き、今後急激にポイントが落ちるとは考えにくいとみています。

2位には米津玄師さんが提供した菅田将暉まちがいさがし」が、ミュージックビデオ公開およびストリーミング解禁効果で浮上。3週ぶりに1万ポイントの大台を回復しました。

今回で7000ポイント超えが3週となり、前週Official髭男dism「Pretender」が3週をクリアしたときに提示した、大ヒットの基準をクリアしたことになります。

そのOfficial髭男dism「Pretender」も今週7669ポイントで4週目の7000ポイント超えを果たしており、主題歌となった映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』も最新ランキングで3位にとどまっていることやカラオケ指標が14位に上昇していることを踏まえれば、高値安定は続くものと思われます。「まちがいさがし」そして「海の幽霊」も以前の彼らの作品同様カラオケ指標が上昇することでロングヒットとなる可能性は十分あります。

 

さて今日は、前週首位を獲得した乃木坂46「Sing Out!」における異変について。

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ビルボードジャパンソングスチャートにおいてシングルCDセールスに係数が用いられるようになった2017年度以降、「Sing Out!」はシングルCDセールス指標初加算週からの順位の落ち込みが最も大きくなりました。となると、握手会等の兼ね合いによりシングルCDセールスが落ち込んだからでは?と捉えることも出来ますが、ダウン幅等が大きいのはシングルCDセールスだけではありません。

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この表は、2017年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングル表題曲の、シングルCDセールス指標初加算週および翌週の動向を示したもの(カラオケ指標は2019年度より導入されていますが、「Sing Out!」は最新週でカラオケ指標300位以内に入っていません)。2週目における順位やポイント、前週比において7曲の中で最も低いところを黄色で塗りつぶしているのですが、「Sing Out!」は総合順位、ポイント、ポイントおよびシングルCDセールスの前週比、ならびにソングスチャートを構成する8指標中4つで最も低くなっているのです。シングルCDセールス共々ストリーミングも最も低く、”所有(購入)”と”接触”の双方が高くないというのは、単に握手会の兼ね合いだけにとどまらないと思うのですが如何でしょう。

 

ここからは強い私見と前置きして書きますが、今回の「Sing Out!」はゴスペルを想起する部分が強いと思うのです。『最大の特徴は、ハンドクラップとストンプ。ゴスペルにおいても見られる力強さとしなやかさを兼ね揃えた要素であり、楽曲の心臓部分だ』(乃木坂46「Sing Out!」に隠されたメッセージとは? 横浜アリーナ公演での注目ポイントを解説 - Real Sound|リアルサウンド(5月26日付)より)という曲解説から、実際歌詞に”Stomp”が出てくることからもゴスペルへの意識は明らかかと。ゴスペルでストンプといえば長きに渡りゴスペル界を牽引するカーク・フランクリンを思い出したり。

ゴスペル(クワイア)を用いた曲は数あれど(この2年でもこんなに生まれている、"J-Pop×ゴスペル"楽曲集(2018年9月21日付)等を参照)、一方でそのゴスペル要素が強すぎると逆に敬遠される傾向も?と思ったり。特に浜崎あゆみ「Bold & Delicious」はその典型だと感じていて、ゴスペルクワイアに所属したことのある自分にとってはその本気度が伝わってきて今でも大好きな作品なのですが、ファンの評価は真逆だと聞きます。

もしかしたら「Sing Out!」もゴスペル度が思ったより高く乃木坂(アイドル)らしくない…として受け入れられなかったのか、それがライト層(その歌手の作品を決まって買うわけではない方)の所有や接触を遠ざけているのかと思うのは邪推でしょうか。

 

先に引用したリアルサウンドの記事では『これまで以上にリリースに向けた数多くの施策が打たれており、運営サイドが今回のシングルにかける意気込みがビシビシと伝わって来る』とあり、たしかにシングルCDリリース指標加算の前週(6月3日付)に9位を記録しているのはそれら施策の成果かもしれませんが、他方シングルCDリリース後の余韻がこれまで以上に醒めるのが速いというのも事実。メンバーの卒業によるものだったり、別の女性アイドルグループにおける問題が解決する見込みが低いことで女性アイドルのファン離れが起きたという可能性もゼロではないと思われ、ひとつひとつの要素をじっくり見ていかないといけないと思うのですが。