イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) オリコンの平成セールスランキングと米ビルボード60年チャート、どちらが説得力を持つか

(※追記(2023年3月31日5時30分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

一昨日のブログエントリーでも紹介した、今週オリコンが発表した”平成セールス”ランキングについて。

特に平成30年シングルランキングについて書くならば、平成30年強の歴史におけるフィジカル(主にCD)の社会への影響度に大きな差がある以上、同列に並べることはあまり意味をなさないと思うのです。それでも発表に至ったのは平成総括という現在の流れに乗ったのか等と考えたのですが、こちらのブログエントリーに深く納得したので勝手ながら紹介します(問題があれば削除します)。下記エントリー曰く、『「オリコンはそもそもレコード会社関係者や芸能事務所等に向けた業界誌である」という点にその根本がある』ということ。

一方、日本における複合指標(シングルCDセールス指標等”所有(売上)”に加えて、ストリーミングや動画再生指標等”接触”も加算)に基づくビルボードジャパンソングスチャートはその歴史が浅く、平成全体を総括することは出来ません。また以前は、シングルCDセールス指標に係数を用いなかったため売上枚数がそのまま踏襲された形であり、この10年強の合算チャートを作成すれば偏りが生じることは確かかと。その点でビルボードジャパンがオリコンランキングと対比可能なチャートを作成出来ないことを、勝手ながらもどかしくも感じています。

 

ではアメリカはどうでしょう。昨夏米ビルボードソングスチャート(Hot 100)が今の形になってからちょうど60年となったタイミングで、米ビルボードはオールタイムソングスチャート上位600曲を発表しています。一度弊ブログでも紹介していますがあらためて。

ビルボードジャパンでもこのチャート、上位100曲を紹介しています。

1958年8月4日付から2018年7月21日付までを集計したこのランキングで、上位100曲中最も古いのはトミー・エドワーズ「It's All In The Game」(47位)、最も新しいのは2017年の4曲。時代と共にチャートを構成する指標が変わっていく中で(この点については、上記で紹介したブログエントリーでも引用されている、4.音楽メディアとランキング・システム|アメリカ音楽の新しい地図|大和田 俊之|webちくまに詳しく記載されています)、にもかかわらず1958年と2017年の楽曲を同列に並べることが出来るのはなぜか。

60周年を記念し、“Hot 100”にチャートインした楽曲のオールタイムTOP100ランキングを算出した。期間は1958年8月4日~2018年7月21日で、No.1が最大値となる逆ポイント・システムを採用し、時代とともに算出方法が変化しているため、チャートにおけるターンオーバー比率を考慮し時代ごとに調整した。

米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”60周年記念 チャートイン楽曲オールタイムTOP100 | Daily News | Billboard JAPAN(2018年8月3日付)より

この”逆ポイント・システム”等の算出方法でも問題はあるかもしれませんが、しかしながら多くの方が納得出来るチャートになったのではないでしょうか。アメリカにもレコードやカセット、CDそしてデジタルダウンロードに至るまで所有(売上)の対象は変化しており、また時代によって売上枚数が異なるゆえ(特にここ数年でデジタルダウンロードは極端に減ってきました)、それだけを比べると大きな偏りが出ることでしょう。しかしソングスチャートではその開始当初からラジオとジュークボックスの指標を導入しており、これら”接触”が大きく影響して週間チャートでも突飛な動き(1週目首位、2週目100位圏外等)が出にくいものとなっていることから、オールタイムチャートを作成しても納得いくものが出来たのかもしれません。そして当初から接触に基づく指標が含まれていることを踏まえれば、米ビルボードソングスチャートは業界紙的な側面以上に、音楽に触れる人々全体へ向けたチャートとなっているのではないでしょうか。

 

ビルボードジャパンについては先程、『この10年強の合算チャートを作成すれば偏りが生じることは確か』とは書いたのですが、たとえば過去のシングルCDセールス指標に係数を用いて再計算出来たならば、米ビルボードと同じ要領でローンチ後のオールタイムソングスチャートは作れなくはない気がします。そうすればシングルCD未発売の松たか子「レット・イット・ゴー~ありのままで~」やRADWIMPS前前前世」等チャートインするはずであり、オリコン以上にリアルなチャートが出来るのではないでしょうか。大変なのは承知で、しかし取り組む価値はあるものと考えます。