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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

あいみょん、ONE OK ROCKから見えてくるストリーミング"同時解禁"の重要性…2月25日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

2月11~17日を集計期間とする2月25日付チャートが昨日発表されたビルボードジャパン。STU48「風を待つ」が高いシングルCDセールス指標を武器に、初登場で首位を射止めました。

しかしながらルックアップは4位、さらにシングルCDセールス指標がポイント全体のおよそ9割を占めていることを踏まえるに、次週の急落は必至ではないでしょうか。それを免れるためには、他指標をいかに伸ばすかが求められます。

急落といえば、2週前に首位を獲得していたジャニーズWEST「ホメチギリスト」が前週36位→今週100位圏外となってしまったことが象徴的。シングルCDセールス30位、ルックアップ15位、Twitter37位と決して成績は悪くないのですが、ラジオ300位圏外、そしてデジタル指標(デジタルダウンロード、ストリーミング、動画再生指標)はカウントなしという状況のため、特にデジタルに明るくない(言い方を変えれば認めていない)歌手にとって、ビルボードジャパンソングスチャートにおいて不利な状況といえます。

 

逆に言えば、デジタル、特にストリーミングを解禁する歌手がチャートで有利になることが、特に今週のソングスチャートから見えてきます。

あいみょんさんについては先日、最新J-WAVEチャートで彼女が打ち立てた新記録を紹介。そこでもストリーミングが大きく影響していると結論付けました。

先週リリースされたメジャーセカンドアルバム、『瞬間的シックスセンス』が最新2月25日付ビルボードジャパンアルバムチャートで2位に初登場し、前作『青春のエキサイトメント』の自己最高位(13位)を大きく上回ったのですが、アルバムリリースと同時にストリーミングを解禁したことでアルバム収録曲のストリーミングも伸び、ソングスチャートに反映されています。同じくONE OK ROCKも先週リリースのアルバム『Eye of the Storm』がアルバムチャートを制し、あいみょんさんと同じくリリースと同時のストリーミング解禁でソングスチャートトップ100内に7曲(うち「Wherever you are」のみ旧譜からの曲)がランクイン。そして最新2月25日付のストリーミングソングスチャートトップ100を見るとこの2組で33曲、実に3分の1を占めているのです。しかも2組のニューアルバムからは共に全曲がランクイン。

当週は、2月13日に最新作をリリースしたあいみょんONE OK ROCKがチャートで無双。あいみょんは、新アルバム『瞬間的シックスセンス』から収録曲全12曲を含む計17曲がトップ100入り。年明けから首位をキープし続けている「マリーゴールド」も、前週2,600,044回再生から当週は3,335,194回再生に大幅増加。自身最高記録を更新した。

またONE OK ROCKも、最新作『Eye of the Storm』から収録曲全13曲を含む計16曲がエントリー。先行配信されていた「Stand Out Fit In」「Wasted Nights」「Change」の3曲すべてがトップ10入りを果たした。

【ビルボード】「マリーゴールド」が7週連続ストリーミング首位、あいみょんが宇多田ヒカルに次ぐ快挙達成 | Daily News | Billboard JAPAN(2月20日付)より

当週のアルバムチャートの解説からも解るように、この2作はセールス的にも申し分ないのですが、ストリーミングでも十分な成績を収めていることが解ります(ちなみにビルボードジャパンアルバムチャートでは、アメリカのようにストリーミング指標はありません)。ゆえにセールス以上に作品が広く伝わったことが理解出来ます。

 

この動きは最新の米ビルボードチャートでも見られています。昨日大きな話題となった"アリアナ・グランデビートルズ以来の快挙"の件は昨日朝の段階で弊ブログで記載していますが、元来ストリーミングが強かったことに加え、アルバムリリースと同時に収録曲のストリーミングが解禁されたことでさらに数値を伸ばしています。

最新2月23日付米ビルボードソングスチャートにおいてアリアナ・グランデは、トップ50内にアルバム『Thank U, Next』から12曲全てを送り込み、うち11曲がトップ40入り、そしてトップ3を独占。 同日付ストリーミングソングスチャートを見ると、24位までに12曲が入るという状況で、これが総合ソングスチャートを牽引したのは間違いありません。

 

アメリカでは、アルバムチャート初登場のタイミングでアルバム収録曲が大挙ソングスチャートに登場する例は少なくありません。ドレイクが昨夏『Scorpion』をリリースしたタイミングでアルバムからの全25曲および客演2曲、計27曲がランクイン、昨年7月14日付ストリーミングソングスチャートではアルバム収録曲が34位までにすべて登場。ドレイクに限らずですが、アメリカにおけるストリーミングの凄さ、特にオリジナルアルバムリリース時の瞬発力とチャートでのインパクトの強さを実感します。

この潮流が日本でも起きつつあるということを今週強く感じます。ビルボードジャパンのストリーミングソングスチャートで1週間に最も多く楽曲をトップ100に送り込んだ記録をみると。

・1位 宇多田ヒカル 22曲 (2017年12月25日付)

・2位 宇多田ヒカル 19曲 (2017年12月18日付)

・3位 あいみょん 17曲 (2019年2月25日付)

     Mr.Children 17曲 (2018年5月28日付)

・5位 ONE OK ROCK 16曲 (2019年2月25日付)

【ビルボード】「マリーゴールド」が7週連続ストリーミング首位、あいみょんが宇多田ヒカルに次ぐ快挙達成 | Daily News | Billboard JAPAN(2月20日付)参照

宇多田ヒカルさんおよびMr.Childrenの場合は両者とも、過去の作品群をストリーミングで解禁してから間もなくの記録(一方で、宇多田ヒカルさんは昨年のオリジナルアルバム『初恋』の解禁は今年1月18日)であり、今回のあいみょんさんおよびONE OK ROCKはオリジナルアルバムリリース(イコールストリーミング解禁)直後の記録なのです。あいみょんさん、ONE OK ROCK共にアルバム・シングルの双方で多大なインパクトを残すことに成功したと言えるでしょう。

 

最新の日米ソングスチャートから見えてくるのは、ストリーミング利用者が増えたという聴き方の変化だけではなく、CDおよびデジタルダウンロードでの発売とストリーミングの解禁をずらさないほうがチャートを席巻出来、話題性が高まるということ。ストリーミングの収益は販売より高くないでしょうが、チャートでのインパクトも相俟って作品の認知度や歌手の人気が高まり、その結果"この人を呼べば間違いない"としてメディアやフェス運営側からのオファーが増えたり、ライブの動員数も高まる…つまり中長期な支持を集めていくようになるものと考えます。芸能事務所やレコード会社はその点を見越してストリーミングにも注力したほうがいいのではないか、というのが自分の見方です。