イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 三浦大知のチャートアクションが内容の良さに追いついていない…その原因と改善策を探る

今日は三浦大知さんのチャートアクションについて、考えてみます。

 

2016年、「Cry & Fight」が『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で生披露されて以降、三浦大知さんが広く世間に認知されているように思います。ブレイクして以降も、シングルおよびアルバムにおいて"攻め"の姿勢を崩さず、好事家やコアなファンをも唸らせ続けているように感じています。

しかしながら、コンセプトアルバム『球体』(2018)が音楽評論家や歌手仲間からも賞賛され、『球体』に次いでプロデューサーのNao'ymt氏と組んだベストアルバム後初のシングル「Be Myself」も高い評判を集めながら、複合指標で構成されるビルボードジャパンソングスチャートにおいては奮っていないように見え、個人的には残念に思うのです。「Be Myself」は最新9月17日付で50位以内をキープしていますが、現段階での最高は11位とトップ10入りを逃しています。また『球体』は7月23日付でビルボードジャパンアルバムチャートで初登場4位を記録し、以降31→58→57→84→83→82位と推移。9月3日付を最後にトップ100から姿を消しました。

好い作品がより高い地位を獲得してさらなる広がりをみせる…三浦大知さんならもっともっと高みにいける気がしてならないというのが、厳しいながらも私見。ならば、より高みに立つ方法を考えてみたいと思い、ブレイク直前のシングル以降の動きを見てみることにします。

 

※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・各指標

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生。

 ・各指標毎順位における[-]はランク圏外、[ ](ブランク)はランクインせず。これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

 

・「music」(2015年6月17日発売、同年5月22日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2015/6/22           54  
2015/6/29     17 12 97   13 34 13  
2015/7/6   94   53 68 60  
2015/7/13     89 61  

※2015年6月29日付で50位以内ではありますが総合ポイントは表示されず

 

・「Cry & Fight」(2016年3月30日発売、同年3月8日ミュージックビデオ公開、同月19日ダンスビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2016/4/4         100   75
2016/4/11 2467   8 9 96   8 31 43
2016/4/18 878 35.6% 50 66   13 56 75
2016/4/25     97   51 76 99  

 

・「(RE)PLAY」(2016年11月23日発売、同年11月3日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2016/11/28         71   36
2016/12/5 3565   12 10 87   10 31 13 40
2016/12/12 1663 46.6% 28 69 64   24 73 18 64
2016/12/19     87   75 73

 

・「EXCITE」(2017年1月18日発売、2016年12月27日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2017/1/23 991   49   77   40   91 26
2017/1/30 7356 742.3% 2 1 2 54 22 4 16 22
2017/2/6 4289 58.3% 9 15 7 37 14 12 15 17
2017/2/13 3710 86.5% 9 21 7 37 73 13 6 20

 

・「U」(2017年8月2日発売、同年7月12日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2017/8/7         47   46  
2017/8/14 3659   8 7 29   3 13 13
2017/8/21 1297 35.4% 42 45 47   13 26 93
2017/8/28     76 78 89   27 28  

 

・「普通の今夜のことを ー let tonight be forever remembered ー」(2017年9月27日配信先行発売(2018年3月6日発売ベストアルバム『BEST』収録)、2017年12月7日リリックビデオ公開(現在は削除)、2018年3月6日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2017/10/2                
2017/10/9 1250   32   11 35   73  
2017/10/16   77   98 14    
2017/10/23       35    

 

・「DIVE!」(2018年2月21日配信先行発売(2018年3月6日発売ベストアルバム『BEST』収録)、同年2月21日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2018/3/5     62   29   63   32
2018/3/12     66   82 18   81
2018/3/19 1253   38   4   65
2018/3/26 1168 93.2% 39   58 11   100
2018/4/2     87   94 22    

 

・「Be Myself」(2018年8月22日発売、同年8月1日ミュージックビデオ公開)

        各指標毎順位
日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
2018/8/27     99       15   55
2018/9/3 3688   11 12 12 2 14 52
2018/9/10 1961 53.2% 27 66 47 55 3 23
2018/9/17 969 49.4% 46 89 72 14 34  

 

「Cry & Fight」は『ミュージックステーション』出演後にチャートアクションが再興したため、シングルCD発売当初のリアクションは「music」と似た流れとなっています。また「EXCITE」は『仮面ライダーエグゼイド』(テレビ朝日)主題歌ということでシングルCDやデジタルダウンロードといったセールスが強いという、他にはない現象が生まれています。

 

さて、三浦大知さんのチャートアクションをチェックしてみるといくつかの特徴がみえてきます。まずは好い点から。

・ラジオエアプレイが常時、非常に高い

ラジオエアプレイはリクエストも影響するとはいえ、ラジオスタッフのセレクトという側面が大きく、耳の肥えた方や好事家が彼の良さを拡げていると言えます。「Be Myself」における2週連続での同指標トップ3入りは、ブレイク後も揺るがない彼のスタンスをラジオ局が支持し続けていることの現れかと。

・総合順位に比べてルックアップが高い

シングルCDを購入、もしくはレンタルしてパソコンに取り込む人が多いのは、テレビでのパフォーマンスに魅了された方が彼の音楽をきちんと後追いしようとする姿勢の表れと言えるでしょう。

 

他方、気になる点はこちら。

・シングルCDセールスの失速に比例してランクダウンしてしまう

「Be Myself」の初動(シングルCD発売週の)セールスは12634で、「U」の16156から低下しています(Billboard Japan Top Singles Salesより)。最新作はシングルCDセールス3週目で早くもランク圏外になってしまっていますが、それに比例するかのように総合チャートもダウンしています。他指標、特にデジタル部門が低くシングルCDセールスを補完出来ないゆえ、シングルCDセールスが反映された最初の週により高い位置に立てず、またロングヒットに至れていないと思うのです。フィジカル(CDやアナログというパッケージ)での購入の多さとダウンロードやストリーミングの少なさという乖離が大きければ大きいほど社会的なヒットとはいえない、もしくはコアなファンとライト層で隔たりがあるように考えます。

 

そして、デジタルにおいてはこちらも当てはまります。

・動画再生指標が異常なまでに低い

三浦大知さんといえばダンス、そしてダンスしながら歌がブレない…そんな認識はこの2年程でファンならずとも多くの方に広がったと思います。その、常に素晴らしいダンスを披露しているという印象を与えるにはテレビ番組の出演もさることながら、YouTube等動画掲載の力も圧倒的なはずで、先述した「Cry & Fight」はミュージックビデオよりダンスビデオのほうがより多くの再生回数を獲得しているのも納得です。しかしながらその「Cry & Fight」ですら動画再生指標の順位は極めて低いのです(同指標の最高位は2017年10月30日付の8位。しかしトップ50入りはその8位を含め5週、トップ10となると1週しかありません)。しかも最新曲において、同指標がランク圏外ならばまだしも(無論それも問題ですが)、最新9月17日付においては「Be Myself」の動画再生指標が"チャートインせず"というのはあまりにも…という違和感が拭えません。

動画再生指標の低さはなぜかを考えるに、①シングルCD発売と動画公開にタイムラグがある、②ミュージックビデオがショートバージョンであり曲の終わりまで公開されていない、③YouTube公式チャンネルが歌手個人ではなくレコード会社名義となっている…これらが要因かもしれません。③においては"三浦大知さんの映像が見たい"という欲求を満たす際、検索の(若干の)妨げになりかねません。②のショートバージョンについては、フルバージョンを収録した映像盤を同梱したシングルCD購入への誘導を目的としているのでしょうが、シングルCDセールスの動向を踏まえれば誘導出来ているかは疑問であり、またフルバージョンで公開したほうが潔いと好感を抱かれることでしょう。そして①については、レコード会社や歌手側が戦略的なプロモーションを持てているかが疑問。対照的に、プロモーションを完璧に仕上げ、シングルCD未発売ながら2週連続で首位を獲得した星野源「アイデア」の戦略を参照にしてほしいと思うのです。デジタルダウンロードと同日にミュージックビデオを解禁したり、歌手名と曲名をひとつのツイートにつけて曲の感想をと促したり…星野源さんサイドのマーケティング力はすべての歌手が見習うべきと考えます。

『おげんさんといっしょ』(NHK総合 三浦大知さんが出演した第2弾は8月20日放送)では、「アイデア」と同週にリリースした「Be Myself」は披露していないものの、「DIVE!」は披露しています。しかし三浦大知さんのTwitter公式アカウントでは番組放送前後に「DIVE!」のミュージックビデオのリンクは貼られておらず、勿体無いと思ってしまうのです。

 

上記で取り上げた楽曲に加え、ここ2作のオリジナルアルバムである『HIT』(2017)からの先行曲「Darkest Before Dawn」および『球体』(2018)からラジオで最も流れていると思しき「飛行船」が(総合)ソングスチャートに入っていない模様であることも疑問。前者においてはミュージックビデオが作られ、テレビ番組で披露されているにもかかわらず、なのです。また後者はアルバム発売までその全貌を明かさない、事前情報なしで舞台を観てほしい且つリリース時に情報を解禁するという姿勢が貫かれていましたが、せめて「飛行船」だけでも、リリース後でもいいので映像を解禁し(この場合"ミュージックビデオ"と表現するのは適切ではないかもしれませんが)、その音世界を多角的に提示したほうがより広がったと思うのです。映像がアルバムのティーザーだけというのは勿体無い気がします。

『球体』においては、レンタルCDスペースに販売用CDを同列に並べ、同梱の映像盤をポータブルプレイヤーで流し、レンタルで気に入ったら購入へ…と店舗で促すのもアリだったと思うのです。映像盤のレンタルは基本的に禁止されていますが、映像盤を貸し出さずとも同列に並べること自体はレコード会社や歌手側とレンタルCDチェーンとのやり取りで出来たことではないでしょうか。

 

 

素晴らしい作品群を次々に輩出していながら、個人的にはその成果をもっと上に押し上げることが出来たのでは?という思いに駆られています。余計なお世話かもしれませんがしかし、チャートが低いより高いに越したことないですよね(実際、「EXCITE」がシングルCDセールス指標を制したことで1位という実績が生じ、“(さらなる)箔がついた”とも言えるわけで)。先週になって『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の出場歌手予想記事が出ていますが、チャート成績をみる限り三浦大知さんが当落線上にいる気がするのです。ベストアルバムのヒットやNHKへの貢献度(『おげんさんといっしょ』『鶴瓶の家族に乾杯』への出演等)でおそらく今年は大丈夫だと踏んでいますが、チャート上でこれぞ!という曲を提示し、余裕で『紅白』へ行けるようなアクションを起こすべく、マーケティングを綿密に行ってほしいと切に願います。

そのためには、たとえば三浦大知さんのTwitter公式アカウントがもっと更新を増やしてほしいのですがスタッフの増員が必要になるでしょうし、マーケティングについても短期間で見直すのは難しいかも知れません。ならば、前者においては三浦大知さんのファンがTwitterSNSで、公式の役割を補完するのはどうでしょう。

 

上記ツイートは自分が一昨日つぶやいた内容なのですが、たとえばこういったものを今日放送の『ミュージックステーション ウルトラFES 2018』(テレビ朝日)のパフォーマンス中に投下するのもひとつの策かと。三浦大知さんのパフォーマンスを観て興味を抱いた方を誘導する(言葉はよくないかもしれませんが、早々に囲い込み、いわゆる"沼"へ誘う)、その仕組みを公式ではなくファンが作り上げるのです。

これは自分が昔から思うことですが、最上級レベルに興味を示したこと以外はなかなか自ら調べようとしない人が多い気がします(無論自分もそのひとりですが)。自分は以前、あるコミュニティ内におけるSNSやチャットのやり取りで、話題になった出来事がなかなか検索されない現状にヤキモキして率先して検索結果を提示したところ、検索魔たる称号をいただいてしまったことがあるのですが、逆に言えばそれだけやらないとその人はすぐ、次に沸いた興味で前のをかき消してしまうのです。ゆえに、それを食い止めるために代理検索結果提示をファンが行うのが好いと考えます。リンク先のYouTubeをフルで観たり定額制音楽配信サービスで聴いたり、またダウンロードに至ればそのひとつひとつがビルボードジャパンソングスチャートを押し上げることになるわけです。上記の自分のつぶやきは堅苦しいかもしれませんし、またコアなファンが熱狂的すぎればすぎるほど周囲が距離を置きかねないという問題もあるかもしれませんので(しかしそれはどの歌手にファンについても言えることですね)、"気付いたときには沼"たる極々自然なツイートを考えてみることをお勧めします。このやり方はテレビ出演時に限らず、シングルCDの発売日やミュージックビデオ解禁日にも使えると思いますので、一度ファンが同時多発的に行ってみるのも一案だと考えています。

 

ちなみに「Look what you did」はシングル「(RE)PLAY」(2016)のカップリングゆえ、シングルCDを購入してもシングルCDセールス指標のポイントは「(RE)PLAY」に入ることになります。ただ、現在の社会の傾向として、テレビ等で感化された人たちの消費行動はシングルCDよりデジタルに移行しており、カップリング曲がシングル表題曲より上位に来ることはAKB48「365日の紙飛行機」で証明されています。今日のテレビ出演を機に、そしてファンの誘導行動も相俟って「Look what you did」が伸び、今日からの1週間を集計期間とする10月1日付のビルボードジャパンソングスチャート(9月26日水曜発表)にランクインしたら非常に面白いことになるかと。それがレコード会社や所属事務所といったスタッフサイドに刺激を与え、マーケティングに本腰を入れるきっかけになるかもしれませんね。

 

 

※追記 (13:37)

動画再生指標の低さについて3つの理由を記載しましたが、もうひとつありましたので追記。それが、"ISRC"が動画にきちんと登録されているか?ということ。ISRCについてはビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPAN内、【YouTubeについて ①YouTubeでの動画再生回数はどのように集計していますか。】にて説明されていますのでご参照ください。たとえば安室奈美恵「Golden Touch」(アルバム『_genic』(2015)収録)のミュージックビデオが話題になりながらも動画がカウント対象にならなかったのも、ISRCの非採番が理由でした。

「Look what you did」のリリースは先述した『_genic』の1年半後であること、またレコード会社が動画をアップしているゆえ抜かりはないと思うのですが、その点が少しだけ心配ではあります。ただ、仮に動画がビルボードジャパンにおける動画指標のカウント対象外だとしても、動画を観てもらいあらためて三浦大知さんの才能の凄さを知ってもらうべく誘導行動することは有効だと考えます。