遅ればせながら、グラミー賞について。
第60回グラミー賞、ブルーノ・マーズが最多の6冠に! 主要4部門中3部門を制覇、6ノミネート全てを受賞するなど席巻。ケンドリック・ラマ-はラップ部門を総なめするも、またも主要部門での受賞を逃す形に。また、ジェイ・ZやSZA、カリードらが無冠に終わりました。 [NEWS] https://t.co/tZeNR1Dw3H pic.twitter.com/HOd0GQvYZM
— bmr (@bmr_jp) 2018年1月29日
個人的ながら、主要4部門を予想して10年以上経つのですが、今年のような全敗は記憶にありません。ケンドリック・ラマーなどのヒップホップアクトが受賞するものと考えた身には、特に(極々私的ながら)ランニングしながら何十回も聴いたはずのブルーノ・マーズ『24K Magic』を軽視したことが本当に申し訳なく思うのです。
ブルーノ・マーズは以前、マーク・ロンソンに客演参加した「Uptown Funk!」で一昨年の最優秀レコード賞を受賞しているのですが、主演作で主要部門制覇となると初の快挙に。そして『24K Magic』においては驚くべきことに、先行シングルもしくはシングルカットされ米ビルボードソングスチャートトップ10入りした曲の全てに、プロデューサーチームのステレオタイプスが参加しているのです。全体のプロデュースはブルーノ等のチームが手掛けているのですが、要所要所でのステレオタイプスの的確な仕事っぷりが、アルバムをより輝かしいものにし、シングル群のヒットがアルバムをより注目させるための武器になったのは間違いありません。
このステレオタイプス、現在はレイ・チャールズ・マクロウ2世を含む4名の模様。そして上記bmrでの紹介記事を解るように、多様な人種による構成なのが興味深いところ。ブルーノ・マーズも、今作こそソウルに寄った内容でしたが、両親の出自を踏まえると多様な音楽を奏でるのは自然なことでしょう(ブルーノについてもbmrに詳しく記載さていますので是非)。大袈裟かもしれませんが、『24K Magic』の受賞は、ある種"多様性の評価"と捉えていいのかもしれません。
そんなステレオタイプスはこれまでにもヒット曲を多数手掛けています。公式プロフィールによると。
The Stereotypes are behind the likes of Justin Bieber’s platinum-selling “Somebody to Love” [feat. Usher], Ne-Yo’s Year of the Gentleman, Mary J. Blige’s “Good Love,” Chris Brown’s “Beg For It,” “Fifth Harmony’s “Deliver,” Lil Yachty’s “Better,” Iggy Azalea “Mo Bounce” and many more.
そして最新のヒットはやはり、ブルーノ・マーズ「Finesse」の、カーディ・Bを新たに客演に迎えたリミックス。ニュージャックスウィング感、80年代後半から90年代前半の空気感がより濃く出ている素晴らしい仕事っぷりです。
で、面白いのはこのステレオタイプスが制作する音楽はR&Bにとどまっていないということ。ポップス、そしてアジア圏にも広く進出しているのです。出世作からして、アジア系アメリカ人(日本と中国のミックス、韓国系およびフィリピン系)のメンバーで構成されたファーイースト・ムーヴメントによる、ライアン・テダーをフィーチャーした「Rockereer」(2010 全米7位)ですし。
ステレオタイプスの制作曲をみると、2015年頃からのアジア系歌手へのプロデュースが顕著になっています。その中には以前ここで取り上げたものも少なくありません。
他にもK-Popでは。
そして日本でも。
赤西仁さんについては2012年、「Sun Burns Down」で既にタッグを組んでおり、赤西さんが前事務所から独立して以降も「Fill Me Up」(2017)という素晴らしいアップを提供。そして三浦大知さんとは「U」(2017)を含む3曲のタッグにとどまっていますが、以降も増えるのではないかという予感がします。なにより三浦さんはグラミー賞への意欲を以前から語っていた印象があり、今後世界進出を視野に入れる中で、グラミー賞作品を手掛けたステレオタイプスと再度タッグを組むのは間違いないでしょう。
今回取り上げた曲群を踏まえるに、ステレオタイプスが作る音楽ジャンルは多彩、それでいて激的なまでにキャッチーなんですよね(ゆえにブルーノ・マーズの補佐としての参加はブラッシュアップを目的としたものかもしれません)。今後どれだけの作品を世界に轟かせるか注目したいところ、そして彼らの存在が、作り手や歌い手の人種や出自等に関係なく、"いいものはいい"という考え方を世にもたらしてくれるものと期待します。