イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ミュージックステーション【今年の1曲ランキング】が示した”リアルなヒット曲”

先週金曜放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系 金曜20時)の中で、【街で聞いた今年の1曲ランキング】が紹介されていました。そのランキングが非常に面白かったのでこちらで取り上げてみます。

トップ10はこちら。

1位 ピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」

2位 星野源「恋」

3位 RADWIMPS前前前世

4位 SMAP世界に一つだけの花

5位 安室奈美恵「Hero」

6位 宇多田ヒカル花束を君に

7位 桐谷健太(浦島太郎)「海の声

8位 AKB48365日の紙飛行機

9位 RADIO FISH「PERFECT HUMAN」

10位 欅坂46サイレントマジョリティー」

メディアとのタイアップによるヒットも少なくない中、ピコ太郎が制しました。そのピコ太郎紹介時における番組テロップが”10/7配信”となっていて、シングルCDじゃないの?と思った方も少なからずいらっしゃったかもしれません。実際この曲は、今週リリースされるアルバムにて初のフィジカル化を果たすのです。

実は今回のチャート、そういう作品が少なくないのです。そこでこのランキングに、発売およびチャート最高順位の情報を補足してみます。

※順位はビルボードジャパンHot100/オリコンシングルチャート(いずれも週間ランキング最高位)

1位 ピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」

 →10/7配信開始(12/7アルバム発売により初CD化)

  ビルボードジャパン1位/オリコン

2位 星野源「恋」

 →10/5シングルCD発売

  ビルボードジャパン1位/オリコン2位

3位 RADWIMPS前前前世

 →8/24アルバム発売(シングルCD化せず)

  ビルボードジャパン1位/オリコン

4位 SMAP世界に一つだけの花

 →2002/7/24アルバム発売→2003/3/5シングルCD化

  ビルボードジャパン2位/オリコン3位(2016年度分)

5位 安室奈美恵「Hero」

 →7/27シングルCD発売

  ビルボードジャパン3位/オリコン6位

6位 宇多田ヒカル花束を君に

 →4/15配信開始(9/28アルバム発売により初CD化)

  ビルボードジャパン2位/オリコン

7位 桐谷健太(浦島太郎)「海の声

 →2015/7/31限定配信、2015/12/2配信

  (2016/9/28アルバム発売により初CD化)

  ビルボードジャパン3位/オリコン

8位 AKB48365日の紙飛行機

 →2015/12/9シングルCD発売

  (「唇にBe My Baby」のカップリング)

  ビルボードジャパン6位(「365日の…」において

  /オリコン1位(「唇に...」において)

9位 RADIO FISH「PERFECT HUMAN」

 →2015/12/23配信(2016/5/25アルバム発売により初CD化)

  ビルボードジャパン3位/オリコン

10位 欅坂46サイレントマジョリティー」

 →4/6シングルCD発売

  ビルボードジャパン1位/オリコン1位

ここから分かることは以下の通り。

 

① シングルCDとしてリリースされた曲が半分(以下)しかない

AKB48365日の紙飛行機」はカップリングでシングル表題曲ではないため、同曲をカウントしないならばオリコンシングルチャートランクインは4曲しかありません。しかも「世界に一つだけの花」は2003年のシングルCD化ゆえそれも除けばこの1年のシングルCD発売曲がわずか3曲に。シングルCD市場が形骸化し、オリコンシングルチャートが今のヒットを示す鑑になっていないことが証明されたように思います。

(ただ、”形骸化”と書いたものの、今回オリコンシングルチャートを振り返って実感したのは、特にアイドル、K-POPLDH一派およびアニメ関連が毎週のようにチャート上位を占めており、彼らにとってはシングルCDセールスが大きな意味を持つだろうということ。他方、宇多田ヒカルさんが「花束を君に」「真夏の通り雨」を、またオリコンシングルチャートで48作連続1位を記録中のB'zが、今年は「世界はあなたの色になる」「フキアレナサイ」の2曲を共に配信シングルとしてリリースしているなど、先述したジャンル以外の歌手はシングルCDを出さない傾向も強まっているのかもしれません。いわば二極化が発生しているのは鮮明ですね。)

 

NHK紅白歌合戦は社会的なヒットを反映した人選に

紅白出場歌手は7組、未出場は(今のところ)ピコ太郎さん、SMAPおよび安室奈美恵さんのみ。そのうちピコ太郎さんは企画等での登場が予想されます。なお、「365日の紙飛行機」は昨年NMB48で既に披露しているため、今年披露するかは不明です。

紅白歌合戦については大物の不在を嘆く声も聞こえますが、今回の”街の声”チャートが発表されたことで、紅白歌合戦はより社会的ヒットを重視した選出基準になっていることハッキリしました。というか、以前述べた私見が当たったような気が。

(ただ、”街の声”について、サンプル数がどのくらいか提示されていなかったはずで、その不明瞭さに疑問を抱いてもいます。)

また、嘆く声というか、不満を噴出する人の中には視聴率が下がるだろうと言う方もいらっしゃるようです。ただこの秋から、タイムシフト測定および総合視聴率の概念が視聴率に取り入れられたことで、これまでの(リアルタイム)視聴率に制作側がこだわりすぎなくなったのかなとも考えています。紅白歌合戦ガキの使い…を両天秤にかけてどちらかをリアルタイム、どちらかをタイムシフトとする人が多いと聞きますので、両番組とも総合視聴率が伸びる気がしますし、NHKはそこを見据えているように考えます。

 

 

今回、ミュージックステーションによる【今年の1曲ランキング】発表で、リアルなヒット曲とは何かが明確化しました。今月発表されるビルボードジャパンおよびオリコンの年間シングルチャートと比べてみれば、どちらが社会的なヒットに近いか分かるはずです。

個人的には、ビルボードジャパンのチャートがもっとメディアで露出されないといけないと思いますし、同チャートが昨年6月以来のリニューアル(チャートポリシー変更)を施すならば、シングルCDセールスの比率をもう少し下げてもよいのではないかと。シングルCDの初週セールスの大きさを反映してアイドル等が初登場で最上位にランクインすることが多いものの、実際に社会的なヒットにつながることがほとんどないことを踏まえれば、配信やYouTube等の比重を増大しても差し支えないと思うのです。