イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米シングルチャート、「Closer」連続首位を阻んだマネキン・チャレンジ曲

ビルボードシングルチャートを定点観測。日本時間の火曜早朝に発表された、11月26日付最新チャート。ザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」の13週目の首位を阻んだのは、 "マネキン・チャレンジ"ムーブメントを代表する一曲、レイ・シュリマー feat. グッチ・メイン「Black Beatles」でした。最新チャートについての詳細は下記をご参照ください(トップ10カウントダウン動画もあります)。

前週の9位から一気に首位へと駆け上がった「Black Beatles」。勢いづけるきっかけとなったマネキン・チャレンジについては過去のエントリーを参照していただきたいのですが、後にあの"本家"ビートルズ、ポール・マッカトニーも挑戦したというのですから驚きです。

ポールは近年、カニエ・ウェストやリアーナとの共演曲もリリースしており、ヒップホップをきちんと理解し歓迎している方なんだろうなあと実感します。ポールがマネキン・チャレンジに参戦したのは11月10日。デジタルダウンロードとストリーミングの1週間の締め日にあたる木曜日であることから、ポールの挑戦を見て購入等した方もきっと多いことでしょう。ゆえにこの「Black Beatles」の2種目での指標がとんでもないことに。

 

「Black Beatles」、デジタルダウンロードは前週16位からの首位到達で、144,000ダウンロードを記録(前週比320%)。ストリーミング(前週5位)も4,330万回再生により前週比122%を記録して首位となり、ラジオエアプレイ以外の2指標を制覇。YouTubeでの再生回数は前週からおよそ2.4倍というのですから、如何にマネキン・チャレンジの元曲を多くの人が追いかけているかが解ります。一方のラジオエアプレイでは「Closer」(今週総合2位)が未だ首位を記録しているのに対し、「Black Beatles」は同部門で44位(に初登場)。「Closer」の8分の1のエアプレイ数で総合チャートを制したということを踏まえれば、「Black Beatles」がインターネット、SNS発のヒットだったと断言していいでしょう。

この曲により、兄弟ラップデュオのレイ・シュリマー、グッチ・メイン共に初の1位がもたらされたわけですが、ソングライトを彼らと共に担当し、且つプロデュースも行ったマイク・ウィル・メイド・イットにとっても、プロデュース曲が初の1位に。マイクにとってはマイリー・サイラス「We Can't Stop」(2013)が最高2位だったため、彼にとっても悲願だったわけです。本当にめでたい事づくし、ですね。

ちなみにこの曲の名前に用いられているビートルズにも新たな記録が。歌い手として、および歌手名が用いられている曲として、その双方で1位を獲得した最初の歌手となりました。ちなみにローリング・ストーンズの場合はフロントマンのミック・ジャガーが、マルーン5クリスティーナ・アギレラによる首位獲得曲「Moves Like Jagger」にその名を用いられていますが、"ローリング・ストーンズ"が曲名に用いられたもので1位を獲得した曲はありません。

 

 

レイ・シュリマーはこの1位獲得の喜びをビルボードにて表明。

一方、連続首位獲得週が12週で途切れてしまったザ・チェインスモーカーズはツイッターで彼らを祝福。

デュオからデュオへ、しかも共に客演者1名という構図の曲での首位引き継ぎというのはなかなか面白いなと。ちなみに同週の米ビルボードアルバムチャートでは、レイ・シュリマー『Sremmlife 2』が前週21位から5位に、ザ・チェインスモーカーズ『Collage (EP)』が初登場で6位に...とこちらも並んでいます。なお今週アルバムチャートを制したのは ボン・ジョヴィ『This House』でした。

 

 

「Black Beatles」から見えるのは、ここ最近のヒットを生む源はインターネット、特にSNSだということ。日本ではなかなかない動きに映るかもしれませんがそんなことは決してなく、現段階で最新となる11月14日付ビルボードジャパンHot 100ではピコ太郎「ペンパイナッポーアッポーペン」が制覇。シングルCDをリリースしていないにもかかわらずここまでのヒットというのは凄いことですし、2位の星野源「恋」はドラマおよび"恋ダンス"の相乗効果でこちらもネット(口コミやYouTube)から火が付いたと言えるでしょう。シングルセールス、それもCDのみのチャートでは見えにくい(見えない)ヒット曲と言えます。アメリカの場合はムーブメントがきちんとデジタルダウンロード(セールス)にも反映されているので、日本でもきちんと売上にフィードバック出来るようになればより好いと思いますが、まずはビルボードジャパンのチャートがより知られるようになればなという思いが強くあります。