イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボード・ジャパンとオリコン、双方の不明瞭な応対に触れる

不明瞭というより、不可解という表現のほうが近いかもしれません。それは、AKB48のシングル「君はメロディー」について調査している際に発覚したものです。

 

先週発売された「君はメロディー」はビッグセールスとなりました。

人気アイドルグループ・AKB48の43rdシングル「君はメロディー」(9日発売)が初週123.8万枚を売り上げ、3/21付週間シングルランキング1位に初登場。

【オリコン】AKB48、OG参加10周年記念曲1位 24作連続25作目ミリオン | ORICON STYLE(3月15日付)より

AKB48の10周年記念シングルとなり、卒業メンバーも参加して話題を呼んでいる「君はメロディー」。11形態で発売されたシングルの売上は総計141.8万枚をマークし、他楽曲に圧倒的なセールス差を付けて総合JAPAN Hot100で首位を獲得した。

AKB48「君はメロディー」、141.8万枚を売り上げ、ビルボード総合首位 | Daily News | Billboard JAPAN(3月16日付)より

前作、「唇にBe My Baby」の初週売上はオリコンが905,490枚、一方サウンドスキャンのデータを使用するビルボード・ジャパンは185,773枚であり、ビルボード・ジャパンでは実に123万枚以上も大幅アップしているのです(売上データは[音楽]480・AKB48「唇にBe My Baby」ヒット検証 - 夢の枕木たち〜私を支える音楽と言葉(2015年12月16日付)より)。複合指標に基づくビルボード・ジャパンでは、使用するセールスチャートにおいてこれまでは劇場盤をカウント対象外にしていましたが(その点については以前、AKB48の初週ミリオン”未達”をどう見るか(2015年12月16日付)にて掲載)、今作からはほぼ間違いなく劇場盤も対象になっているように思われます。これについて強い疑問…というより、はっきり言って不信感が生まれた次第です。

劇場盤のカウントを対象にしたということ自体を問題視するものではありません。そのカウント対象への移行が"いつから行われたかがはっきり示されていないのでは?"というのが問題なのです。こういったポリシー変更は前もって発表されないとおかしく、またビルボード・ジャパンではこれまで指標追加等ポリシー変更の度に事前アナウンスがあったはずです。

セールスについてのビルボード・ジャパンの考えをあらためて確認してみると。

サウンドスキャンのフィジカルセールスと他社の違いは何ですか。

サウンドスキャンジャパンでは、パッケージ売上の85%強を占める小売店とEコマースサイトのPOSデータから「全国推定売上枚数」を算出します。ライブ会場での販売については、小売店によるPOSデータは集計していますが、マネジメント等による直接販売は同データが得られないため、推定対象にしていません。

ビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANより(3月17日段階での文言を引用)

この文言からは、劇場盤は『マネジメント等による直接販売』であり、よって『推定対象』にしていない(という以前のポリシーのままだ)と受け取ることが出来、ゆえに今回の大幅増は納得出来るものではないのです。実際にポリシー変更があったかどうか、きちんとビルボード・ジャパンは示す必要があります。いや既に発表しておりこちらの確認漏れだと言われればそれまでなのですが、ならばわかりやすい(見つけやすい)形で提示していただきたいと強く願います。おそらくはSpecial | Billboard JAPAN欄にあるのでしょうが(先に引用した"ビルボードジャパンの自問自答"もSpecialの項目にありました)、非常に見つけにくいものとなっています。見つけにくさを"誤魔化すために隠した"と捉える人も少なくないでしょうから、見つけやすさはその不信感を取り除く意味でも必須事項です。その点をしっかりしていただきたいものです。

また、オリコン等の定点観測を実施しているブログとビルボード・ジャパンとではCDの"形態数"も異なっておりこの点にも疑問が生じています。ビルボード・ジャパン側では1形態多くなっているんですよね。

*1位…AKB48 「君はメロディー」

初動123.8万枚

週間初登場1位。東京の秋葉原を中心に活動するアイドルグループ・AKB48のシングル。一般流通10種リリースで、「キャラアニ.com」で個別握手券付き劇場盤を販売。

AKB48、初動123万枚でオリコン週間1位!カントリー・ガールズが自己最高の2位! - 16/03/21付 オリコン週間シングルランキング結果速報 - The Natsu Style(3月15日付)より

 

 

さて、今取り上げたThe Natsu Styleのトップページに【重要】と大きく銘打ったエントリーのリンクがありました。このリンク先を見て個人的に強い衝撃を受けたので、一部引用させていただきます。

当サイトでは2016年2月22日〜2016年3月15日までの間、今後の「オリコンランキング」に関連する記事につきまして、オリコン株式会社様からの改善要求を受け、協議をいたしました。協議の結果、2016年3月16日以降の「オリコンランキング」に関連する記事につきましては、以下の【オリコン株式会社様からの改善要求】を反映した内容を掲載することになりました。

 

ここに詳細をご報告させていただきます。

 

オリコン株式会社様からの改善要求】※2016年3月16日から反映

(1) 必ず一般向けオリコンHP掲載後に記事掲載すること

(2) 千枚単位に丸めて売上枚数を使用すること

(3) ワースト記録などに関するネガティブな記事掲載を自粛すること

(4) 「年間ランキングの暫定順位」更新を中止すること

(5) 「デイリーランキング」引用範囲を30位までに制限すること

(6) 「週間ランキング」引用範囲を50位までに制限すること

(7) ORICON STYLEオリコンサイトのスクリーンショットの掲載を中止すること

 

(中略)

 

なお、改善要望点を守らない場合には、データの使用・掲載状況に基づき、オリコン株式会社様の判断にて適宜対応を検討するとの連絡がありました。(オリコンランキングをブログやTwitterなどで引用等されている方は、今後注意された方が良いと思われます。)

【重要】2016年3月16日以降の「オリコンランキング」に関する記事掲載について - The Natsu Style(3月16日付)より

オリコンの言わんとしていることがまったくもって理解出来ないというわけではありません。が、オリコンチャートが掲載された雑誌がこの春で休刊し(『オリ★スタ』休刊で音楽業界は好転する可能性(1月29日付)にて記載)、現在のオリコンホームページが改善されない限りはシングルおよびアルバムの週間セールスチャートにおける51位以下の動向が、ネット有料会員でなければ見られなくなるという"閉じた”状況になるのです。引用範囲を制限させるのであれば、まずはオリコン側が"開かれた"状態にならないと(少なくとも休刊する『オリ★スタ』同様にホームページ上で100位まで掲載しなければ)いけないのではないでしょうか。特にオリコンホームページ掲載後の記事掲載を求めるという自社ホームページ優先という意向を持ち合わせているのならば尚の事です。守れない場合のオリコンによる”適宜対応”というのも気になって仕方ありません。

 

 

「君はメロディー」を起点として発覚したビルボード・ジャパンオリコン双方の不明瞭な応対。きちんと疑問やニーズに応え、”開かれた”チャートであることを示さない限り、市井のチャートに対する不信感は募るばかりではないでしょうか。その不信感が、日本の音楽(業界)そのものの未来すら潰してしまいかねないものとすら考えている自分がいます。