イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「復活LOVE」について個人的に思うこと

先月リリースされた嵐のシングル、「復活LOVE」がセールスチャートのみならず他指標においても大ヒットしています。先週発表されたオリコンBillboard JAPAN両チャートでは1位を獲得しました。

【オリコン】嵐、達郎&まりや夫妻提供曲1位 初動前作超え48.5万枚 | ORICON STYLE(3月1日付)

嵐「復活LOVE」、約50万枚を売り上げ、3部門で1位、ビルボード総合首位獲得 | Daily News | Billboard JAPAN(3月2日付)

Billboard JAPANによると『他データでもストリーミング、ルックアップ、Twitterでも1位』(上記記事より)とのこと。ジャニーズ事務所所属歌手でストリーミング?と思ったのですが、『定額制音楽配信サービス「dヒッツ」で独占配信された』(下記記事より)ことがストリーミングチャートを制した理由だそう。実はこの「復活LOVE」、ストリーミングをはじめ、嵐にとって画期的な取り組みがいくつもあった...と、音楽ライターの柴那典氏が述べています。

 

柴氏が最初の理由に掲げているシンガーソングライターからの曲提供、自分はその点に強い疑問を抱いていました。昨年のアルバムタイトル曲で布袋寅泰さんを起用したことから、嵐は職業作詞・作曲家から曲提供を受けるという既定路線を変えるのかと思っていたのですが、「復活LOVE」の初回限定盤および通常盤に収められた他4曲のクレジットを見るに路線変更はないといっていいでしょう(「復活LOVE」Wikipedia参照)。

それではどうしてこのタイミングで、山下達郎竹内まりや両氏から曲提供を受け「復活LOVE」をリリースしたのか?…と考えるうちに、ある見方が出てきました。この見方、自分の性格がひねくれているゆえに想起出来たと言われればそれまでですが、とはいえあながち間違ってはいないと思います。

 

 

「復活LOVE」リリースの理由...それは、【ジャニーズ事務所の頂点は嵐である】という印象付けのため、と考えます。そしてそのためには諸先輩方を凌駕しないといけないのです。ちなみにジャニーズ事務所所属歌手のCDリリースを基準としたデビュー順は下記サイトにて詳しく掲載されていますのでご参照ください(勝手ながら取り上げさせていただきます)。

ジャニーズ事務所 歴代デビューグループ(1964年〜現在)【PRiVATE LiFE】データベース

では、どの先輩をどう凌駕したのかについて。

 

 

① 少年隊

今回のシングルの”前哨戦”となったのが昨年のアルバム『Japonism』でした。アルバムはミリオンセールスを記録しましたがそれには理由があります。初週セールス動向を踏まえて以前記載した内容はこちら。

初回限定盤・通常盤に加えて"よいとこ盤"を用意し、3種発売を復活したことがミリオンセールスにつながりました。そして"よいとこ盤"に収録されたのは少年隊の「日本よいとこ摩訶不思議」のカバー。嵐版を聴いて、少年隊版も聴きたくなった方は少なからずいらっしゃるはず…にもかかわらず、オリジナル版の復刻の動きはありません。少年隊は昨年デビュー35周年を迎えたのですから、メモリアルイヤーと位置付けベスト盤を出してもよかったはずです。

無論ジャニーズ事務所は基本的に配信等デジタルサービスを行っておらず、過去曲については日の目が見られない状況ゆえ、「日本よいとこ摩訶不思議」は嵐バージョンでしか容易に聴くことが出来ません。同じ土俵に立たせていないために同曲イコール嵐のイメージが生まれ、少年隊を凌駕(この場合、酷い物言いですが駆逐)したと言えます。

 

 

KinKi Kids

山下達郎さんによる曲提供となれば、真っ先にKinKi Kidsとの楽曲群を思い出す人は多いはずです。「ジェットコースター・ロマンス」「Happy Happy Greeting」そして「硝子の少年」。特にデビュー曲にしてミリオンセールス且つ自身最大のヒットを記録した「硝子の少年」はKinKi Kidsにとっても、山下達郎さんによるジャニーズ提供曲においても世間に最も浸透している曲と言えます。その「硝子の少年」の哀愁路線をトレースし、同じ山下達郎さんに作ってもらうことにより、"山下達郎さんによるジャニーズ提供曲といえば嵐の「復活LOVE」だ"と世間の印象が上書きされたように思います。

 

 

TOKIO

①および②の理由付けは苦しいと言われるかもしれませんが、こちらはもっと直接的。なんと同じレコード会社が嵐「復活LOVE」とTOKIO「fragile」を同日発売させたのです。いくらTOKIOが「-遥か-」(2010)でオリコンセールスチャートの週間1位を獲得して以降、1位はおろかトップ3にもランクイン出来ていないからといって、バッティングさせるのはどういうことでしょう。片方がシングルでもう片方がアルバムならばまだ解るのですが。実際「fragile」の売上は1.9万枚(オリコン週間7位)で、「復活LOVE」の売上のわずか4%未満のセールスでした。同日発売という対決構図にすることで、チャート上で明らかに優劣をつけ、【嵐>TOKIO】という図式を強く印象付けようとしたのではないかと考えます。この同日発売についてのネット上の反応についてはまとめページがあるのですが、ファンの中にも不愉快という意見が少なくありませんね。

 

 

SMAP

早ければ今夏以降、SMAP木村拓哉さんを除くメンバーが"干される"可能性があります(というか、干される可能性を報じるメディアが実際は干す側であり、なんという責任転嫁報道だと強く思うのですが)。

となれば、SMAPの穴を埋めるべく同事務所所属歌手が"ポストSMAP"を投じるのは自明。そしてCDセールス面ではSMAPを遥かに凌ぐ嵐に白羽の矢が立つこともまた自明なわけです。

しかしながら、敢えて厳しい言い方をしますが、嵐の場合、音楽面において代表曲がぼやけてしまっているというのが問題ではないかと。コンスタントに大ヒットを飛ばす嵐ですがその実、代表曲は?と問われると人によりバラバラではないかと考えます。無論どれも売れているから選ぶのは難しいかもしれませんが、しかしSMAPにおける「世界に一つだけの花」ほど核になる曲がないというのもまた事実ではないでしょうか(実際、嵐の代表曲をデビュー曲の「A・RA・SHI」だとする人も。正直インパクトの面においてはこの曲が最強かもしれませんがそれだと一部ファンが許さないかもしれません)。そこで山下達郎竹内まりや両氏の尽力により嵐の代表曲を、職業作家陣が持ち寄る良曲群を一時諦めてでもやらなければいけなかったのではないかと思うのです。さらにストリーミング解禁によってジャニーズ事務所所属歌手の中で(はっきり言って遅きに失しているとはいえ)先進性を持ったグループという好印象や話題性も持たせ、「復活LOVE」を放った嵐が名実共にジャニーズ事務所のトップであるというイメージ付けをさせようという考えがあったのではないでしょうか。

 

 

もう一組の先輩であるV6との対比については恥ずかしながら浮かんで来ませんでしたが、諸先輩方を凌駕する取り組みがこの「復活LOVE」にあったように思うのです。

 

 

さて、肝心の曲についての私見を述べるならば、アレンジや世界観自体は個人的に好きな作品です。一時期はサビや一番終わりのアレンジが脳内再生、ループされたほど。とはいえ悪い意味で引っ掛かったのは竹内まりやさんによる歌詞。歌詞における別離(1番)→哀願(2番)→復活(大サビ以降)という展開があまりに急展開過ぎること、そして大サビで用いられる彼女を示す"Angel"や最後のサビでの"朝の光の中"という、言葉にすると恥ずかしい語彙群(だからこそアイドルソングの歌詞に敢えて盛り込んだともいえますが)がまるでバブル直後の安易なトレンディドラマを想起させ、聴いていていたたまれない気持ちになるというのが正直なところです。これが「硝子の少年」と同じ松本隆氏に歌詞を依頼したならば...と、叶わない願いは承知で、それでも強く思ってしまいます。この歌そのものの点においても、これまで推測(邪推)してきた頂点へのプロセス同様になんだか残念…と思っています。そういえば先述した”一番終わりのアレンジ”はどことなくSuperfly「恋する瞳は美しい」を想起させますね。

 

 

 

…と書いてきたところで、今回いろいろと調べるうちに「復活LOVE」が中森明菜さんの新曲とも発売日が重なっていることが判りました。そして"その裏にあるもの"を邪推するまとめサイトも登場しています。個人的にはここまで考えてはいなかったのですが、でも思うところがあり、そのサイトを紹介します。

この中で山下達郎さんが、中森明菜さんが歌った竹内まりやさん提供曲「駅」について強く非難している写真(竹内まりや『Impressions』ブックレットでの解説文)が登場します。自分もこの文章を大分前に読み、山下達郎さんの非難姿勢に(勝手に信頼していた部分が揺らいだという意味で)強く落胆した記憶があり、今回のまとめサイトを読んで久々にその感覚を、それも強烈に思い出してしまいました。なによりも、匿名で述べること自体がいやらしさの証明と言えるでしょう(それゆえ、このいやらしさという嫌悪感が込められた解説文は批判ではない、"非難"だと考えます)。仮に今回の発売において事務所側に(言葉は悪いですが)報復的要素があり、それを解っていて曲提供等に動いたのだとしたら、あまりにも歪な形ではないかと思わざるを得ません。さすがにそこまではないと信じたいところですが、もし中森明菜さんの発売日が先に決まっていて(TOKIOの発売日も決定していて)、そこに敢えてぶつけてきたのなら…とはさすがに思いたくはないのですが果たして。

 

 

「復活LOVE」が今後の嵐の楽曲群の中でどう扱われていくか、世間が同曲を嵐の代表曲とみなすか、見極めてみようと思います。