イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「リバーサイドホテル」はラテンだった

オリコン掲載の記事に違和感を覚えたので、刻み込むように記載。

 

テレビに“消費されない”男性アイドルたち | ORICON STYLE (3月1日付)

記事を書いた斉藤貴志氏の指摘には納得しましたし、2月15日付のWASTE OF POPS 80s-90sのブログエントリーの補完(発表のタイミングにおいて)という点においても重要な内容です。

ではなぜ違和感を覚えたかというと、一つはなんだかんだいってやはりテレビ出演という露出が最善ではないかということ。売上が良くても広く世間一般への浸透(知名度の上昇)には結びつかないわけで、やはりテレビ、それも地上波での露出が最重要だと思うのですが、それがやりたくても出来ないというジレンマゆえに模索しているはずなのに、記事ではその点に触れていないんですよね。テレビに頼らない戦略じゃないのです、”頼れない”からこその戦略なのです。

そしてもう一つ。そのジレンマの理由を熟知しているはずのオリコンがこの記事を載せたということ。厳しい表現を敢えて書くならば、オリコンの姿勢は”二枚舌”。ヴィジョンファクトリースターダストプロモーションのアイドルがテレビに存分に出られないその反対勢力を雑誌などに存分に用いていながら彼らを気遣う姿勢は都合が良すぎやしませんでしょうか。それが斉藤氏という外部に委託した記事であり文責がオリコンではなく斉藤氏にある(ように見える)としても、です。

オリコンの姿勢は(主に地上波の)テレビと共通だと考えます。その姿勢は以前のブログエントリー、オリコンシングルチャートは公式チャートではないと断言する2つの理由に書きました。またヴィジョンファクトリー発の男性歌手についてはヴィジョンファクトリーの実力と、そして決して使ってはいけない”干される”という言葉でも触れています。オリコンやメディアには上辺だけではない公平性を、自身の保身を捨てても良いものは良いと評価する心を求めます。同時に、受け手である市井にも”大人の事情”を簡単に飲み込まないようにしていただきたいものです。その心掛けだけで、音楽業界は好転するはずです。

 

 

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NintendoのCMソングに起用された八代亜紀さん版「残酷な天使のテーゼ」がいろんな意味で凄く、自分の担当するラジオ番組でもOAしたことがあります。

で、同カバーが収録された『エンカのチカラプレミアム《赤盤》』(リンク先にて試聴可能)を、全体を通して聴いてみたのですが、八代亜紀さん以外にも、渥美二郎さん版「リバーサイドホテル」がラテンアレンジだったことに驚きました(編曲は兼子かおるさん)。これが意外に違和感なく、少し艶のある渥美さんの声と落ち着いたラテンアレンジが合っていて、面白い発見でした。

(実際のところ、アルバムを通して編曲のチープさが漂っているのですが、それが好い方に向かったという例ではないでしょうか)

 

 

「リバーサイドホテル」は井上陽水さんによる作品ですが、【井上陽水×ラテン】といえば、昨年末にリリースされた『宇多田ヒカルのうた』の冒頭を飾る「SAKURAドロップス」の衝撃は凄まじかったなあと。以前、良質なトリビュートアルバムの三条件というエントリーでカバーについて触れましたが、もしかして井上陽水さんとラテンって相性いいのかな?と思っていると、井上陽水さんが出演したNHKBSプレミアム『The Covers』(2月16日放送分)では「SAKURA~」に加えて、自身の「氷の世界」もオルケスタ・デ・ラ・ルスを交えてセルフカバー(オルケスタ・デ・ラ・ルスサルサバンドであり、サルサラテン音楽の一つ)。氷なのにラテンって矛盾では…と思ったのですが、これが実に合っていてその矛盾を忘れさせるくらい。というか、純粋に格好良いんですよね。番組の総集編でいずれかかるかもしれませんがこっそり某所にあったりします。同じく番組で披露されたポール・マッカトニーのカバー、「I Will」もラテンでした。

  

個人的には【井上陽水×ラテン】というイメージは昨年末以降感じていたのですが、実は1982年に発表された「リバーサイドホテル」自体がラテン(のリズムパターン)を下敷きにしていたという指摘がありました。

この2曲に共通しているのが、コルグの原始的なリズムボックス(ドンカマチック系)のパターンを下敷きに楽曲が組み立てられている点だ。

(省略)

ディスカバリーファームのヒストリー・オブ・コルグというサンプリングCDには、ドンカマチックのプリセットとして「リバーサイドホテル」に使われているのと同じパターンが収録されている。

(省略)

ドンカマチック系リズムボックスのパターンはラテン系のものが多く、実際「Summer」は南洋を想起させる雰囲気に仕上がっている。他の楽器でリズムを差し替えるより的確な選択と言えるだろう。小品ながら、リズムボックスの本質を捉えた名曲と言える。

一方「リバーサイドホテル」は、淡々と続く一定のリズムが、言い知れぬ背徳感や緊張感を醸し出し、異様な耽美性を湛えたトラックに仕上がっている。この曲もおそらくデモ段階からのリズムボックスを残したと思われるが、アレンジャーの星勝によりそこにダビングされたギミックの数々には筆舌に尽くせぬ程のセンスが感じられる。

井上陽水「リバーサイドホテル」「Summer」:サウンドレビュー | 大須賀淳のロシアンブログより

オリジナルの「リバーサイドホテル」にてうっすらと漂っていたラテンの感覚が、オルケスタ・デ・ラ・ルスとの融合で現代において爆発したのかもしれませんね。『The Covers』でのセルフカバーがなおのこと腑に落ちます。(勝手ながら引用させていただきましたが)大須賀氏の分析力の素晴らしさを実感すると共に、「リバーサイドホテル」のオリジナルをあらためて聴き込んでみたい気持ちになりました。

 

 

井上陽水×ラテン】の流れは、この春からの『ブラタモリ』(NHK総合)新シリーズにも登場、『番組テーマ曲を井上陽水(66)が作曲、オルケスタ・デ・ラ・ルスが演奏する』(タモリ、桑子アナに「ブラタモリ3カ条」 - nikkansports.comより)とのことです。オルケスタ・デ・ラ・ルスの紅一点、NORAさんによれば『今年はまだまだ続く、日本ラテン化計画会長、タモリさん からのー、井上陽水さん へのー流れ。流石、会長さん!』(ブラタモリ - NORA Blogより)ということですから、タモリさんの影響もあったりするのかもしれませんね。【井上陽水×ラテン】で、いっそのことアルバム一枚出してみるのはいかがでしょう? 期待せずにはいられません。