イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

グラミー賞の予想と、メディアや社会へのある願い

現地時間で今度の日曜(日本時間では2/8(月曜)午前)に開催されるアメリカ音楽界最大の祭典、第57回グラミー賞プリンスのサプライズ出演があるか、”男性版アデル”と評されるサム・スミスの主要4部門総ナメはあるか…など、話題は尽きません。

 

そのグラミー賞の”賞レース予想大会”が各所で開催されています。

タワーレコード - 【GRAMMY AWARDS】賞の行方を予想してタワレコ・ギフトカード10万円分を山分け!

HMV - 第57回グラミー賞 受賞者予想大会!(概要確認にはログインが必要)

WOWOW - グラミー賞 受賞者予想!

・InterFM - 第57回グラミー賞主要4部門受賞予想コンテスト

締め切りや賞品はそれぞれ異なりますのでチェックの上、参加してみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに主要4部門、個人的にはサム・スミスが獲得するのではないかと思っています。そしてそれを願っています。

日本では先月の国内盤発売以上、徐々にサムが日本のメディアに取り上げられる機会が増えています。それは好いことなのですが…なにやらつい先日の某局の朝のワイドショーではサムが同性愛者であることをあたかのネタの如く、”面白おかしく”取り上げていたとのこと。悲しくなりました。昨年のNHK紅白歌合戦、演歌枠でオネエと呼ばれるタレントが組んだ応援隊、”もも組”にも同種の感覚を抱いたのですが、日本では同性愛者は”イジられる対象”であり、また”同性愛者イコールオネエ”というのが未だにステレオタイプとして存在します。メディアが(特に公共放送たるNHKが)そうである以上、広く社会がその感覚を抱いていることは間違いないでしょう。

 

しかしながら諸外国は異なります。特にアメリカ。昨年のグラミー賞では最優秀新人賞に選ばれたマックルモア&ライアン・ルイスが、グラミーの会場に34組のカップル-異性愛/同性愛の別け隔てなく-を招いて、メアリー・ランバート(彼女も同性愛者)を客演に迎えて同性愛について歌った「Same Love」を披露。マドンナやクイーン・ラティファも登場し、”公式な結婚式”が行われたことが話題になりました。

そしてサム・スミスの大ヒット。アメリカでのアルバム発売の直前に彼が同性愛者であることをメディアを通じて認めましたが、仮に”同性愛者が作ったアルバム”という余計な先入観(そしてそれをマイナスだと捉える向き)が広く蔓延してしまったなら、アルバム『In The Lonely Hour』が全米年間11位、シングル「Stay With Me」が同年間10位の大ヒットに至るはずはないのではないかと。サムは『僕はゲイ・シンガーのサム・スミスなんじゃなくて、シンガーのサム・スミスがたまたまゲイだっただけなんだ』と最近のインタビューで答えていますが、アメリカでは徐々にサムの希望する見方に移行しているのかもしれません。全州が同性愛者の結婚を認めているわけではないものの、世間の大きなうねりを実感しています。最近のアメリカの同性愛に対する風潮、傾向については下記を是非ご参照ください。

高橋芳朗が語るグラミー賞2014の傾向『同性愛者支援作品が評価される』 - miyearnZZ Labo

 

そして、翻って日本では…の動き。昨年末の総選挙関連での”問題”も踏まえてのコチラのエントリーに激しく同感です。

サム・スミスとグラミー賞、アメリカと日本について - 日々の音色とことば

 

なんだろう、音楽業界の閉塞感にも言えることだけど、日本はLGBTへの捉え方においても世界から大きく外れていますね。そして政治などにおいて同性婚などに関して一度でも真剣に検討するような気配が見られない(し、そもそも論議が大事だと思われていないことは上記での総選挙云々のくだりで見えてしまっていますね)、という状況。上層がそのような考えだからこそ、4割前後の人が観る紅白で”もも組”という概念(ゲイ=オネエ=イジられキャラ)が成立するのかも…というのは暴論かもしれませんが。

(ちなみに”もも組”の出演者を責めるつもりはほとんどありません。彼らは与えられた役割を全うしたまでではないかと。何をやるかを知って出演を承諾したのだからその点ではどうかとは思いつつ)

 

 

仮に同性愛をマイナスイメージと仮定した場合。

たとえば、好きな曲を歌っている方が同性愛者だと発覚(もしくは疑いがネット上で登場)し、歌い手に対しマイナスイメージを抱いてしまった場合。”失望した”とか”ファンをやめる”という人は少なからずいらっしゃるでしょう。果ては”CDを捨てる”、果ては”CDを壊す”(ディクシー・チックスが当時人気の高かった前大統領を批判した際にラジオ局などが起こした運動。詳細は”NATALIE WAS RIGHT” ディクシー・チックスのブッシュ批判事件とはを参照。昨年末のサザンのパフォーマンスにおいても”CDを壊した”とつぶやく人を見ました)という言動や行動も時には散見されるのですが。

でも、マイナスイメージを一方的に抱いてしまったその歌い手が歌う”曲”に対して、以前は好意を持っていたのは間違いない事実。それを、マイナスイメージを持ってしまったから曲さえ好きでいることをやめるとか、もっと言えば好きでいた自分を恥じる…というのはどうなんだろうと。その考えは結局はその人自身の感性(の豊かさ)を否定することとイコールだと思うんですよね。その感性を許せないくらいに”同性愛者”がマイナスイメージなのか、とあらためて問うてみて欲しいなと。

なにも同性愛者に限らず、自分が嫌いな芸能人と付き合い出したとか、素っ頓狂な発言をした…などでマイナスイメージを抱くこともあるかもしれません。でもそれで”曲”自体を否定するのは勿体無いなと。自分で感性の豊かさを否定する行為に気付けば、もっといろんなこと寛容になり、素敵な音楽に触れる機会が増えるんじゃないかと思います。

 

サム自身を同性愛者であるとここで書くつもりはあまりなかったのですが、思うところがあって記載しました。『In The Lonely Hour』がグラミー賞を獲得し、より日本でも認知度が向上し、なによりその曲の良さが支持される中でほんの少しでも、LGBTに対して柔軟な考えを日本のメディアが、社会全体が持ちあわせていくならば嬉しいなと。同性愛者に限らず様々なマイノリティの方と接し、一当事者である自分はそう願っています。

 

 

ちなみに、タワレコキャンペーンの途中経過が昨日発表されました。サム、大人気です。