イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

PSYの日本未発売が続いている事態について

PSY「Gangnam Style (江南スタイル)」の国内盤が発売されていない状況が続いています。同曲の英語版Wikipediaによると、米2位、英1位などの輝かしい成績を残している(Wikipedia(英語) - Gangnam Style - Chartsより)、にも関わらず。PSYの所属事務所が2NE1やBIG BANGも所属するYGエンターテイメントであり、彼らが国内盤を出していることからPSYの国内盤を出せないはずがないと思うのですが。

 

・PSY「Gangnam Style」

 

発売されていない"理由"としては、

PSYが他の韓国スターのように日本語版の楽曲を提供しなかったことや、「PSYが日本市場でセールスをかけなかったこと」「パパイヤ鈴木のように小太りで意外にダンスがうまいキャラがすでに売れており、欧米で受けたPSYのダンスもそれほど目新しく映らなかった」ことなどが指摘されている。

また『TIME』誌の短いコラムでは、少女時代などの韓流スターが人気を集めてきた日本で「江南スタイル」のみがヒットしていないのはパラドックスであり、2012年8月に竹島の領有権が日本と韓国との間での外交問題となったことが背景にあるのではないかと指摘している。一方でMSN産経ニュースは、コリア・タウンのある東京新大久保を取材して、PSYが「かっこよくない」ことが不人気の理由で、日韓関係の緊張は関係ないという韓流ファンの声を紹介している

Wikipedia - 江南スタイル - 日本での評価より

とあり、要約すると、【日本語でリリースしていない】【容姿】そして【嫌韓という空気を察しての自粛】が原因ということでしょう。

前者2つにおいてはいわゆる"K-Pop"と呼ばれるミュージシャンの作品は日本語版が用意され、また総じて容姿端麗という点でも日本でウケてきたという側面はあるでしょう。そういう意味では"K-Pop"と「Gangnam Style」そしてPSYの風貌は迎合しませんが、海外で売れまくる作品を、"K-Popのイメージを守るために出さない"のだとしたら機会損失でしょう。ちなみに以前、SMAPの草彅剛が"チョナン・カン"名義で韓国語のシングルをリリースしスマッシュヒットしていましたから、日本語でリリースしていないことがネックになる理由にはならないのではないか、とも。

 

そして後者の理由。たしかにこの1年以上、日韓関係が冷えているのは明白です(そしてここ半年はそれが顕著になっているのも否めません)。個人的には政治面における韓国の強気の言動や行動に強い疑問を抱いていますが、政治面での関係の悪化と音楽は切り離すべきではないでしょうか。仮にいいなと思う曲があっても後でその"出自"が判ると蔑視するというのは、いいなと思った人自身がその音楽感覚を理屈で封じ込めるようなもので、不自然に思います。しかし実際には未だに嫌韓の空気は醸成されたままというか、"常態化"すらしているように感じるのです。

 

"K-Pop"との乖離、そして嫌韓の空気…たしかにネックはあれど、だからと言ってそれらが売らないという理由にはならないと思うんですよね。それどころか、iTunesで配信もしていない(フィジカルで販売して過剰在庫となる可能性を心配するならば、配信のみという手もあったと思います)というのは、レーベル側があまりにも警戒し過ぎではないかと思うのです。がしかし、今の日本における、"嫌韓は正しい。だからバッシングは当然"といっても過言ではない過熱した空気がレーベル側を必要以上に躊躇させたのでは、とも想像しています。

無論これらは想像の域を出ません(実際にレーベル側に確認すれば好いのでしょう)が、仮にそうだとしたならば、PSYの販売が見送られた結果、日本は世界の流行を遮断したと言えるかもしれません。これって非常に勿体ない機会損失だと思うのですが…。