イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【Diggin'】07. We Are "Hyokin Lovers"

勝手に仮想ラジオ番組を立ち上げ、中心となる特集を”見えるラジオ”としてブログに掲載していく金曜日。今週は、1980年代を代表するお笑い番組、『オレたちひょうきん族』にスポットを当て、【『オレたちひょうきん族』エンディング&リスペクトソング集】をお送りします。

 

 

1981年にスタートした『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)。もはや説明不要のモンスター番組でした。高視聴率もさることながら、出演者のその後の長きに渡る活躍もあり、今も語り継がれる伝説の番組であり、今のお笑い界の基礎を築いたといえるかもしれません。

番組終了時に流れるエンディングテーマも実に特徴的で、80年代のカラーが如実に反映されたシティ・ポップが土曜の夜の終わりを彩っていきました。番組が終わるという寂しさや余韻を抱かせつつ、週末はまだまだこれからというワクワク感も持ち合わせていた曲達には、聴くとすぐにあの頃に戻れるような魔法が宿っているかのよう。

実はこの1年あまりで、ひょうきん族関連の音楽がCDリリースされており、ちょっとした盛り上がりをみせているんですよね。そこで今日は、7曲を紹介します。

 

 

EPO「DOWN TOWN」

オリジナルはSUGAR BABE。本放送開始前、野球のナイトゲーム が雨天中止となった際の”雨傘番組”として何度か放送された際に既に起用され、同年10月10日の本放送開始時にもそのまま起用されました。ちなみに最終回のエンディングテーマは、この曲の新録ヴァージョンが使われました(以下、番組に関する情報はWikipediaより引用)。

EPOは昨年12月、『GOLDEN☆BEST EPO~The BEST 80’s Director’s Edition~』をリリース。アルバム名に冠したように80年代に絞った内容で、代表曲「う、ふ、ふ、ふ、」などが収録(一方、「DOWN TOWN」は実は未収録。同名異曲がインタールード的なものとして収録)。近年の80年代音楽の再評価の機運の高まりや、資生堂のCMソングとして土岐麻子に曲提供した「Gift ~あなたはマドンナ~」のヒット等に併せてのリリースと思われます。

 

 

 ・EPO「土曜の夜はパラダイス」

「DOWN TOWN」に続き、1982年10月からの5ヶ月間起用されたのが、同じくEPOによるこの曲。意外にも歌詞の主人公は失恋の痛手を引きずっていて、パーティに繰り出してそのことを忘れてやろうとするのがなんだか可愛らしいですね。こちらは『GOLDEN☆BEST EPO~The BEST 80’s Director’s Edition~』(2011)に収録。

 

 

山下達郎土曜日の恋人

1985年10月からの1年間起用。EPOがカヴァーした「DOWN TOWN」、1983年4月から8ヶ月間「パレード」が用いられており、山下達郎関連作品では3曲目のエンディングテーマながら、純然たる新曲では初の起用。ひょうきん族のスタッフサイドに曲提供を直談判したというエピソードを聞いたことがあるのですが詳細は不明です(参考資料が見つかった際は引用させていただきます)。♪土曜日の夜ははじまったばかり、という言葉が番組視聴後の余韻と実にハマっている名曲。大ヒット中のベストアルバム『OPUS ~ALL TIME BEST 1975-2012~』(リンク先は初回盤 2012)収録。

 

 

松任谷由実「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」

映像が松任谷由実明石家さんまの共演からはじまるのがなんだか素敵です。花嫁の…のくだりなど、ボケにボケでかぶせる彼女の頭の回転の速さに脱帽します。

「土曜日は大キライ」に次ぐエンディングテーマとして1987年10月からの1年間起用。その前後には「土曜日は大キライ」「恋はNo-return」が起用されているものの、来週リリースのベストアルバム『日本の恋と、ユーミンと。』には最終回直前スペシャル(1989年10月7日)で用いられた「卒業写真」以外未収録となっているのはちょっと残念ですね。オリジナルアルバム『ダイアモンドダストが消えぬまに』(1987)収録。

 

 

土岐麻子「くちびるヌード」

アルバム『CASSETTEFUL DAYS ~Japanese Pops Covers~』(2012 試聴はコチラ)収録。この曲自体はひょうきん族関連ではないものの、先述したEPOによる楽曲。

オリジナルは高見知佳の15枚目のシングルで1984年のリリース。資生堂春のキャンペーンソングに起用され、高見自身最大のヒットに(以降も化粧品CMソングにEPOが曲提供することが実に多い)。後にEPOが「くちびるヌード・咲かせます」とタイトルを変更してセルフカヴァーし、こちらも『GOLDEN☆BEST EPO~The BEST 80’s Director’s Edition~』(2011)に収録。

土岐麻子のヴァージョンは『CASSETTEFUL DAYS ~Japanese Pops Covers~』(2012)収録。アルバムタイトルに用いた”カセットフル”は造語ながら、1980年代から90年代前半の空気が詰まっているなあと実感。カセットテープに好きな曲を編集して収録しドライヴでかけた…そんな時代を想起させます。

 

ちなみに、山下達郎『Ray Of Hope』(リンク先は初回盤 2011)リリース時、山下達郎フリークの3名(西寺郷太土岐麻子・やけのはら)がナタリーにて座談会を行なっていますが、そこで土岐麻子は『「ひょうきん族」は、私にとっても結構な事件でした』と語っています。さらには、土岐麻子および、西寺郷太がメンバーのひとりであるNONA REEVESが以前にそれぞれ「土曜日の恋人」をカヴァーしています(土岐麻子版『WEEKEND SHUFFLE』(2006)に収録。NONA REEVES版『free soul-free soul of NONA REEVES-』(2006)に収録)。ひょうきん族の影響の計り知れなさが伺えますね。

 

 

一十三十一「土曜の夜はパラダイス」

アルバム『YOUR TIME ROUTE#1』(2012 試聴はコチラ)収録。

今週リリースされた一十三十一の2枚目となるカヴァーアルバム(1枚目は曽我部恵一

プロデュースで、矢沢永吉のレーベルよりリリース)のラストを飾るのが、先に取り上げたEPOのカヴァー。今年6月にリリースされたビルボード・レコーズ移籍第一弾『CITY DIVE』が実に素晴らしく、2000年代シティ・ポップの傑作と言っても過言ではないのですが、その音作りのキーパーソンであるクニモンド瀧口(流線形)が今回のカヴァーアルバムを総合的にプロデュース。原曲より音はミニマムながらも、綺羅びやか感は変わらないという不思議。

ちなみにアルバムには”一十三十一×クニモンド瀧口”の対談が収められてますが、そこでは「土曜の夜はパラダイス」がカヴァーアルバム計画当初から”当確”しており、一十三十一自身、小さい頃にひょうきん族を観ていたとのこと。『楽しい番組が終わった余韻に浸りながら、待ちわびた日曜日がやってくる期待感を満喫していました』と語っています(アルバムブックレット内対談より)。

 

 

かせきさいだぁ「さよならマジックガール」

アルバム『ミスターシティポップ』(2012 試聴はコチラ)収録。

かせきさいだぁ、通算4枚目のオリジナルアルバムからの曲。実はこの曲はかなりひょうきん族を意識しているとのこと。

曲調としては、もし「オレたちひょうきん族」から曲提供依頼を受けたら……というイメージ、そんなキャッチーさを目指しました。コーラスはEPOさんにやっていだけることになり、あまりにも素敵だったのでミックス段階になって僕の独断で、EPOさんの音量をぐっと上げちゃいました。

かせきさいだぁOFFICIAL WEB SITE - ミスターシティポップ - INTERVIEWより

 ひょうきん族が終了してから20年以上経ちますが、仮にオファーを受けたなら…と空想して曲を作ったというのは面白いですね。ひょうきん族のエンディングテーマはアーティストにとってのステイタスだ、と思っているアーティストの方は多いのかもしれません。

 

 

 

1989年に『オレたちひょうきん族』が終了してから18年後の2007年にスタートしたTBSラジオ『RHYMESTER宇多丸のウィークエンドシャッフル』。パーソナリティのRHYMESTER宇多丸本人の意向により、ひょうきん族の歴代エンディングテーマから1曲をラジオ番組のエンディングテーマとして起用することが番組開始当初から行われています(番組Wikipediaより)。おそらく、ほぼ間違いなくひょうきん族ファン(ラジオ的に言えば、”ア↑コガレ”かな。使い方違うかもしれませんが)なんじゃないでしょうか。

 

この1年ほどで関連曲の収録作品がリリースラッシュとなっているのは、単なる偶然じゃないような気がしています。80年代音楽の再評価などもありますが、もしかしたら番組を観ていた方を中心に、土曜の夜をもっとキラキラしたものにしたい!という希望が強くあり、その思いがリリースになって表れているのかもしれませんね。